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生誕150周年 南方熊楠(みなかたくまぐす)の世界

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今週号は、〝Good Life(上質な暮らし)〞を提案する特集をお届け。多方面にわたる分野で、生涯をかけて学び、発信し続けた南方熊楠を紹介します。今年で生誕150周年。この機会に、和歌山が生んだ偉人に親しんでみませんか。

奇人、変人、天才と呼ばれた
魅力あふれる和歌山の偉人

2017年は、和歌山が誇る〝知の巨人〞南方熊楠生誕150周年。1867(慶応3)年、現在の和歌山市橋丁に生まれ、博物学、民俗学、植物学など、さまざまな分野で近代日本の先駆けとなった熊楠。とりわけ、動物と植物の中間的な生物である〝粘菌(変形菌)〞の研究に心血を注ぎ、その分野の代表的な研究者として知られています。

常識や既成の学問に収まらない言動や行動もまた有名で、奇人と呼ばれることもありました。「虫や植物を採集するため野山に入り、2〜3日家に帰らないこともあったため〝てんぎゃん(てんぐ)〞と呼ばれた」「ずば抜けた記憶力を持ち、江戸時代の百科事典『和漢三才図会』を知人の家で読み、家に帰って書き写した」「10数カ国語を操った」「キューバで採集旅行中、生活のためサーカス団の一員になって各地を巡った」などなど…。多くの業績を残した偉人でありながら、型破りな性格を表す伝説的逸話が多数残っています。

下記では、熊楠が現代に残した功績と、魅力あふれるユニークな人物像に迫ります。また、3月に新館がオープンした南方熊楠記念館(白浜町)、熊楠が晩年を過ごした旧南方家住宅(南方熊楠邸、登録有形文化財)に併設する南方熊楠顕彰館(田辺市中屋敷町)に加え、私たちにとっても親しみ深い、和歌山市にあるゆかりの地も紹介。

知れば知るほど面白い、南方熊楠という人物に、あなたも魅了されること間違いなしです!

熊楠が私たちに残した自然

ジャクソンビルの南方熊楠胸像(南方熊楠顕彰館所蔵)

ジャクソンビルの南方熊楠胸像(南方熊楠顕彰館所蔵)

〝熊野古道〞世界遺産登録につながる
先見的な自然保護活動

南方熊楠顕彰館事務局 西尾浩樹さん

南方熊楠顕彰館事務局
西尾浩樹さん


数々の伝説的逸話や業績を残している熊楠ですが、現在〝エコロジスト〞の先駆けとしても注目を集めています。南方熊楠顕彰館・西尾浩樹さんに伺いました。

熊楠は、明治末期の神社合祀(ごうし)に対する反対運動にエネルギーを費やしました。神社合祀とは、神社の合併政策のこと。政府によって神社の統廃合が進められ、集落ごとにあった小さな神社が整理され廃社になっていきました。神社とともにあった森林は伐採されます。熊楠は、根付いていた文化や、貴重な自然が破壊されることに憤り、新聞に反対意見を掲載したり、著名な学者たちに応援を求めました。この運動の中で、世間ではまだ馴染みのなかったエコロギー(エコロジー)という言葉を使い、自然環境や生物、人間の暮らしがすべてつながっているものとして、それらを保護することが重要だと訴えたのです。

合祀を進める役人が集まる会場に押しかけたことで拘留されたり、新聞記事が社会を混乱させるとして罰金を取られたりと、ひどい目に遭いながらも活動を続け、やがて熊楠の熱い思いは実を結びます。かなりの数の社殿や森林などが姿を消しましたが、意味のない神社合祀がなされることはなくなりました。熊楠に守られた神社や森林は、中辺路(なかへち)を中心に熊野古道に残っています。自然保護の概念がまだ発展していない時代に、先駆けて動いた熊楠の功績が、熊野の深い森と文化的景観を含めた「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録につながったといえます。

田辺市にある神島(かしま)も、熊楠によって守られた自然の一つ。独特で、貴重な生態系を持つ島です。1929(昭和4)年、昭和天皇が南紀を訪れたとき、熊楠はこの島に迎え、その後御召艦(おめしかん)で講義を行いました。生物学の研究者でもあった昭和天皇に、熊楠は粘菌や動植物の標本を献上。通常天皇に対する献上品は桐の箱などに納めるべきとされていましたが、このとき熊楠が使ったのはキャラメルの空き箱だったという話はよく知られています。豊かな生態系を持つ神島はこの後に、国の名勝・天然記念物に指定されています。

「奇人だ、変人だといわれている熊楠ですが、優しさを表すエピソードも残されています」。一日中手紙を書いていた熊楠は、夜中でも手紙を出してきてくれと女中に頼んでいたといいます。しかし、「夜道を女性一人で歩かせるのは心配だから」と、明かりを持って後ろをついていくこともあったとか。なんともほほえましい話ですよね。

熊楠が残した資料で、顕彰館に保存されている物は約2万5000点。「実は、まだ1割程度しか解明されていません」と西尾さん。研究が進むたびに新たな発見があり、その人物像がどんどん変わってきているそう。〝伝説〞的な部分を除き、実物大の熊楠を発見していくという顕彰館の、これからの情報発信が楽しみです。

漫画家・マエオカテツヤさんに聞く
南方熊楠の魅力

マエオカテツヤ 和歌山市出身の漫画家。「持ち歩きペラペラ和歌山弁」など著書多数

マエオカテツヤ
和歌山市出身の漫画家。「持ち歩きペラペラ和歌山弁」など著書多数


熊楠は、民俗学の研究の中で民間伝承や妖怪について取り上げることもあり、民俗学者の柳田國男と書簡をやり取りするなど交流があったことが知られています。和歌山市出身の漫画家・マエオカテツヤさんは、熊楠と妖怪の関わりなどについての講演を行うなど、〝熊楠好き〞の一人です。

森に分け入り、音やにおい、肌で感じるすべてのものを不思議ととらえて立ち向かっていった熊楠。「人間は、他人にどう思われるかを気にしながら生きていますよね。熊楠は、興味のあることや目的のためなら、なりふり構わず突き進むというところがあります。太い〝幹〞のような意思を持っていたところに皆が憧れるのではないかな」とマエオカさん。

「どこか憎めない、愛嬌(あいきょう)のある人物だと思います。本当に〝奇人〞であれば、人は寄ってこないはず」とも。

南方熊楠記念館には、マエオカさんが描いた妖怪のイラストも展示されています。

20170408top05南方熊楠
和歌山市にあるゆかりの地

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和歌浦芦辺屋跡地(和歌浦中)

紀州藩初代藩主・徳川頼宣が作らせた茶屋「芦辺屋」「朝日屋」。明治時代には、料理旅館として多くの人に親しまれました。留学先のロンドンで、中国における革命の父・孫文に出会った熊楠。帰国してからしばらく経った1901(明治34)年に、芦辺屋で再び孫文と親交を深めました。

生誕地に建つ胸像(橋丁)

熊楠は、1867(慶応3)年5月18日(旧暦4月15日)、和歌山城下橋丁で、南方弥兵衛(後に弥右衛門と改名)とすみの二男として生まれます。83年に和歌山中学校(現和歌山県立桐蔭高校)を卒業し、東京大学予備門(現東京大学)に入学しますが、中退。その後アメリカやキューバ、ロンドンに渡りさまざまな研究を続けます。

世界一統(湊紺屋町)

熊楠の父・弥右衛門が、1884(明治17)年に創業した酒造会社「世界一統」(旧・南方酒造)。2代目である弟の常楠は、熊楠の自由な研究と暮らしを支えました。同社は現在、「南方熊楠生誕150年記念酒・純米・南方」(720ml・1620円)を販売中です。限定1000本。バランスの取れた酸とうま味、芳醇でキレの良い後味が楽しめます。熊楠が弟・常楠に宛てた手紙の字を元にアレンジした“南方”の文字など、ラベルにもこだわりが。
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問い合わせ 世界一統
電話 073(433)1441
住所 和歌山市湊紺屋町1-10
営業時間 午前9時~午後5時

EVENT
「水辺でお花見」4月17日(月)午後6時~8時半

世界一統の隣、市堀川河川敷で「水辺でお花見~南方熊楠生誕150周年を祝おう!~」が、開催されます。主催はわかやま水辺プロジェクト。参加費2000円(ワンドリンク付き)。参加希望者はメールで、またはフェイスブックページ(https://www.facebook.com/wakayama.mizube.project/)から申し込みを。

問い合わせ わかやま水辺プロジェクト
メール area@kishumachi.com
電話 073(425)8583

南方熊楠記念館に新館オープン

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南方熊楠記念館の新館オープンを記念したセレモニーが、3月19日に行われました。館長の谷脇幹雄さんは、「市民の力で設立した記念館。多くの“実物”に出合える展示になっています。子どもから大人、国内外を問わず多くの人に熊楠の情報を発信していきたい」と話します。

南方熊楠記念館は、今年で開館52年。1965年、白浜町の絶景をのぞむ番所山に、熊楠の娘婿である岡本清造の尽力によって設立されました。新館は紀州材を使用し、近代的でスタイリッシュな造りに。エントランスには、粘菌をイメージしたランタンが設置されるなど、随所に熊楠にちなんだこだわりが散りばめられています。熊楠の生涯が、書き写した「和漢三才図会」や標本、収集したさまざまな生物、土器、骨片、書物の実物などとともに紹介。設置された顕微鏡で、番所山の粘菌をのぞくことができるコーナーも。

熊楠の生涯を
分かりやすく展示

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最上階は展望デッキになっており、田辺、白浜を360度見渡せます。小学5年生以上で習う漢字にはふりがなが、さらに国際的に知ってもらいたいと、英文表記が加えられ、展示方法にも工夫が凝らされています。今後、本館の方では特別展やセミナーを開く予定。

問い合わせ 南方熊楠記念館
電話 0739(42)2872
住所 西牟婁郡白浜町3601-1
営業時間 午前9時~午後5時(最終入館4時半)
定休日 木曜
料金 大人500円 小・中学生300円

熊楠をより身近に感じる顕彰館

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熊楠が晩年を過ごし、数多くの研究成果を生み出した、南方熊楠旧邸に併設する施設。熊楠に関する資料を保存、研究、公開しています。生誕150周年となる今年は、さまざまな事業が企画されています。

また旧邸は、顕彰館の建設に合わせて熊楠が生きていたころの姿に復元されています。書斎の様子なども再現されているので、当時の空気感を味わいにぜひ訪れて。
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特別企画展
「南方熊楠と神秘主義」
5月7日(日)まで

熊楠は、“夢のお告げ”で珍しい植物を発見したり、“魂の入れ替わり”について論じたりと神秘的な現象に関心が。熊楠を魅了した神秘主義について迫る企画展です。昭和天皇に謙譲する標本を入れるのにも利用した、キャラメルの箱も常設展示しています。

問い合わせ 南方熊楠顕彰館
電話 0739(26)9909
住所 田辺市中屋敷町36
営業時間 午前10時~午後5時(最終入館4時半)
定休日 月曜、祝日の翌日(土・日曜、祝日に当たる場合を除く)、12月28日~翌年1月4日
料金 無料(特別展は有料)

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