被災地での体験、経験を生かして㉑

和歌山県薬剤師会・稲葉眞也会長、松尾哲也常務理事

モバイルファーマシーで調剤支援と公衆衛生管理

熊本地震の被災地へ40日間派遣

左:和歌山県薬剤師会災害対策委員長・松尾哲也常務理事 右:稲葉眞也会長

左:和歌山県薬剤師会災害対策委員長・松尾哲也常務理事
右:稲葉眞也会長

津波で医療資源が軒並み流されてしまった東日本大震災の教訓から、宮城県薬剤師会が開発した災害対応医薬品供給車両「モバイルファーマシー」を、和歌山県薬剤師会は2014年に全国で3番目に導入。熊本地震直後の16年4月19日から延べ40日間熊本県に派遣し、18都道府県の薬剤師が業務を引き継ぎながら被災者支援に当たりました。

「キャンピングカーを改造したモバイルファーマシーには、散剤、水剤を含む各種医療品が供給できる機能が整っていて、益城町に乗り込んだのですが…。当初はまだモバイルファーマシーの認知度が低く、医療班との連携もうまくいかなくて、なかなか機能が発揮できませんでした」と稲葉眞也会長は話します。

その風向きが変わったのは、移動した南阿蘇村の避難所でノロウイルスの感染が拡大したことがきっかけ。災害対策委員長の松尾哲也常務理事は、「ちょうどそこに日本赤十字社和歌山医療センターの医師が支援に来られていて、ノロ対策で手が回らないので、薬のことは任せたいと。また、われわれ薬剤師は公衆衛生の管理も担っています。毎日必要な分の消毒液を確保、調製などを行い、避難所を土足厳禁にするなどの環境整備に貢献できたことが転機となりました」と説明します。

薬品棚、分包機、清水タンクなどを備え、「自己完結型支援」ができるモバイルファーマシー

薬品棚、分包機、清水タンクなどを備え、「自己完結型支援」ができるモバイルファーマシー

診察前に患者のお薬手帳を見て、モバイルファーマシーの在庫リストをもとに薬の提案をしたり、そろえている薬のリストを日々更新して救護所内の各医療班に配布したり、その業務内容は、熊本の災害医療コーディネーターをはじめ、多くの団体から高い評価を受けました。

「阪神淡路大震災のときは、薬剤師は救護所に入れてもらことすらできず、当時と比べると災害時の薬剤師の位置付けが明確になってきました」と稲葉会長。松尾常務理事は、「熊本への派遣はいい経験になりましたが、情報がない中での準備が本当に大変で…。受け入れる側になったとき、大混乱の中で何が必要かと情報を発信することも重要だと思いました」と。

薬剤師が伝えたい災害時の備え

◆何かとスマホに頼りがちな昨今、家族の連絡先や日ごろ飲んでいる薬のことなど、必要最低限のデータはメモに書いて、持ち歩きましょう
◆被災地では、お薬手帳がカルテがわりになることも。紙のでも電子お薬手帳でも構いません。持って逃げて!
◆非常時用の常備薬は、医師や薬剤師に相談して、3日分くらい準備しておきましょう
◆もしものときに何が必要か、今はインターネットにさまざまな情報が出ています。それを見て、わが家に必要な備えを考えて

※次回12月8日号掲載

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