“音楽の殿様〞頼よりさだ貞のコレクション
南葵音楽文庫公開

2017年12月2日号

大の西洋音楽好きだった紀州徳川家第16代当主・徳川頼貞。彼が集めた貴重な音楽資料が和歌山へ。これまで、人の目にあまり触れることのなかった“紀州徳川家の遺産”に、光が当てられます。

世界的に貴重な楽譜や資料がずらり
12月3日(日)から一般公開

“音楽の殿様”と呼ばれる徳川頼貞を知っていますか。1892年~1954年に生きた、紀州徳川家第16代の当主です。幼少時から音楽に興味を持ち、21歳のときにイギリス・ケンブリッジ大学へ留学して音楽学を専攻。西洋音楽に傾倒した頼貞は、莫大な私財を投じてさまざまな楽譜や音楽関連の資料を収集しました。その中には、バッハやベートーベン、シューベルト、リストなど偉大な作曲家の希少な楽譜や、初期の活版印刷本「インキュナブラ」など、貴重な資料が多数含まれています。

1918年に頼貞が建てた、日本初の音楽専用ホール「南葵(なんき)楽堂」(東京都旧麻布飯倉、関東大震災の影響により1923年に閉鎖)併設の音楽専門図書館に所蔵されていた物を中心に、頼貞の没後に追加された物も含めた、約2万点のコレクションが、このたび和歌山へ。
ベートーベンの自筆楽譜など、特に貴重な資料は和歌山県立博物館(和歌山市吹上)、その他の資料は和歌山県立図書館(和歌山市西高松)が保存・管理。それらの一部が、閲覧室や企画展で、12月3日(日)から一般公開されます。和歌山ゆかりの殿様のコレクションを、その目で確かめてみませんか。

徳川家ゆかりの遺産が誇りに

里帰りした音楽の遺産が
和歌山県民の誇りに

和歌山県企画部企画政策局文化学術課・平原匠さん

和歌山県企画部企画政策局文化学術課・平原匠さん


南葵音楽文庫がやって来た経緯などについて、和歌山県企画部企画政策局文化学術課の平原匠さんに話を聞きました。

南葵音楽文庫は、1923年の関東大震災の後、慶應義塾図書館に委託されたり、民間へ渡ったりと転遷があり、現在は、読売日本交響楽団が所有。昨年12月に、紀州徳川家の貴重な文化遺産として保全や整理、一般への公開などに活用するため、和歌山県に寄託されました。

平原さんは、「紀州徳川家の遺産と呼べるものは、和歌山にはあまり残っていませんが、頼貞候の忘れ形見ともいえる、すばらしい“音楽の遺産”を、こうして和歌山県に迎え入れることができました。これを機に、県民の皆さんが地元に誇りを持ち、郷土愛を深めてくれたら」と話します。

読売日本交響楽団

読売日本交響楽団


その数は、楽譜や書簡、書籍など、頼貞の没後に追加された物も含め、約2万点。中には、研究家の目に触れていないものも多数。長年南葵音楽文庫について研究を続けている、慶應義塾大学名誉教授・美山良夫さんを中心に、2019年までに研究や目録データ化が進められるとのこと。新たな発見に期待が膨らみます。またその間、一般向けに、シンポジウムや室内楽の演奏などの催しも実施予定。

12月6日(水)には、寄託記念として、読売日本交響楽団が、和歌山特別公演を実施。頼貞が愛したベートーベンやモーツァルトの曲の他、注目したいのはイギリス留学時代、頼貞が師事したネイラーが作曲した「序曲・徳川頼貞」。演奏されるのは、約1世紀ぶり。音楽を通じて、紀州徳川家の歴史に思いをはせてください。

 
 

閲覧室に約2500のコレクション
2019年には、蔵書検索が可能に

ベートーベン「第九」の初版楽譜
ベートーベン「第九」の初版楽譜
ネイラー「序曲・徳川頼貞」
ネイラー「序曲・徳川頼貞」

和歌山県立図書館サービス課長・坂口佐知子さん

和歌山県立図書館サービス課長・坂口佐知子さん


和歌山県立図書館は、もともとあった特別閲覧室を改装し、南葵音楽文庫閲覧室として、12月3日にプレオープン。約2万点のコレクションの一部が、開架で公開される予定です。1967年の読売新聞社による特別公開以来、資料の実物が一般公開されるのは50年ぶり。閲覧室にはパソコンを設置し、博物館に所蔵されている資料の画像を見ることができます。

同館は資料の整理を進め、2019年までに目録データを作成。今までできなかった蔵書検索が可能になります。同館サービス課長の坂口佐知子さんは、「若者の中には、徳川家と和歌山のつながりをよく知らない人も。貴重な資料を通して、音楽に親しみ、紀州徳川家のことをより多くの人に知ってほしい」と。

整理が完了し、フルオープンとなるのは2019年の予定。

 
 

博物館には特に貴重な楽譜や資料
企画展では、頼貞の書簡が初公開

ヘンデル:「ムツィオ・シェーヴォラ」
ヘンデル:「ムツィオ・シェーヴォラ」
パーセル:ディドとエネアス
パーセル:ディドとエネアス

和歌山県立博物館学芸課長-竹中康彦さん

和歌山県立博物館学芸課長-竹中康彦さん


和歌山県立博物館で保管するのは、ベートーベンやパーセル、ウェーバーの楽譜や、イギリスの古い時代の作曲家に関わる写本など、特に貴重とされる資料98点。今回の企画展では、それらに加えて、南葵音楽図書館に勤務していた司書・喜多村進が残した、頼貞に関連する書簡や写真などが初めて展示されます。楽譜はほとんどが50年ぶりの公開です。

同館学芸課長の竹中康彦さんは、「皮肉な話ではありますが、“音楽のコレクション”という間接的な形で、紀州徳川家のかつての繁栄ぶりを知ることができます。コレクションはまだ研究途中。これからの発見に期待しています」と話します。

世界の音楽や南葵音楽文庫の歴史がギュッとつまった企画展。直接足を運んで、頼貞に親しみを感じてみませんか。

南葵音楽文庫公開

閲覧室:南葵音楽文庫閲覧室

約100年前に頼貞が集めた資料などを見ることができます。また、同室入り口の展示ケースで関連資料も紹介。12月9日(土)から、毎週土曜午前11時、南葵音楽文庫の資料や歴史にまつわる「南葵音楽文庫ミニレクチャー」も(30分程度)。

日時 12月3日(日)オープン※3日の一般公開は午後2時~4時
場所 和歌山県立図書館(和歌山市西高松)
電話 073(436)9500 和歌山県立図書館

企画展:「南葵音楽文庫 音楽の殿様・頼貞の楽譜コレクション」

ベートーベンの自筆楽譜など、貴重な資料122点が展示されます。会期中にミュージアムトークも実施。

日付 12月3日(日)~2018年1月21日(日)
場所 和歌山県立博物館(和歌山市吹上)
電話 073(436)8670 和歌山県立博物館

特別公演:読売日本交響楽団・和歌山特別公演

名門オーケストラ・読売日本交響楽団が、41年ぶりに和歌山市へ。ネイラーが頼貞のために作曲した「序曲・徳川頼貞」が、97年ぶりに演奏されます。他、ベートーベン「運命」など、南葵音楽文庫に関連する音楽家の楽曲も。指揮・川瀬賢太郎、ピアノ・仲道郁代。

日時 12月6日(水)午後7時から(6時半開演)
場所 和歌山県民文化会館大ホール
チケット S席(1階) 大人3000円、高校生以下1500円
A席(2階) 大人2000円、高校生以下500円
※未就学児の入場は不可
予約・問い合わせ 073(436)1331 和歌山県民文化会館

 



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