すごいぞ!和歌山の底力
老舗お茶屋の矜持を胸に
「はじめは抹茶ありき」

リビング和歌山4月2日号「すごいぞ!和歌山の底力 老舗お茶屋の矜持を胸に 「はじめは抹茶ありき」」

 地元企業の「人」「もの」「こと」の魅力を掘り起こし、和歌山が全国に誇る“ものづくり”の力を紹介するシリーズ「すごいぞ!和歌山の底力」。第1回目の登場は「グリーンソフト」でおなじみの玉林園です。グリーンソフト開発からプロモーション、新商品開発まで168年にわたる歴史を尋ねます。

先代たちが築いた功績を
未来へつなげる玉林園物語

和歌山市に本社を置き、お茶の製造・販売、飲食業、食品製造業を展開する「玉林園」。1854(安政元)年、江戸時代後期の創業です。

「和歌山市の梶取付近に茶畑を持ち、そのころからお茶の製造や輸出をしていました」と話すのは、現在の代表取締役で6代目となる林和宏さんです。

江戸や明治の時代には、たばこの製造・販売や塩・乾物の販売も併せて行っていました。しかし、「たばこの販売が政府に移行したことをきっかけに、1913(大正2)年からお茶を専業にすることになったようです」と話します。

石臼挽き

石臼の抹茶がこだわり。その生産量は1時間でわずか約40gのため、専門業者に1000台の石臼を使って毎日ひいてもらいます

1956(昭和31)年には、5代目の林己三彦(きみひこ)さんが代表取締役に就任し、玉林園を設立。アイデアマンの己三彦さんは、今では“和歌山のソウルフード”と称される「グリーンソフト」や「てんかけラーメン」を自ら開発し、直営の飲食店で販売するなど、事業を多角化していきます。

2002(平成14)年に先代たちの思いを受け継ぎ、和宏さんが代表取締役に。液状抹茶の販売をきっかけに、大手レストランチェーンのデザート開発・製造業が主力売り上げになるなど、さらなる快進撃が続きます。

2008年には、「和歌山県100年企業表彰」を受賞。時代を越えて、常に新しいことに挑戦し続けていますが、その一方で、「“はじめは抹茶ありき”の考えがいつも軸にある」とも。老舗お茶屋の矜持を胸に、「先代たちが築いた味や製法を守っていきたい」と、和宏さんは未来を見据えます。

毎日食べても飽きないから
世代を超えて愛される

「夏に求められる商品を…」
緑のソフトクリーム誕生秘話

グリーンソフトご当地スイーツとして県民に愛される、玉林園の看板メニューの一つ、「グリーンソフト」。その誕生は60年以上前にさかのぼります。

「夏場になると茶葉が売れなくて。何か代わる商品はないか、と先代が生み出しました」と和宏さん。「海外では抹茶に牛乳を入れて飲む」という話をヒントに、夏場に求められるアイスクリームに、抹茶で味付けすることを思い付いたそうです。

「開発当時からこだわったのは抹茶。飲むお茶同様に、石臼(うす)で丁寧にひいたものを使うのは今も昔も変わりません」

風味や色合い、舌触りの良さ。お茶屋ならではのソフトクリームを目指し、試行錯誤の末、1958年に「グリーンソフト」が誕生。抹茶アイスどころかソフトクリーム自体が珍しい時代でしたが、さっぱりと飽きのこない和のテイストが地元で受け入れられました。

こどもの日引換券サービスで
郷土愛あふれるソウルフードに

そして、「グリーンソフト」をローカルスイーツに決定づけたのが、「こどもの日グリーンソフト券」の無料配布です。1968年から毎年、50年以上にわたって、和歌山市や海南市、紀の川市の園児に1万5000枚もの引換券を贈っています。

グリンちゃんとチャーミーちゃん

同社のマスコットキャラクター、
チャーミーちゃん(左)とグリンちゃん

「家族みんなで、グリーンソフトを親しんでいただくきっかけになっています」と和宏さん。「慣れ親しみすぎて、『ソフトクリームは緑色で、抹茶味のものが普通』と思っている子もいるみたいですけど(笑)」

帰省した際は必ず食べるという人も多く、まさに幼少からDNAに刷り込まれた和歌山のソウルフードの一つになりました。

「引換券の利用最終日は、今もお客さんでごった返しています。スタッフは気合を入れて、グリーンソフトを一日中巻いていますよ」と和宏さんは笑って話します。

店舗外観

グリーンコーナーが併設された本社。近くには日本家屋のカフェ「お茶店・茶道具」もあり、入れたての日本茶を楽しめます

他県からも注目され
年間200万個を売り上げ

毎日食べても飽きないと評判のグリーンソフトは、ご当地グルメとして全国区のメディアも注目。和歌山市出身のミュージシャン・HYDE(ハイド)さんの紹介や、SNS効果が後押しし、ソフトタイプとハードタイプを合わせて、年間200万個の売り上げを誇ります。

「ハードタイプはもともとソフトクリームマシンの中に残ったアイスをコーンに入れて保存していたんです。それを見たお客さんが購入したことで商品化し、スーパーやコンビニに卸し、ネット販売につながりました」

SNSで取り上げられることは、「宣伝につながり、商品の意見もいただけてありがたいです」。ソフトの巻きが悪いなどの書き込みには、社内で巻き方検定を導入し、合格したら時給をアップ。「常に商品の魅力向上を図っています」と話します。

ひきたて抹茶やほうじ茶が
効いた“大人スイーツ”が人気

現在、和歌山市内に6つの直営店を運営する玉林園は、2年前に若い世代にアピールする日本茶専門店として「紀州茶屋 玉林園」(和歌山市東蔵前丁39・キーノ和歌山2階)をオープンしました。

玉露などの高級茶を気軽に楽しめるほか、店内の石臼でひいた抹茶やほうじ茶を使ったドリンクメニューや、和スイーツメニューが豊富にそろいます。

時代に即したお茶の魅力を発信する、玉林園の挑戦のカタチ。いつまでも進化し続ける、老舗お茶屋に期待大です。

和風プリン

ほうじ茶プリン490円(写真上)ほうじ茶パウダーがほろ苦さを演出する大人テイストのデザート
抹茶プリン490円 (写真下)石びき宇治抹茶を使用。濃厚なテイストと滑らかな舌触りが特徴

和風ティラミス

ほうじ茶ティラミス490円 (写真上)香ばしい特上ほうじ茶にマスカルポーネの風味がマッチ
抹茶ティラミス490円 (写真下)抹茶のフレッシュな香りとほのかな苦さが上品な逸品

代 表 者 代表取役 林和宏
本   社 和歌山市出島48-1
従 業 員 数 約140人(パート・アルバイト含む)
創    業 1854年
電 話 番 号 073(473)0456
ホームページ http://gyokurin-en.co.jp/

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