人の声に包まれる心地よさ 大人のための昔話

リビング和歌山12月9日号

 心豊かに過ごす“Good Life”。今週号では素語りで話される「昔話」を楽しむ提案をします。遠い昔から語り継がれてきた“おはなし”の世界に身をゆだねると、大人も穏やかな気持ちになれます。そんな昔話の魅力を伝えます。

自らの経験を重ね合わせて聞く
語り継がれてきた物語の魅力

「むかしむかし、あるところに…」。そんな決まり文句で始まる“昔話”。幼いころ、お母さんから、それともおばあちゃんやおじいちゃんから聞いたことがあるでしょうか? 昔話といえば、子どもが聞くものというイメージがあるかもしれません。しかし、大人になってから耳を傾ける昔話の世界にも、たくさんの魅力が詰まっています。

「遠い昔から、時代や場所を越えて語り継がれてきた昔話には、人々が生きてきた知恵や工夫があって、実はそれは、現在を生きる私たちの生活にも通じるものなんです」。そう話すのは、和歌山おはなしの会「語りの森」の上甲ひとみさん。「そこには、喜びや楽しさ、時には悲しみや苦しみを感じながらも人々が生きる姿が描かれています。それは、どの時代の、どの場所の人たちでも共感できて、だからこそ語り継がれ続け、今に残されています。まさに今を生きる人たちへのメッセージが込められているんですね。そんな昔話を子どもに語ると、物語の中にすっぽり入って、未知の世界を自分が主人公となって体験します。大人になってから聞く昔話は、自らの経験を物語に重ね合わせ、その世界を楽しめます」とも。

同会は、人の声で語り継いできた昔話を、そのままのスタイル、“素語り”で今に伝えています。そんな同会を通して、昔話の魅力に迫ります。また、「大人のための昔話の会」を12月24日(日)に企画しました(詳細2面参照)。子どもだけのものにするのはもったいない“昔話の世界”に、あなたもひたってみてください。

語る人の息づかいを感じながら

11月28日の勉強会にあつまった「語りの森」メンバー

11月28日の勉強会にあつまった「語りの森」メンバー

本や台本を見ずに
記憶にある昔話を
自らの肉声で語りかける

ろうそくに火をともして語ります

ろうそくに火をともして語ります

部屋の明かりを落とし、ろうそくに火がともされると、昔話の始まりです。和歌山おはなしの会「語りの森」が昔話を語るときは、いつもろうそくの火がともされます(会場に制限がある場合は除く)。同会によると、これはアメリカを中心として広がったストーリーテリングの手法。暗闇の中、ほのかに浮かび上がるろうそくの明かりを囲むように子どもたちが集まり、語り手の声が響くと、一気に物語の世界に引き込まれます。

同会の発足は1988年3月。約30年にわたり、こうして子どもたちに昔話を語る活動を続けてきました。ストーリーは語り手が記憶し、本や台本を読んで聞かせるのではなく、そう、本来昔話が人から人へ語り継がれてきたように、語り手の記憶の中にあるストーリーを生の声で話す“素語り”で、物語を届けます。

語る場所は、子ども文庫や学童保育をはじめ、幼稚園や保育園、小中学校、子ども会など、要望に応えてさまざまな所に出向きます。同時に絵本を持ち込み、子どもたちと本を結びつける役割も果たしてきました。また、近年では、昔話と同じように古くから伝え継がれてきたわらべうたも活動に取り込んでいます。

毎週行われる勉強会では、練習した昔話をメンバーに披露し、意見交換をします

毎週行われる勉強会では、練習した昔話をメンバーに披露し、意見交換をします

さらに活動の場所は、和歌山市民図書館や県立自然博物館、県立紀伊風土記の丘などの公的な施設のほか、独自で会場を開拓した「あしべ屋妹背別荘」(和歌山市和歌浦中)などにも広がり、子どもたちに限らず、広く一般の人たちも昔話に触れられる機会が増えてきました。中には大人が多く集まる会場もあり、また出張訪問先に高齢者施設が加わるなど、同会が“大人”のために昔話を語ることが、今では少しずつ増えています。

人の声がもつ温かみを心地よく感じる
今の時代にこそ、大切にしたいひととき

「大人も、子どもも、人の声に包まれるという時間や空間が心地よいからでしょう」と話す上甲さん。「昔話って、おじいちゃんやおばあちゃん、またお父さんやお母さんが子どもに話し聞かせて伝えてきたもの。今のようにテレビはもちろん、本さえもない時代に、“語られる”おはなしの世界が子どもたちの娯楽で、その時間がきっと待ち遠しかったに違いありません。昔なら囲炉裏端だったのでしょうか、家族が集まる場所で、例えば、おじいちゃんの膝の上に乗ったりして、家族の体温や息づかいを間近に感じながら、耳を傾ける—。そんな時間や空間の温かさを懐かしく、そして心地よく思う気持ちを、昔話が思い起こさせるのかも知れませんね」とも。

今はメールやSNSが普及し、人とのコミュニケーションで利便性が高まったかもしれません。しかし、どうでしょう? その一方で“人の声”に触れる、顔を見合わせて話す、電話ですら“話す”ことがめっきり少なくなってはいないでしょうか。こんな時代だからこそ、語り手の息づかいを感じながら目と目を合わせ、生の声で語られるひとときが、大人、子ども問わず、なんとも穏やかに感じられるのでしょう。

今回、和歌山おはなしの会「語りの森」による「大人のための昔話の会」を企画。県立紀伊風土記の丘で、クリスマスイブの12月24日(日)に開催します(左記参照)。クリスマスや年の暮れにちなんだ昔話を中心に、同会のメンバーが語ります。また、雅楽の楽器・笙(しょう)の演奏も。すてきなクリスマスイブのひとときを過ごせそうですね。家族や友人と一緒に、いかがですか。

これまでの活動が評価され
今年度の「キワニス賞」を受賞

和歌山キワニススラブ・岩橋会長(左)、語りの森・馬場代表(右)と上甲さん(中央)

和歌山キワニススラブ・岩橋会長(左)、語りの森・馬場代表(右)と上甲さん(中央)

「語りの森」のメンバーは現在約50人。毎年、語り手の養成講座を開催し、会員数を増やしながら、活動の幅を広げてきました。子育て中のママやシニア世代まで、幅広い世代の男女が集まり、毎週勉強会を重ねながら、数人ずつで1カ月50カ所以上に足を運んでいます。物語のレパートリーは、多い人で150話近く、会員歴8年のメンバーでも40?50話を語ることができます。

こうした同会の活動や地域での功績が評価され、今年度、国際的な社会奉仕団体である「和歌山キワニスクラブ」(会長=岩橋一博)による「第23回キワニス賞」を受賞しました。これは、例年同クラブが地元の個人や団体を表彰するもので、献身的に社会貢献活動に取り組む人たちに贈られます。

「ちょうど来年で語りの森の活動が30年になります。この節目となる時期に素晴らしい賞を受賞させていただき、今後の活動の励みになります」と同会の馬場美鈴代表。「デジタルが主流となるこれからの時代だからこそ、ふれあいを大切にしながら話す“昔話”を大切に、その素晴らしさを一人でも多くの人に伝えていきたい」と話していました。

名前 和歌山おはなしの会「語りの森」
問い合わせ先 073(422)7432事務局(上甲さん)
メールアドレス hippi_j@msn.com
活動 活動についてはホームページ

 

クリスマス&年の暮れの特別バージョン 紀伊風土記の丘で大人のための昔話の会

和歌山おはなしの会「語りの森」のみなさんによる、大人のための昔話の会。和歌山県立紀伊風土記の丘の園内にある「旧柳川家住宅」の建物の中で開催します。クリスマスや年末、またお正月にちなんだ国内外の昔話の数々が語られます。おはなしの合間には、雅楽に用いられる楽器「笙(しょう)」の演奏も。古いお屋敷の情緒あふれる雰囲気の中、優雅な音色を楽しんでください。

プログラム

笙の演奏をするのは 塚田由里子さん

笙の演奏をするのは 塚田由里子さん

1.こびととくつや(川野寛子さん)
♪・・・・・・・・笙の演奏・・・・・・・・・・
2.干支のはじまり(中野直美さん)
3.塩吹き臼(馬場美鈴さん)
4.笠地蔵(上甲ひとみさん)
♪・・・・・・・・笙の演奏・・・・・・・・・・・
5.年こしのたき火(中村智子さん)
6.はなたれ小僧さま(北出美恵子さん)
7.馬子と山んばばあ(熊山亜住さん)
♪・・・・・・・・笙の演奏・・・・・・・・・・

旧柳川家って?

 

旧柳川家旧柳川家紀伊風土記の丘に移築されている民家の一つ。海南市黒江にあった黒江塗の漆器問屋の屋敷。1807年の建築で、国の重要文化財に指定されています。「みせ」と「みせおく」、その背面に「だいどころ」と「なんど」を配置した「田」の字型の4室、さらにその奥に座敷を突出させた“町家”の標準的な間取り。普段入ることのできない屋敷の中で、今回は昔話に耳を傾けることができます。どこか懐かしさを感じる伝統的な日本家屋の中で聞く昔話は格別です。

地図

日時 2017年12月24日(日) 午後1時半〜3時ごろ
会場 和歌山県立 紀伊風土記の丘
旧柳川家住宅
(和歌山市岩橋1411)
定員 50人(要申し込み、先着順)
申し込み方法 電話で和歌山リビング新聞社まで。12月11日(月)午前10時から受け付けます
参加費 無料
申し込み
問い合わせ
073(428)0281 和歌山リビング新聞社
(祝日除く月〜金曜午前9時半〜午後6時半)

 



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