新型コロナで変化が加速していく、葬式や遺体との関わり方

誰しもに訪れる、最期のとき。どんな風に見送りたいか、どんな風に見送られたいか。後悔しないよう、考えたいですよね。近年の社会情勢や家族の形の変化により、増加している「家族葬」を中心に、“お別れの仕方”について考えます。

\教えてくれたのは/
和歌山シニアサポート協会 代表理事
辻本 和也さん

厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査1級葬祭ディレクターの資格を持つ葬祭のプロ

焦って決めるのは禁物
事前に納得のいく決定を

 15年ほど前から、メディアなどで取り上げられるようになった「家族葬」。ここ10年のうちに葬儀全体の5割程度まで伸びています。「さらに新型コロナウイルスの影響により、家族葬という選択が一気に広まっているという印象です」と、和歌山シニアサポート協会・代表理事の辻本和也さん。

 費用が抑えられ、近親者だけでゆっくりとお別れをすることができる家族葬。対して、故人の職場の関係者や友人らが集まる一般的な葬儀は、家族以外の他者から見た故人の姿を知る良い機会でもあります。どのような送り方が本人や家族に合っているか、事前に家族でしっかりと話し合うことが大切。亡くなってから喪主が焦って決めてしまうというのは、避けたいものです。疑問や不安がある場合は、葬儀会社に問い合わせてみたり、相談してみたりすると良いでしょう。

家族葬に関してよくある疑問や悩みをいくつかピックアップ。辻本さんに答えてもらいました。

Q1.家族葬って何?

A.明確な定義はありませんが、ほとんどの場合、葬儀に呼ぶ人をあらかじめ制限し、家族や近親者らを中心に、少人数で行う葬儀のことをいいます。全国的に、家族葬を選ぶ家庭が増加しています。

Q2.血縁者以外は家族葬には参列しない方がいい?

A.親しい友人やお世話になった人が逝去し、どうしてもお別れをしたいときの悩み。家族葬といえど、遺族の意向はそれぞれで、必ずしも参列をかたくなに拒んでいるわけではありません。訃報に日時や会場の記載があれば、葬儀会社に問い合わせて確認しましょう。

Q3.家族葬のメリットは?

A.近親者だけの小規模な葬儀になるので、家族がゆっくりと故人とお別れの時間を過ごすことができます。また、飲食費や返礼品などの費用を抑えることができること、列席者への対応など、遺族の精神的な負担を減らせることなどもメリットといえます。

Q4.家族葬の費用、平均は?

A.一般的な葬儀にかかる費用は、和歌山県の平均で120~130万円ほど。家族葬は一般葬に比べてコストを抑えることは可能ですが、参列者数、祭壇や棺(ひつぎ)、オプションなどのグレードにより、さまざまなプランがあるので、費用はまちまちといえます。

Q5.家族葬に向かないケースは?

A.職場や自治会などで、“顔の広い”人の葬儀に関しては、家族葬でなく一般的な葬儀をおすすめします。家族葬をとり行った後日、故人への思いを持つ人から、個別の連絡や自宅への訪問があるなど、遺族にとって負担となる場合があります。

Q6.コロナ禍で葬儀に変化は?

A.県外からの移動を控えている人が多い中、参列者の少ないコンパクトな葬儀が増加。中には、参列できない人に向けて葬儀の様子をライブ配信する「オンライン葬儀」や、車に乗ったまま焼香ができる「ドライブスルー葬儀」もあります。

Q6.もしものときのため、準備しておくべきことは?

A.“終活”が浸透し、死に関する事柄がタブーではなくなってきています。家族で葬儀について話し合う機会を設け、どの葬儀会社にどんなプランがあるか、リサーチしておくことが重要です。

故人のために必要なこと、できること
遺体ケアとは

現在、日本では遺体の衛生面に関する法制度がなく、医療や福祉の現場では、死後の処置をしたりしなかったり、処置内容にもばらつきがあります。また、「病院がしてくれている」「葬儀社がしてくれるだろう」と、遺族の認識もあいまい。このような状況を改善するために生まれたのが、「遺体ケア」です。医療に準じ、科学的根拠に基づいた遺体専門の技術を持つ美粧衛生師が、故人の死後に起きるさまざまな変化に対応しながら、遺族が安全に寄り添えるよう、感染予防対策や腐敗の抑制など衛生面から支え、故人の眠っているように美しい姿をケアにより守ります。

新型コロナウイルスの感染拡大により、遺体から感染があることや安全面から、故人と最期の面会がかなわなかった遺族も少なくありません。ウイルスなどの病原体は、宿主となる人が亡くなると死滅するというイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、「宿主が死亡した場合、病原体は〇時間後に死滅する」といった医学的なデータはありません。さらに細菌は、宿主が死亡しても遺体を栄養源にして増殖します。また、生前に発症しなかっただけで、実は病原体となるウイルスや細菌を持っていたというケースも。そのため、生前持っていた病気や、損傷の有無、葬儀までの時間に関わらず、遺族はもちろん葬儀社らが遺体と接するときの安全性を保つため、どの遺体にもケアが必要なのです。

このような事実からも、今後の葬儀には安全と安心、清潔さと美しさが求められていくでしょう。遺族は、故人の死化粧を施された美しさよりも、眠っているような安らかな表情に安心するという印象を受けます。故人の「死に顔」が生前とは異なり、心を痛める遺族もいます。そこに死後の変化が加わっていくので、継続的に専門的なケアをすることが重要です。そのような点を踏まえると、“儀式”を主体として提供する納棺師や湯灌(ゆかん)師では、感染への対策を含めて対応することが難しいのが現状です。看護や介護に続いて、遺体の専門技術者による新たなケアを導入し、遺族が安心して故人に寄り添え、より良いお別れをする儀式につなげるのが、これからの葬儀の新しい姿ではないでしょうか。

\教えてくれたのは/
和歌山遺体管理ケアセンター
平野 泰寛さん
遺体美粧衛生師で、遺体感染管理士の資格を持つ、“遺体ケア”の専門技術者

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