日本赤十字社和歌山医療センター 「がんセンター」開設

 「日本赤十字社和歌山医療センター」(和歌山市小松原通)に1月12日(火)、「がんセンター」が開設されます。今や、日本人の2人に1人が、生涯に一度はがんにかかる時代。一昔前までがんは、「不治の病」といわれていましたが、医療技術・診断法の進化により、治療できる病気に。「日赤がんセンター」の全容を紹介します。

総合病院の強みを生かした
チーム医療で治療も生活もサポート

地域の高度急性期病院として救急医療、がん治療を含む高度な医療を担う「日本赤十字社和歌山医療センター」。「当センターは、がん治療の3本柱である外科手術、放射線治療、薬物療法すべてにおいて全国上位レベル。免疫療法の症例も増えてきています。ここ和歌山で先進的ながん治療が受けられます」と平岡眞寛院長が語るように、同センターは2019年4月、厚生労働省の「地域がん診療連携拠点病院(高度型)」に指定されています。

予防、検診、検査、診断、治療、緩和、救急、相談支援など、がんに関わるすべての診療が高いレベルで機能していますが、その機能を集結させたのが、「日赤がんセンター」。「総合病院に『がんセンター』を設けていても機能しているところは全国でも少ない。がん治療を専門とする病院もありますが、がん治療に特化しているがために、患者の高齢化による併存疾患や、入院期間の短縮、外来治療への移行などで、増加傾向にある救急搬送については受け入れにくいのが現状。われわれは、総合病院の強みを生かし、併存疾患や救急にも対応しながらがんを治療していきます」と平岡院長は話します。

「日赤がんセンター」の最大の特長は、一人のがん患者に対して、診断から治療、社会復帰まで“チーム医療”でサポートすること。本館2階に、「臓器別ユニット」という外来が新設され、ここで、診察、診断、治療方針を決定。「臓器別ユニット」は、肺、前立腺・尿路、血液、食道・骨など14ユニットあり、がん治療各分野の専門医が英知を結集して治療方針を決め、新たにシステムを整備した電子カルテで情報が共有されます。

平岡院長は、「医療の進歩で、治療の選択肢が増えてきている今、患者の意思を尊重しながら、知識、技術を持った複数の専門医で最善の治療法を考えていかなければいけない」と力を込めます。

平岡院長にインタビュー
「日赤がんセンター」って どんなところ?

がん診療専門のがんセンターがすごく身近なところにできたのは心強いですが、一体がんセンターって何? 今までのがん治療と何が違うの…? と気になることを平岡眞寛院長にインタビュー。 平岡院長は京大病院がんセンターを創設した経験があり、がん放射線治療の第一人者として、日赤和歌山医療センターでもがんの診断や治療に加え、緩和ケア、患者や家族の相談・支援に注力。 「日赤がんセンター」の構想から開設まで、その思いを聞きました。

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

【プロフィル】
1995年43歳で京都大学放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現・医学研究科放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授、京大病院初代がんセンター長。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発。2016年から現職

全国的にも最前線のがん治療が受けられる病院
「臓器別ユニット」でより最適な治療法を検討、選択

ー日赤和歌山医療センターのがん治療の現況について聞かせてください

最近のがん診療は、身体への負担が少ない治療へと進歩しています。具体的には、内視鏡を使って内側からがんを切除する「内視鏡治療」、大きく切り開かない「内視鏡下手術」の他、手術支援ロボット「ダヴィンチ」も早くから導入し、昨年4月には手術中にCT撮影などができる「ハイブリッド手術室」の運用も開始しました。腫瘍に集中的に照射する「強度変調放射線治療」「定位放射線治療」や「がん免疫療法」の症例も多く、がんの診療では、先頭グループにいる病院の一つだと思っています。

ーがんセンターの開設は、いつから準備してきたのですか

京大病院でがんセンターの設立に関係したこともあり、当センターにもがんセンターをつくりたいという気持ちはあって、ずっと構想を練ってきました。なかなか難しいんですよね。ここはがん専門病院ではなく総合病院で、がん以外の病気で来られる方もたくさんいます。でも今は、2人に1人ががんになるのだから、がんにもきっちり対応したいなという思いが強く、院長に就任してから準備を進めてきました。

ーなぜ、がんセンターをつくりたかったのですか

それぞれの診療機能はすごく高いのですが、効果があってかつ、安全性の高い医療を継続して提供していくためには、その機能をバランスよく発展させていく必要があります。そのためにも、機能を一元化したかったというのが一つ。それと、がん診療は、さまざまな診療科が関係するので、診療科・職種横断的なチーム医療を推進して医療の質を向上させるという目的も。さらに、和歌山県のがんの生存率が全国的に見てかなり低いというのも理由です。今は昔と違って、がんは早期に発見して、適切な治療を受ければ治る可能性が高い病気。残念ながら和歌山県は検診の受診率も低く、もしがんが見つかっても、和歌山で必要な治療が受けられるということを知ってもらいたくてがんセンターをつくりました。

―「日赤がんセンター」ってどんな施設、機能なのでしょうか

診療部門と支援部門で構成。診療部門には、14の「臓器別ユニット」と、11の「センター・チーム」があります(左表参照)。支援部門は3つの「センター」に「医療連携」「教育・研修」「広報」が含まれます。今回、「がんセンター」とするにあたり、新たに「がん周術期ケアセンター」「がん救急チーム」「がん情報センター」を設置。「がん・生殖サポートチーム」と「がん相談支援センター」は機能を拡充しました。

―京大病院のがんセンターでも導入されている「臓器別ユニット」についてもう少し説明してください

がん診療に関わる外来を「臓器別ユニット」として本館2階に集約。大腸、乳腺など臓器別にユニットがあり、各ユニットは、外科医、内科医、放射線治療医など多くの医師で構成しています。日本の医療は“主治医制”がとられてきましたが、これだけ治療法が進歩してくると、一人のドクターだけで、すべての情報を得て判断するのは困難です。知識・技術を持った専門の医師が集まり議論して、一人一人の患者にとって最適な治療を進めていく必要があります。

―他に新設した機能についても補足をお願いします

「がん周術期ケアセンター」は、良い状態でがんの手術が受けられるよう支援していくところ。昨今、高齢化の影響で、高齢患者のがん手術が増加しています。高齢になると、糖尿病や心疾患など併存疾患を持っている人も多く、他の病気を管理しながら、入院や手術をサポートします。「がん救急チーム」は、これまで救急とがんは、あまり関連性がなかったのですが、今のがん治療は、手術してもすぐに退院して、放射線治療や薬物治療は通院で受けてもらう“外来化”が進んでいます。突発的な体調不良にも救急で対応できる体制を整えました。「がん情報センター」は、和歌山の人に広く、正しい最新のがん情報を伝えていきたいのと、当センターのがん治療をしっかり評価する狙いもあります。

治療後のがんとともに生きていく人生もサポート

―本人や家族の精神面、生活面のサポートにも力を入れています

昔は“がん=死”でしたが、今は治療ができるので克服して、でも不安を抱えながら生活している人がたくさんいます。治療中や病後の社会生活、若年層であれば、就職や将来の妊娠・出産のことも考えなければいけません。「がん相談支援センター」「がん・生殖サポートチーム」は、がんとともに生きていく人生をしっかりサポートするために強化しました。

―コロナ禍のオープンとなりました

ワクチンの接種が始まったとしても、事態はすぐには収束しないと思います。そうなると数年間、コロナのことを意識しながら、がんのことも考えないといけません。コロナだからといってがんの進行は止まってくれませんので、検診は継続して受けていただきたいし、治療中の人は治療を続けてください。治療に関しても、大至急対応しないといけないことは対処して、不急の治療は様子を見るとか、説明して相談しながら行っています。あらゆる感染対策に努めながら、がん治療を含む高度な医療や救急医療を提供し続けていきます。

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