日本一の骨格化石 和歌山 モササウルス

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和歌山で発掘されたモササウルス類の化石、その規模は日本一を誇ります。発見から10年、ようやくクリーニング作業が完了。今後さらに研究が進めば、この化石は世界からも注目を集めることが期待されます。現在、和歌山県立自然博物館で実物化石が展示されています。

全身骨格の50%以上を化石として発掘
県立自然博物館で実物公開中!!

平成18年2月、和歌山県有田郡有田川町の鳥屋城山(とやじょうさん)で、当時京都大学の大学院生だった御前明洋さん(現・北九州市立自然史・歴史博物館学芸員)が化石を発見。これを受け、京都大学と和歌山県立自然博物館が調査を行うと、それは、今から約7500万年前の白亜紀後期に生息していた大型海生爬虫(はちゅう)類〝モササウルス〞の骨の化石であることが分かりました。

現在の生き物ではトカゲやヘビが近い仲間となりますが、モササウルス類は海の中に生き、中には体長が10㍍を超えるものも。強力な顎と鋭い歯で小型の首長竜までも襲うこともあり、当時の〝海の覇者〞とされています。

和歌山で見つかったモササウルスは、全長約6メートルと推定。採取された化石は骨片も含めると全部で約400にもおよび、どこの骨なのか分かるものをつなぎ合わせると骨格全身の約50%以上になりました。

同館学芸員の小原正顕さんによると、モササウルス類の化石は国内で約40の発掘例がありますが、これほどの部位がそろうのは他になく、まさしく日本一。しかも、前足と後ろ足の両方がそろうのは、アジア初の快挙だとか。「日本を含むアジアでは、モササウルスについての研究があまり進んでいませんが、この化石を研究することで大きく前進します。世界からも注目されるほどの化石になると思います」と話します。

世界も注目!

写真の骨格の大きさの比率は実際とは異なります

頭骨(とうこつ)下顎の骨は、ほぼ完全に保存。くっついたままの歯も数本確認できます。歯は死後に腐敗の過程で抜け落ちることが多いそうです

頭骨(とうこつ)
下顎の骨は、ほぼ完全に保存。くっついたままの歯も数本確認できます。歯は死後に腐敗の過程で抜け落ちることが多いそうです


椎骨(ついこつ)と肋骨(ろっこつ)首から腹部にかけて27個の椎骨がつながった状態で見つかっています右前足(ひれ)の骨第1指から第3指(親指・人さし指・中指)についてはほとんど指先まで残っていて、世界的にみても珍しく貴重な存在

椎骨(ついこつ)と肋骨(ろっこつ)
首から腹部にかけて27個の椎骨がつながった状態で見つかっています
右前足(ひれ)の骨
第1指から第3指(親指・人さし指・中指)についてはほとんど指先まで残っていて、世界的にみても珍しく貴重な存在


左後ろ足(ひれ)の骨後ろ足の骨化石は国内では他に例がありません。大変貴重な発見!

左後ろ足(ひれ)の骨
後ろ足の骨化石は国内では他に例がありません。大変貴重な発見!

実物大の全身骨格を復元
モササウルスの種類を特定する調査

小原正顕さん和歌山県立自然博物館主査学芸員。専門は古生物。平成19年には和歌山県初の恐竜化石を発見。平成22年からモササウルス化石の発掘調査とクリーニング作業の陣頭指揮を執る手に持つのは、大きく、鋭い歯の実物化石

小原正顕さん
和歌山県立自然博物館主査学芸員。専門は古生物。平成19年には和歌山県初の恐竜化石を発見。平成22年からモササウルス化石の発掘調査とクリーニング作業の陣頭指揮を執る
手に持つのは、大きく、鋭い歯の実物化石


クリーニングが完了し、いよいよ〝和歌山モサ〞についての本格的な研究が始まります。これらの化石を元に、実物大の全身骨格のレプリカも制作される予定。「化石の数が多いですから、生きていた姿に、かなり近いものがつくれるでしょう」と小原さん。そうなれば、日本にいたモササウルスの復元としては、初めての試みとなります。

また、この化石は「モササウルス亜科」の一種であることは判明していますが、モササウルスには、現在分かっているだけでも70〜80の種類があります。ひれや頭などの骨の形や特徴を一つずつに詳しく照らし合わせていくと、どの種類か分かります。小原さんは「当てはまるものがなければ、〝新種〞の可能性もありますよ」とも。今後の研究には、まだ5年以上かかると予想していますが、〝和歌山モサ〞について、少しずつ明らかになっていくのが楽しみです。

展示期間中には
イベントも企画

和歌山県立自然博物館は、この春に玄関ホールの展示をリニューアル。今後は、季節的なもの、その時期に合わせたタイムリーなものなど、期間を設けて展示を入れ替えていきます。今回のモササウルスの実物化石の展示は、クリーニング作業が完了したことを記念し、リニューアル第1て行われています。

展示期間中、読者向けのイベントを同館の協力により企画しました。5月3日(祝)に、モササウルスの骨格化石を見ながら、小原学芸員が解説。発掘秘話なども聞けます。現在、参加者募集中。また、5月7日(土)には、愛好家たちが集まる〝モササウルスの談話会〞も(どちらも下記参照)。

実物の化石が見られるのは貴重な機会。世界が注目する〝和歌山モサ〞に会いに行きましょう。

モササウルス類の骨格復元図(右半身)原画=谷本正浩(一部加筆・修正)赤く塗られた部分が、化石として発見された骨格

モササウルス類の骨格復元図(右半身)
原画=谷本正浩(一部加筆・修正)
赤く塗られた部分が、化石として発見された骨格

モササウルス類化石(実物)の展示公開中【5月8日(日)まで】

場所 和歌山県立自然博物館
(海南市船尾370-1)
玄関ホール
開館時間 午前9時半~午後5時(最終入館は4時半)
休館日 月曜(祝日・振替休日の場合は次の平日)
入館料金 大人470円、高校生以下・65歳以上は無料

県立自然博物館でイベントやるよ!

リビング読者のための小原学芸員の解説付き実物化石見学会
「もっと知りたい!モササウルス」参加者募集

日時 5月3日(祝)午前10時半から(現地集合)
参加費 無料(大人は入館料が必要です)
定員 20人 ※応募者多数の場合は抽選
申し込みは電話で下記へ
(大人も子どもも参加できます)
申し込み・問い合わせ 073(428)0281和歌山リビング新聞社
(月~金曜 午前9時半~6時半 ※祝日除く)
締め切りは4月25日(月)

〈談話会〉「モササウルスについて語り合おう」

日時 5月7日(土)午後0時45分から
場所 館内レクチャールーム
参加費 無料(大人は入館料が必要です)
内容
  • 小原正顕学芸員の基調講演
  • 恐竜好きのサックス奏者・本多俊之が、恐竜をテーマにした新曲「モサのテーマ」を披露
  • 談話会

本多俊之さん、大阪大学総合学術博物館の伊藤謙さん、フィギュアを手がけた古田悟郎さん、サラリーマン・化石ハンターの宇都宮聡さん、小原正顕学芸員などが、モササウルスについて熱く語ります!

対象・定員 小学生以上一般・60人
申し込みは電話で(先着順)
申し込み・問い合わせ 073(483)1777
和歌山県立自然博物館

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