がん医療に携わる医師らがコミュニケーション技術を学ぶ

和歌山県立医科大学が県内で初めて研修を実施

研修風景。今回は和歌山県立医科大学附属病院の医師4人が参加。本当の患者さんと向き合うように会話し、後に観察していた医師と意見交換

研修風景。今回は和歌山県立医科大学附属病院の医師4人が参加。本当の患者さんと向き合うように会話し、後に観察していた医師と意見交換

がんは日本人の死因の第1位、がんで亡くなる人の割合は年々増えています。そんな中、がん医療に携わる医師たちが、患者とコミュニケーションを図る上での技術を学ぼうと、2月4日と5日の2日間に渡って、和歌山県立医科大学で研修が行われました。

「がん診療をする中で、告知や再発、抗がん治療の中止など、患者さんにとって深刻なお知らせをしなければならないケースがあります。そのとき、どう伝えるか―。患者さんが楽観してはいけないし、悲観的になりすぎてもいけない、医師にとって難しい“伝え方”の技術を学ぶための研修です」。そう説明するのは、県立医科大学腫瘍センターの上田弘樹副センター長。

厚生労働省は、10年前から日本緩和医療学会などに委託し、「がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修(CST)」を行ってきました。しかし、機会が非常に限られているため、数年前から各施設が独自に実施。今回、和歌山県では初めて行われました。

よくない知らせをどのように伝えるか

上田弘樹・腫瘍センター副センター長

上田弘樹・腫瘍センター副センター長

CSTの特徴は、学会が認めたボランティア協力者が患者役となり、ロール・プレイ式で行われる点。「大学の講義でロール・プレイを行うこともありますが、患者役を同じ学生がしたり、真実味があまり持てません。CSTでは患者役専門の方がいて、現実さながらのやり取りが続き、その一部始終を他の医師が観察し、後で意見を交換します。普段の診療ではできない経験で、何気ない医師の言葉やしぐさが、患者さんにどんな印象で伝わったのかが、よく分かります」と、上田副センター長。

「患者さんの気持ちをくむことは、治療方針を決める上でとても大切なこと。お互いに納得して治療に臨める信頼関係が医師と患者には必要。そんな信頼を築くコミュニケーションのスキルを、トレーニングで身に付けられることを医師にも知ってもらいたい」とも。

CSTの実施は、学会がファシリテーターとして認定した医師と臨床心理士が行うことが条件。県内には、上田副センター長を含む3人がファシリテーターとして認定されています。このチームで、来年度も研修実施に向けて取り組みます。

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