「抗認知症薬」の実用化へ 漢方の可能性とは?

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和歌山を拠点に、技術や革新を生み出し、オンリーワン企業へと挑戦し続ける地元のものづくり産業。今回は、漢方・生薬を中心に医薬品を製造販売し、未来社会へと新たな製品の実用化に向け、日々研究に取り組んでいる剤盛堂薬品(和歌山市太田)を紹介します。

1500年の歴史を超えて
現代へと受け継ぐ

皆さんは「漢方」と聞くと、どういうイメージを持ちますか。

生活環境やストレスなどから、心や身体の不調を訴える人が多い現代社会。病気を治すだけでなく、予防するという観点から、老若男女を問わず、漢方薬への関心が高まってきています。

漢方とは、中国から日本に伝えられ、1500年もの間、日本人の健康を支え、独自の発展を遂げてきた伝統医学のこと。明治時代、政府が西洋医学を医療制度に採用するまで、日本の医学の中心となっていました。

剤盛堂薬品では、昭和32年の会社設立以来、古来から受け継がれてきた漢方の生薬(しょうやく)を、科学的に裏付けされた製品となるように研究。その根拠に基づき、現代人に適したオリジナル漢方薬の開発・供給に取り組んでいます。

5人に1人が75歳以上になるといわれている「2025年問題」。厚生労働省は今年1月、10年後に認知症の人が約700万人に達するとの新たな推計値を出しました。

対策が求められる中、同社は昨年10月に抗認知症薬の特許を取得。臨床的効果の実証に向けた実験・研究を積み重ね、漢方の可能性を追求しています。

製品づくりで驚きの発見

和歌山発信の漢方メーカーとして
時代に求められるスタイルで

髙橋夫社長昭和54年代表取締役社長就任日本漢方生薬製剤協会理事、大阪薬科大学非常勤講師を務めるなど、漢方の周知・普及に尽力

髙橋夫社長
昭和54年代表取締役社長就任日本漢方生薬製剤協会理事、大阪薬科大学非常勤講師を務めるなど、漢方の周知・普及に尽力

剤盛堂薬品・薬学研究所(和歌山市岩橋)内の資料館には、漢方の原料となる生薬や製品などが展示され、現在に至るまでの歴史を伝えています。中でもひときわ目を引くのが、同社の始まりともいえる家庭用の置き薬(写真①)。

木箱に入った家庭用の置き薬

木箱に入った家庭用の置き薬

置き薬とは、配置販売業の許可を得た販売者が、消費者の家庭を訪問し、あらかじめ薬を預け、次回訪問した時に服用した分だけの代金を集金していくというもの。手のひらサイズの小さな包装には、効能が絵で分かりやすく表現され、当時の人々にとって身近な常備薬であったことを物語っています。

現在の薬

現在の薬

同社は昭和22年、先代社長が中ノ店薬局(和歌山市中ノ店・なかのたな)として創業。25年に薬品の製造を開始しました。28年には全国に先駆けて漢方エキス製剤を発案し、厚生省(現・厚生労働省)の製造許可を受けます。

32年には現在の会社を設立。同社が製造する薬を「ホノミ漢方」と名付け、半世紀以上にわたって、胃腸障害、神経痛などを対象にした約250種類の一般薬を開発(写真②)してきました。

原料となる生薬

原料となる生薬

髙橋社長は、漢方の治療法について「漢方には、足りないものを身体に補う『補』と、害のあるものを身体から取り除く『瀉(しゃ)』の考えがあります。じっくりと症状や体質を聞き、不調や悩みなど、その人に合った漢方を選薬します」と説明。同じ症状であっても一人一人に合う薬が違うため、同社内に専門の「ホノミ漢方相談薬苑」(写真⑤)を設けて、薬の相談や販売を行っています。

脈々と受け継がれる東洋医学ですが、薬草や薬木などの原料は、約8割が中国に依存。希少植物は安定的確保が難しくなってきています。

髙橋社長は「原料の生薬(写真③)は、天然物です。つまり生き物の生命をいただいてできています。天然物の良さはもちろん、植物の生命からできていることを知ってもらいたい」と思いを込めます。

また薬剤師の資格を持つ髙橋社長は、大阪薬科大学で非常勤講師も務めるなど、漢方の普及にも力を注いでいます。「病気の治療は自らの治癒力を高めることで、漢方薬はその手助けをするもの。自然治癒力を高める一つの方法として、若い人を含め、多くの人にけいもうしていくのが私たちの役割です」と話します。

協力体制で取り組む
研究者たちの挑戦は続く

漢方の可能性を追求し、日々挑戦し続ける同社。現在挑んでいるのが、抗認知症薬の開発。

きっかけは、実験を委託している研究所からの一報でした。

冷え性や血行不良などに効果的な漢方生薬製剤の働きを裏付けるため、約17年間の薬理実験を行い、「これは」という結果を確認。以降、特許を取得しようと約3年間、さらに実験・研究を繰り返してきました。

そして昨年10月、ラットを使った動物実験で、同社の製品が、認知症による記憶障害の予防や改善に一定の効果が認められるとして、抗認知症薬の特許を取得(※)。現在、大学や研究機関と協力し、実用化に向けた研究を進めています。

効果が認められたのは、血行を改善させる作用がある四物湯(しもつとう)、胃腸機能を高める四君子湯(しくんしとう)などに使われる、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)、人参、甘草など、14種の生薬。

これらの生薬を使って実用化するためには、さまざまな業種・機関が互いに協力体制で、取り組んでいく必要があり、まだまだ課題はたくさん。

高橋社長は「発症した認知症を治すことは難しいけれど、ならないようにする予防策はあり、効果が期待できると考えています」と先を見据えています。

和歌山から全国へ、同社の挑戦は続きます。

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「茶話会」を11月26日に開催

ホノミ漢方相談薬苑では、年4回のペースで茶話会が開かれています(写真④)。毎回、髙橋社長や担当者がテーマに沿って話をします。次回は、11月26日(木)午後1時半~3時、テーマは「便秘」。参加無料。要申し込み。

ホノミ漢方相談薬苑

住所 和歌山市太田2ノ8ノ31
電話 073(473)3510
営業時間 午前9時~午後5時半
定休日 土・日、祝日
駐車場 あり
20151107top06 20151107top07

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