おじいさんの小さな庭

おじいさんの小さな庭

草花が咲き、小鳥が歌い
動物が暮らすおじいさんの庭

桜便りがあちらこちらから届き、駅前のつぼみもようやくほころびかけています。いつかのテレビドラマで「満開の桜を好きだという人と、好きではないという人がいる。満開の桜を好きな者同士が結婚するとうまくいくかというと、そうでもない」というセリフがあって、印象深く、時々反すうしています。

私は満開の桜並木を歩くのが好きで、亭主は「不気味」だと。桜だけではなく、趣味も好みも性格も、体型までも正反対の私たち。マグカップにコーヒーをたっぷり注いで飲む私の横で、亭主はデミタスカップ6分目の量を。何事も多いのは好きではないそうです。

ところが不思議、毎年4月のこの時期には「もうそろそろだね」と、どちらともなく言い出して、由緒正しき神社の隅っこ、喧噪(けんそう)をよそにひっそりと咲く桜を二人で愛(め)でに出かけます。その場所を見つけてきたのは亭主です。

『おじいさんの小さな庭』(出版=西村書店、バーナデット・ワッツ/絵、ゲルダ・マリー・シャイドル/文、佐々木田鶴子/訳)は『赤ずきん』をはじめとしたグリム童話でおなじみのバーナデットの作品です。

おじいさんの庭に咲く小さなヒナギクは隣の庭に憧れて、「バラとユリの間で咲きたいの」とだだをこねるのです。心優しいおじいさんはヒナギクの願いをかなえ、隣の庭に植えてあげました。ところが、隣はお金持ちの庭、「こんなものがはえている」と怒り、ヒナギクを引っこ抜いてゴミ捨て場に放り投げてしまいます。ヒナギクを助けたいと願うおじいさんを思って、ナイチンゲールが塀を越えて隣へ飛んで行きます。

ノバラ、マーガレット、ツリガネソウ、タンポポ、ヒナギクが咲き乱れ、ナイチンゲールが歌い、ウサギやハリネズミが暮らすおじいさんの庭。バーナデットの絵は柔らかで美しく、昼、夕、夜とさまざまな表情の庭が魅力的に描かれ、「みんなが眠りました。静かな庭にナイチンゲールの歌だけが響き渡りました」というラストがすてきです。

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表
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