世界遺産登録20周年記念事業「令和の熊野詣」、9月から中辺路で開催
平安の鼓動を感じて

リビング和歌山8月31日号「平安の鼓動を感じて」

 「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されて20年。これを記念した「令和の熊野詣」が、9月から中辺路を舞台に行われます。世界遺産の熊野古道を歩いたことがありますか? 初めての人も、これを機に訪ねてみませんか。

熊野御幸の正式な参詣道
もっとも多く王子が残る中辺路

 「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録され、今年で20周年を迎えたことを記念して、和歌山県が「令和の熊野詣」を実施。昨年12月、京都市の城南宮(鳥羽離宮跡)で出立式を行い、今年3月までは「令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク紀伊路」として熊野古道紀伊路を歩きたどってきました。来月9月からは、いよいよ聖地・熊野へ! 「令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク中辺路」が行われます。
「『熊野古道』を世界遺産に登録するプロジェクト準備会」の運営委員代表・小野田真弓さんに(写真)、熊野古道の中辺路について聞きました。

小野田真弓さん

「熊野古道」を世界遺産に登録するプロジェクト準備会の運営委員代表
和歌山県世界遺産マスター
小野田真弓さん
“熊野古道を世界遺産にしよう”と活動をしてきたプロジェクト準備会の運営委員代表。登録後も毎月1回熊野古道を歩くウオーキングイベントを開催しています

「熊野古道は、京都市の城南宮を出発し、淀川を下って、紀伊路、小辺路(こへち)、中辺路、大辺路(おおへち)、伊勢路と熊野に至る長大な参詣道です。世界遺産に登録されて知名度が上がり、海外からも多くの人が訪れるようになりました」と小野田さん。

「滝尻王子」。格式が高い「熊野五体王子」の中の一つ(写真提供=和歌山県観光連盟)

そんな熊野古道の中辺路は、田辺市から熊野への聖域の入り口とされる「滝尻(たきじり)王子」に続き、熊野三山の「熊野本宮大社」「熊野那智大社」「那智山青岸渡寺」「熊野速玉大社」をつなぐ参詣道。「平安時代から鎌倉時代にかけて、皇族・貴族がこぞってお参りした『熊野御幸』では、中辺路が公式な参詣道(御幸道)として繰り返し利用されました」と小野田さんは話します。

熊野御幸が盛んだったころ、熊野古道には熊野権現の御子神(みこがみ)をまつった王子が点在していました。「熊野古道を歩く人たちは、一つ一つの王子を参拝しながら聖域・熊野を目指しました。中辺路には、この王子や王子跡が数多く残されているのもポイント。道案内の看板や休憩所なども整備されているので初心者でも歩きやすく、熊野古道デビューにもぴったり」

箸折峠にたたずむ「牛馬童子(ぎゅうばどうじ)像」。熊野古道を訪れた花山(かざん)法皇の旅姿といわれる石像で、中辺路のシンボル的存在(写真提供=和歌山県観光連盟)

1997年に発足し、熊野古道を世界遺産に登録しようと活動してきた同会。「熊野古道を含む『紀伊山地の霊場と参詣道』は、日本で初めて“道”が登録された非常に珍しい世界遺産。文化庁からの呼びかけではなく、地元から“世界遺産にしたい”と働きかけ、認められた例としても先駆的でした。地元の協力や支援、専門家たちの知恵と技術を駆使して登録された世界遺産の道なので、地元の人たちには誇りを持って歩いてほしいと思います」と、小野田さんは呼びかけます。

鳥居をくぐったところに発心門(ほっしんもん)王子の社殿があります

同会は世界遺産登録20周年記念として、子ども向けのイベントを企画(下記)。次項では和歌山県が行う「令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク中辺路」を紹介します。

「熊野古道」を世界遺産に登録する
プロジェクト準備会による

「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録20周年記念事業
GO! GO! くまのこどう体験会

【日程】11月3日(祝) 雨天決行(荒天時は中止)
【参加費】無料
【対象】小学生高学年

スケジュール

午前9時~11時

くまのこどう体験会(3.5km)
松代王子跡から祓戸(はらいど)王子跡を歩いて巡ります
【集合場所】JR海南駅 【定員】20人

春日神社(海南市大野中1056) 【定員】各10人

午前11時~正午

書道体験会
古代墨を使って書きます

正午〜午後1時

ランチ・休憩

午後1時~2時

すもう体験会

午後2時~3時

昔今の歌体験会
平安衣装を着て歌をうたいます

※全プログラム、各プログラムともに参加可能 交通費、水分、雨具、昼食は各自持参

申し込み・問い合わせ 090(1585)0423小野田さん(午後8時以降)
kumako97@jtw.zaq.ne.jp

和歌山県のイベントで出かけよう
「蟻の熊野詣」を令和に再現

  令和の熊野詣 ツアーマップ

ツアーのポイント

熊野三山を正式参拝
そのほか、各回特別な体験企画が用意されています

小グループ催行
約15人に1人、語り部および安全管理スタッフが同行して案内してくれます

すべてJR和歌山駅発のバスプラン
一部現地集合・解散プランもあり

令和の熊野詣 熊野古道リレーウォーク中辺路 ※各回定員80人

 ●第1回 9月22日(祝)日帰り

鬪雞神社

鬪雞神社

扇ヶ浜~稲葉根王子(約13km)

鬪雞神社▶秋津王子▶万呂王子▶三栖王子▶八上王子▶稲葉根王子

【料金】7000円

 ●第2回 10月5日(土)〜6日(日)1泊2日

稲葉根王子

稲葉根王子

1日目

稲葉根王子~清姫の墓所(約10km)

稲葉根王子[特別企画]水垢離(みずごり)▶一瀬王子▶鮎川王子▶清姫の墓所

2日目

清姫の墓所~高原霧の里休憩所(約6km)

清姫の墓所▶滝尻王子[特別企画]お茶会▶不寝(ねず)王子▶高原霧の里休憩所

【料金】1万9900円(1人1室利用の場合)〜

 ●第3回 10月19日(土)〜20日(日)1泊2日

高原

高原

1日目

高原霧の里休憩所~道の駅熊野古道中辺路(約8km)

高原霧の里休憩所▶大門王子▶十丈王子▶大坂本(おおさかもと)王子▶道の駅熊野古道中辺路

2日目

道の駅熊野古道中辺路~道湯川橋バス停(約11km)

道の駅熊野古道中辺路▶牛馬童子▶近露王子▶比曾原王子▶継桜王子[特別企画]獅子舞演舞▶中川王子▶小広王子▶熊瀬川王子▶道湯川橋バス停

【料金】2万900円(1人1室利用の場合)〜

 ●第4回 11月9日(土)〜10日(日)1泊2日

道休禅門

道休禅門

1日目

道湯川橋バス停~発心門王子(約9km)

道湯川橋バス停▶湯川王子▶猪鼻王子▶発心門王子

2日目

発心門王子~熊野本宮大社(約7km)

発心門王子▶水呑(みずのみ)王子▶道休禅門▶伏拝(ふしおがみ)王子▶祓殿(はらいど)王子▶熊野本宮大社[特別企画]正式参拝

【料金】2万5700円(1人1室利用の場合)〜

 ●第5回 12月1日(日)日帰り

高野坂

高野坂

三輪崎駅~熊野速玉大社(約6.5km)

JR三輪崎駅▶高野坂▶浜王子▶阿須賀王子▶熊野速玉大社[特別企画]正式参拝

【料金】1万円

 ●第6回 12月15日(日)日帰り

三重塔と那智の滝

三重塔と那智の滝

那智駅~那智の滝(約7.5km)

JR那智駅▶補陀洛山寺(ふだらくさんじ)・浜の宮王子▶市野々王子▶大門坂▶多富気王子▶熊野那智大社[特別企画]正式参拝・那智山青岸渡寺[特別企画]行者堂での護摩炊き▶那智の滝

【料金】1万500円

写真提供 = 和歌山県観光連盟

どれか1回だけの参加も可能です
(申し込み時に満席となっている場合があります)

詳しくは専用サイトで確認を

問い合わせ 0570(666)155
日本旅行大阪予約センター
(午前11時~午後5時 ※土・日曜、祝日も対応)
HP

https://sp-ad.jp/reiwanokumanomoude/

初心者のための
古道歩きのアドバイス

小野田真弓さん

服装
暑くても、半袖・半ズボンは厳禁。自然の道なので、虫に刺されたり、ヘビが出るようなこともあります。長袖・長ズボン、くつ下を履くなど、肌が露出しないように。日よけやケガ予防に帽子も。

マップ
歩くコースの紙製の地図を携帯しましょう。中辺路なら道しるべも多いですが、見失うと道に迷います。スマートフォンは、地図アプリなどが便利ですが、充電がなくなる、落としてしまう…など、想定外のトラブルもあります。

バッグ
両手が空くようにリュックサックを。帽子やリュックは目立つ色にしましょう。道に迷ったり、けがで動けなくなったときなどに見つけてもらいやすいです。上着も白っぽい明るい色で。


中辺路は、一部峠を越える厳しいルートがあるものの、ほとんどは整備が行き届いた歩きやすいコース。履き慣れた滑りにくい靴を選んでください。

そのほかに持っておくと良い物
折りたたみ傘(広げると影が広がり、熱中症対策にもなります)
雨ガッパ(できれば上下のセパレートタイプ)
水分・塩分(熱中症予防に)

地震や災害が起きたとき

地震で揺れたら、頑丈な木につかまって姿勢を低くしたり、揺れがおさまるのを待ちます。揺れがおさまったら、足場に注意し、背中のリュックで頭や首を覆って、安全な場所でしばらく様子を見ましょう。登山口や街中に戻ることができたら、カーラジオやスマートフォンなどで情報を収集し、海が近いときは津波の有無などを確認してください。
地元の警察や観光協会の電話番号をメモしておくなど、備えておきましょう。

小野田さんに聞く!
中辺路とっておき話
近露王子にまつわる花山法皇の話

今年のNKH大河ドラマ「光る君へ」にも登場した花山法皇が、熊野詣の時に、食事をするのに萱(かや)を折って箸にしようとすると、萱から水滴がしたたり、それが赤く見えて「これは血か露(ちかつゆ)か」と言ったことから、近露(ちかつゆ)の地名がつき、箸を折った場所が「箸折(はしおり)峠」となったと伝えられています。

人工林も価値のある文化的景観です

熊野古道を歩いて、熊野の森が植林(人工林)だと驚く人もいますが、紀伊山地の森林景観は、熊野の長い歴史の中で、人々の営みと自然の特異な結びつきを示すユネスコ文化遺産の遺跡「文化的景観」です。

尼将軍や安倍晴明にちなんだ場所

補陀洛山寺から熊野那智大社への道中、市野々王子手前に北条政子が建てたと伝わる「尼将軍供養塔」があり、少し過ぎたところの竹林の風景がとてもきれいです。また、那智山バス停近くに安倍晴明ゆかりの場所もあります。

見どころ多い発心門からの道

発心門王子から水呑王子の間には、お医者さんが多いんです(笑)。例えば、安産の神様とか、歯痛のお地蔵さんとか…。水呑王子の近くには腰痛のお地蔵さんがあります。その先の伏拝王子には、和泉式部が月の障りになってしまったけれど、熊野権現は参拝を許したという、熊野の神々の懐の深さが伺える話が伝わっています。

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