暮らしの陰に潜むトラブル
県内年間5000件以上の相談 賢く選び、鍛えよう消費者力
【あるあるデジタルトラブル】
- 2025/5/15
- フロント特集
「消費者トラブルは自分には関係ない」「だまされない」と思っていませんか。トラブルは身近に潜み、誰もが被害に遭う可能性があります。5月の「消費者月間」に合わせ、今号は消費者トラブルについて取り上げます。
デジタル化に伴うトラブル増加
県内では通信販売の相談多数
商品を買ったり、有料のサービスを受けたり、私たちは生活の中でさまざまな契約を結んでいます。契約は、当事者双方の合意によって結ばれるため、口頭でも成立。一度結んだ契約は、基本簡単に取り消すことができません。
今回取り上げる消費者トラブルとは、“解約したつもりが契約が続いていた”“見覚えのない請求書が届いた”など、消費者と事業者の間に起こるトラブルのことです。
近年、デジタル化が進み、オンラインショッピングの普及や、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による情報収集・発信など、私たちの生活はとても便利になりました。その一方で、デジタル関連の消費者トラブルが増加。内容は複雑化し、その移り変わりも早くなってきています。
「デジタルサービスの仕組みやリスクを理解し、正しく活用することに加え、消費者の味方となる“法律”に関する知識を身に付けることが必要です」と話すのは、和歌山県消費生活センター・消費生活相談員の宮本薫さん(写真)。

宮本薫さん
和歌山県消費生活センター
消費生活相談員
同センターに寄せられる相談は、年間5000件以上。形態別では、通信販売が最も多く全体の約半分を占めていて、店舗購入、電話勧誘販売などが続きます(下グラフ)。宮本さんは、「化粧品や健康食品など、意図しない定期購入の相談がとても多く寄せられています。他にもいろいろな相談がありますが、訪問販売や“人を紹介すれば報酬が得られる”など、昔ながらの手口によるトラブルも依然としてみられます」と説明します。
その上で、トラブルに遭わないためのポイント“断る”“疑う”“家に入れない”“その場で契約しない”“相談”を挙げ(下記)、「不審な勧誘を察知し、冷静に判断することが大切です。少しでもおかしいと思ったら、消費生活相談窓口などに相談してください」と呼び掛けています。
次項では、県内で多くみられるトラブルの事例と未然に防ぐためのポイントなどについて伝えます。一緒に“消費者力”を鍛えましょう!
販売購入形態別 苦情相談の割合

参考=2023年度和歌山県消費生活センタ―における消費生活相談の概要
トラブルに遭わないためのポイント
●不要なものはきっぱり断る
●うまい話はまず疑う
●知らない業者を家に入れない
●契約を急がされても、その場で契約しない
●迷ったら一人で悩まず、まず相談
知っておこう! 知識と対処法
デジタル関連の消費者トラブルの事例と未然に防ぐためのポイントや消費者を守る制度、相談窓口について紹介します。
ケース1
定期購入
化粧品や健康食品などのインターネット通販で、「初回無料」「お試し価格」の広告を見て、1回だけのつもりで注文した商品が、実は複数回の購入が条件の定期購入で、注文時に想定した以上の金額を総額として請求されるトラブル。
広告には「いつでも解約可能」と書いていても、いざ解約しようとすると「業者に電話がつながらない」「解約に細かい条件があった」ということもあります。
未然に防ぐポイント
契約内容や条件など、通販サイトの表示が分かりにくい場合があります。申し込みの際には、最終確認画面で商品の内容や取引・解約条件などを必ず確認しましょう。インターネット通販は、クーリング・オフ制度がなく、購入商品の返品の可否は、契約内容に従うことになります。解約・返品については、注文前に確認を。
また、最終確認画面はスクリーンショットで保存。事業者が法律に違反した表示を行い、それを見て消費者が申し込んだ場合は、契約を取り消せる場合があります。
ケース2
SNS上のもうけ話
SNSで知り合った相手からの「簡単にもうかる」といった勧誘や、「簡単な作業で毎日数万円かせげる」というSNS広告をきっかけに副業を始めたところ、「全くもうからない」「サポートと称した高額な契約をすすめられた」というトラブル。
手続きを進めるうちに高額な費用を請求されるケースもあります。時には、「収益ですぐに返済できる」と、消費者金融を紹介され、借金をして支払う人も。
未然に防ぐポイント
「簡単にもうかる」「損はしない」などの投稿、SNS広告やメッセージはうのみにしないようにしましょう。クレジットカードでの高額決済や借金をしてまでの契約はしないでください。「報酬を得るため必要」と言って、登録料やサポート料などを支払わされることがあります。
SNS上では話の合う“知り合い”でも、信頼できるかどうかは分かりません。お金を支払ったとたん、相手と連絡が取れなくなることもあります。本当に信用できる相手なのか、慎重に判断してください。
ケース3
フィッシング
スマートフォンに届いた、通販サイトや宅配便事業者など、実在する組織をかたるショートメッセージやメールに記載していたURLにアクセス。案内に従って、パスワードやID、暗証番号、クレジットカード番号などの個人情報を入力したところ、後日、クレジットカードの請求明細に見覚えのない決済が送られてくるトラブル。
「支払方法に問題がある」「未払いの税金がある」など、消費者の不安をあおる手口が多くみられます。
未然に防ぐポイント
日頃利用している事業者からのショートメッセージやメールでもフィッシングを疑い、記載のURLにはアクセスせず、正規サイトのURLやアプリからアクセスするよう習慣づけましょう。もしID・パスワードなどを入力してしまったら、すぐに変更し、クレジットカード会社や金融機関に連絡を。
普段からセキュリティーソフトなどを活用し、ID・パスワードの使い回しはせず、クレジットカードの利用明細はこまめに確認しましょう。
消費者を守る制度 クーリング・オフ
クーリング・オフは、いったん申し込みや契約をした後でも、一定の期間内であれば、無条件で申し込みの撤回や、契約の解除ができる制度です。期間は、取引内容によって異なりますが、申込書または契約書面を受け取った日を1日目として計算します(下記参照)。制度を利用するときは、書面(はがき)か電磁的記録(メールなど)で事業者に通知しましょう。その際、コピーを取ったり、内容証明郵便を利用したりして、期間内に解約通知したことを残すことが大切です。
ただし、通信販売で購入した商品や、現金で買った3000円未満の商品、使用した消耗品、自分から店に出向いて買った商品は対象外です。
解約が可能な期間
8日間
訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入、特定継続的役務提供(長期・継続的にサービスを受け、支払いを続ける契約)
20日間
連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘引販売取引(内職・モニター商法など)
トラブルに遭ったら、まずは相談
消費者ホットライン | 188(局番なし) ※近くの消費生活相談窓口につながります |
---|---|
和歌山県消費生活センター | 073(433)1551 |
和歌山市消費生活センター | 073(435)1188 |
岩出市消費生活センター | 0736(61)6966 |
海草地域消費生活相談窓口 | 073(483)8777 |