「もしもノート」を活用して
始めてみよう“人生会議”

リビング和歌山2025年11月8日号「「もしもノート」を活用して 始めてみよう“人生会議”」

 11月30日は、「人生会議の日」。厚生労働省により定められたものですが、“人生会議”って何? 今回は、家族や身近な人と考えておきたい“もしものときに、自分が望む医療やケア”について。言葉にはしづらいものですが、ノートを活用する方法もあります。セミナーも開催するので、関心がある人は参加してください。

漫画を描いてくれたのは、和歌山市在住の漫画家・マエオカテツヤさん

自分が大切にしていること
何度でも考え、話し合いましょう

 「人生会議」とは、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の愛称。厚生労働省が「ACP」の普及啓発と認知度向上のために愛称を募集し、2018年11月30日に「人生会議」と決定しました。

その言葉の意味は、「アドバンス」は「前もって、事前に」、「ケア」は「医療や介護、世話」、「プランニング」は「計画すること」。つまり、将来の医療やケアについて本人が事前に考え、家族や身近な人たちと話し合っておくことです。このような取り組みがなぜ必要なのでしょう。和歌山県医務課で聞きました。

「命が迫った状態になると、約70パーセントの人が医療やケアを自分で決めたり、周囲の人に伝えたりすることができないといわれています。誰もが、いつかは人生の最期を迎えるものです。そのときを自分らしく迎えるためには、どんな医療やケアを望むのかを考えておくことが大切です」と話すのは、同課地域医療班の医療技師・畑本満里奈さん(写真)。

畑本満里奈さん
和歌山県医務課

その考えを家族や医療・介護など身の回りの信頼できる人たちと話し合うことが、“人生会議”です。

「将来に対する思いや考えは本人の状況により、変わるものです。だから何度でも繰り返し考えて、変わっても構わないので、その都度、思いや考えたことを家族や身の回りの人と話し合う、その過程が大切です。話し合いからその人の価値観や日ごろ大事にしていること、考え方を知ることができます。“人生会議をする”と身構えなくても、普段の会話の中で“こんなときはこうしたいな”など、気軽に話題にできる関係性が理想ですね」と、畑本さんは話します。

これからどう生きたいかを考える
自分のために、大切な人のためにも

 “終活”は、いまや誰もが知る言葉ですが、人生会議との違いは何でしょう。「身辺整理をしたり、葬儀やお墓、相続など、本人が亡くなった後のことを考えて準備するのが終活。人生会議は、これからどう生きたいかを考えること。そして、やがて訪れる人生の最終段階をどこで過ごし、どんな医療を受け、どんなケアをしてほしいかという希望を家族などに伝えておくことです」と畑本さん。

家族が遠方にいるなら帰省時などの機会に、一人暮らしならかかりつけ医や介護してくれている人たち、ご近所さんや友人でも、人生会議の相手は自分が信頼できる人。誰かに絞る必要もなく、自分の価値観を知ってもらい、いざという時、代わりに意思を伝えてくれる人と話し合います。「意思表示できなくなった本人に代わって、医療やケアを決める立場になった人の判断を助けるよりどころにもなります。自分のためでもあり、自分の大切な人のためでもあるのが、“人生会議”です」

そんな自分の人生を考えるきっかけになるのが、和歌山県が作成した「もしもノート」(下写真)。次項で詳しく紹介します。また、11月30日(日)の「人生会議の日」にセミナーを企画しました。関心がある人は、ぜひ参加を(次項参照)。

「わたしノート」と「かぞくノート」が一組になった和歌山県の「もしもノート」
開くと中に2冊のノートが入っています

“私”の希望を伝えよう

さまざまな「もしも」に役立つ自分と家族の情報をまとめる

和歌山県は、「人生の最終段階における医療の 意思決定に係る方針」を策定し、人生の最終段階を誰もが穏やかに過ごせるよう、患者本人や家族による意思決定を支援し、希望する医療が受けられるような体制・環境整備を図っています。その一環として、人生会議の普及・啓発に取り組んでおり、和歌山県オリジナルの「もしもノート」を作成しました。「わたしノート」と「かぞくノート」の2冊がセットになっています(上写真)。

事前に考えておくのは良いことだと分かってはいても、自分の最期について実際にはなかなかイメージしにくいもの。また、例えば親に人生会議をすすめるにも「縁起でもない」って思われないかと踏み出せない場合もあります。そんなきっかけづくりにもなるのが「もしもノート」です。

「もしもノート」の「わたしノート」。A5判サイズで41ページ(かぞくノートも同サイズで25ページ)

「まず、わたしノートは自分のことを書き込んでいくためのノート。家族や友人のこと、健康状態や医療情報などの基本的なことと、資産や土地・建物、年金・保険など、終活になることも書き留めるようになっています。書き進めていくと“もしも”に備えたことを記入するページがあり、人生会議についての説明があります」と畑本さん。

「かぞくノート」は、家族の基本情報や連絡先などを書いておくためのもの。「何か緊急なことが起こったときに役立ちます」とも。

「もしもノート」は、和歌山県医務課のホームページからダウンロードできます(上記参照)。また、同課は「出張! 県政おはなし講座」で、「やってみよう! 人生会議 ~人生の最終段階における医療・ケアの意思決定について~」と題して県内で出張講座を実施。その際にも「もしもノート」を配布し、人生会議についてレクチャーしています。昨年度は4カ所で115人、今年度はすでに8カ所で251人が受講(10月31日現在)。関心の高まりがうかがえます。

和歌山リビング新聞社は、11月30日(日)にセミナー「やってみよう! 人生会議」を行います(参加費無料、左記参照)。この機会に、人生会議について考えてみましょう。

●「もしもノート」は和歌山県のホームページからダウンロードできます→(和歌山県HP)

●「出張! 県政おはなし講座」についての詳細はこちらから→(和歌山県HP)

和歌山県の「人生会議」の取り組みについてはこちらで検索を
 検索ワード→『 和歌山県 人生会議

 

問い合わせ 073(441)2604
和歌山県医務課地域医療班

  ボクの人生会議   

マエオカテツヤさん

リビング和歌山で「カン太なんか大っきらいっ!」を現在連載中。テレビやラジオでも人気で、現在、大阪アニメ、声優&eスポーツ専門学校などの講師も務める

 僕の師匠は、その昔、貸し本漫画隆盛のころ活躍した中島たをさん。漫画のイロハを学び、共に専門学校で教えるようになってから、師匠には子どもがいなかったこともあり、親子のようにかわいがっていただきました。ある日、学校に現れず、師匠の家に行くと誰もいない。近所で病院へ運ばれたと聞き、駆けつけると僕に「てっちゃん…」とだけ言って笑い、旅立たれました。その後よく夢を見ます。師匠が喫茶店のいつもの席で僕に何か言いたげ。でも何も言わず、ただほほ笑む…。もし、あのとき少しでも話せていたら、師匠が何を言いたかったのかを聞けたかも。世話かけてばかりだった僕も何かしてあげられたかもしれないな…と、師匠の年齢に近づくにつれ…思います。僕も家族と人生会議かな。

  11月30日は人生会議の日   

やってみよう!人生会議(無料セミナー)

参加者募集

1.人生会議(ACP)ってなんだろう?
~人生の最終段階を穏やかに過ごすために~

もしもの時、あなたが望む医療やケアを、大切な人と前もって話し合う“人生会議”。超高齢化社会を迎える和歌山における医療の現状を踏まえて話してもらいます。みんなで一緒に考えてみましょう。

中谷匡登さん

講 師
伏虎リハビリテーション病院
(和歌山市畑屋敷東ノ丁)
理事長兼院長
中谷匡登さん

2.「もしもノート」を書いてみよう

 和歌山県が作成した「もしもノート」についての解説と活用法などのアドバイスを聞いた後、参加者それぞれが実際にノートに書いてみます。分からないこともその場で質問しながら、書き進められます。

講 師 和歌山県医務課 畑本満里奈さん

 

日時 11月30日(日)
午後2時半~4時
会場 リビングカルチャー倶楽部
フォルテ教室
(和歌山市本町2-1、フォルテワジマ4階)
主催 和歌山リビング新聞社
共催 和歌山県
定員 30人 ※1度の申し込みにつき2人まで
参加特典

お薬手帳や診察券などが入るコンパクトなポーチ。「もしもノート」もぴったりと入ります


参加者全員にプレゼント!
もしもノート
通院用サコッシュ
人生会議ボールペン
申し込み方法 専用フォームから申込みを→(フォームはこちら)
フォームで申し込むのが難しい場合は、和歌山リビング新聞社(下記)まで電話、またはファクスで。ファクスには、「人生会議セミナー」係とし、〒住所、名前、年齢、性別、連絡先の電話番号、参加人数(1人または2人、2人の場合は続柄)を記入してください
締め切り 11月20日(木)
※申込者多数の場合は抽選。抽選後、メールまたは郵送で当選者に連絡(選外者には個別に連絡しませんので、ご了承ください)
申し込み・問い合わせ

【TEL】073(428)0281
【FAX】073(428)3421
和歌山リビング新聞社「人生会議セミナー」係
【営業時間】午前9時半~正午、午後1時~6時半
【休業日】土・日曜、祝日

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