ストレス社会に生きる女性の強い味方 もっと知りたい漢方のこと

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 中国4000年の歴史で培われた漢方が、美容や健康に関心の高い女性の間でちょっとしたブーム。どんな症状に効果があるのか、どこで入手できるのかなど、和歌山ろうさい病院(和歌山市木ノ本)の女性専用外来で漢方治療を行っている辰田仁美医師に解説してもらいました。

Doctor’s Profile
辰田仁美(たつた・ひとみ)
平成9年和歌山県立医科大学大学院医学研究科修了。平成13年から和歌山ろうさい病院に勤務。平成15年に女性専用外来を開設、その後、漢方治療にも取り組む。第二呼吸器内科部長

Q. そもそも漢方って何、どんな治療をするの?

A. ルーツは中国(漢)の伝統医学で、奈良時代に日本に伝わり、独自の発展をしてきました。西洋医学は病気の原因を究明し、臓器別に診ていくのに対し、漢方は、肉体と精神は一体のものという〝心身一如(いちにょ)〞の考え方のもと、悪くなったバランスを正常に戻し、自然治癒力を増強しましょうという治療。細かく問診をして、症状や体質に合った薬を処方します。

ただし、すべての病気に効果があるかといわれると、西洋薬の方が適しているものもあります。また、〝養生なくして治療は無理〞ということも念頭に置いておいて。「冷え」に対しての薬はありますが、不摂生な生活をしていてはよくなりません。生活改善も必要です。

Q. 気になる漢方薬の原料、副作用はない?

A. 原料は、クズの根「葛根(かっこん)」、常緑小低木「麻黄(まおう)」、ショウガの根茎「乾姜(かんきょう)」や哺乳類の骨の化石「竜骨」といった植物・動物・鉱物。これを「生薬(しょうやく)」と呼び、それらを組み合わせたものが漢方薬です。

自然のものなので〝副作用はない〞と思われがちですが、生薬にはそれぞれ特徴があります。一例を挙げると、「麻黄」は、解熱・せき止め、利水薬に用いられていますが、交感神経を刺激する作用もあります。それが体質に合わない場合は、成分に「麻黄」が含まれる漢方薬を飲むとその症状が表れてしまう可能性も。漢方薬も医薬品であることをお忘れなく。

Q. 保険は適用されますか、どこで入手できる?

A. 昭和51年から健康保険制度に採用されています。保険収載されている漢方処方の種類と生薬数は、148処方、185種類(せんじ薬含む)。ですから、漢方外来などでの受診や規定の範囲での薬の処方は保険が適用されます。

この他、漢方薬局やドラッグストアなどでも入手できますが、これは保険適用外。自己判断で購入して症状が改善しない場合は、問診してくれる医療機関を受診することをおすすめします。

漢方薬の服用は食間(食後2〜3時間後)に、お湯に溶かして飲んでください。錠剤やカプセルもありますが、主流は顆粒(かりゅう)。自分に合った薬だとそれほど飲みにくさは感じません。

Q. どんな症状に効くの、漢方薬で完治する?

A. 漢方は「冷え」や「夏バテ」、心身の異常が絡み合う「更年期障害」「月経前症候群」「不安神経症」に加え、アレルギーで薬が使えない場合にも、症状に合わせて処方すると効果が出ます。

逆に、肺炎などの感染症には抗生物質が有効ですし、腫瘍は外科治療を含め、西洋医学の方が適しています。それぞれに得意とする分野があり、近年、医療の現場では、腹部手術の後に腸閉塞(へいそく)の予防として、「大建中湯」が投与されるようになったり、抗がん剤治療時、体力を落とさないように「補剤」として漢方が用いられるなど〝併用〞が進んでいます。

とはいえ、漢方医学、西洋医学問わず病気には治るもの、治らないものがあるということも理解しておいてください。例えば、高血圧や糖尿病。これらは治すというよりは、合併症抑制のためにコントールして付き合っていく病気です。

漢方薬で風邪は治りますか? と聞かれるとYESと答えますが、症状によっては改善されるけれど、〝完治〞といえないものもあります。

見逃すな“不調のサイン”
漢方外来で治療

見直される漢方の力
個々の悩みに耳を傾け処方

古い歴史を持つ漢方ですが、今の日本は欧米で発展した西洋医学が中心。ところが昨今、その考え方が見直され、漢方を治療に取り入れる医師が増えてきています。

「当院の女性専用外来を訪れる人は、初診再診を合わせ、年間約1000人」と辰田仁美医師は説明します。

漢方外来の初診は1人約30分。一般外来に比べて時間をとるのは、「この初診が、西洋医学でいう血液検査であり、画像診断に当たるから。どんな症状で困っているのか問診をして、舌、脈、おなかを見て、治療方針(薬)を決めます」と言います。

患者は、更年期障害に悩む女性、ストレスでメンタルが不調のキャリアウーマン、家事、子育て、介護に忙しくなんとなく体調がすぐれない主婦などなど…。「話を聞いてもらうだけで楽になるという人も少なくありません。現代に生きる人々は、皆さん自分で思っている以上にお疲れなんです。〝サイン〞を見逃さないで」と辰田医師。

漢方治療は、「症状や生薬にもよりますが、早ければ数分で効果が出てくるものもあれば、1、2カ月後、気が付いたら楽になっていたというケースもあります」。しかし、その症状の原因となる明らかな疾患がある場合は、各診療科での治療を促すことも。「日本にはすばらしい医療技術があります。私は、西洋医学で治るものは治療すべきだと考えます」

最後に辰田医師から、「この季節になるとショウガが注目を集めますが、生姜(しょうきょう)は発汗作用があり体を温める反面、その後冷えます。生姜で冷えが改善されなければ乾姜(かんきょう)を取り入れて」と。

「漢方外来」を開設している主な病院

和歌山ろうさい病院

科目 女性専用外来(完全予約制)
電話 073(451)3303
診察日 水曜(午後2時~4時半)、第2火曜(午後2時~3時半)、第4木曜(午後2時~4時半)
医師 辰田仁美、清水みのり、松本朋子、神人美報子
予約受け付け 月~金曜午前8時半~午後5時、祝日除く

日本赤十字社和歌山医療センター

科目 漢方内科部(完全予約制)
電話 073(422)4171(内線5151)
診察日 水曜(午前9時~午後5時半)、金曜(午後1時~午後5時半)
医師 山田伸、上松伸彦
予約受け付け 月~金曜午後3時~午後5時、祝日除く

和歌山県立医科大学 サテライト診療所本町

科目 内科漢方外来(完全予約制)
電話 073(488)1930
診察日 火曜(午前9時半~午後0時半)、金曜(午前9時~午後0時半)
医師 別所寛人、若山育郎
予約受け付け 月~金曜午前9時~午後1時、祝日除く

※その他、かわばた産婦人科(和歌山市土入)、きのくに漢方クリニック(和歌山市小松原通)、森内科クリニック(和歌山市有本)、山本眼科医院(和歌山市手平)、横山内科(和歌山市宇須)などにも漢方医がいます

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