今さら聞けない
給与明細のミカタ!
- 2025/6/19
- フロント特集
給与明細を毎月しっかり確認していますか? 給与明細には多くの情報が詰まっていて、ポイントを押さえれば、お金の流れがクリアになり、自分の働き方や生活設計にも直結します。今号は、社会保険労務士の小栗知子さんに、給与明細の見方と押さえておきたいポイントを聞きました。

社会保険労務士 小栗知子さん (和歌山県社会保険労務士会所属)
支給項目を確認してる?
❶支給
支給欄には、基本給の他、残業代、各種手当(通勤、住宅、家族、役職ほか)、賞与など、会社から支払われる金額の内訳が記載されています。それぞれの金額の合計が総支給額(額面)になります。
給与のベースとなる基本給は、月給、日給月給、日給、時間給、出来高の5種類あり、自身の契約については、入社時に渡される労働条件通知書または雇用契約書に記されているので確認を。
労働時間は、1日8時間、週40時間と労働基準法で定められています。近年、話題の副業については、本業と副業の労働時間は原則通算されるため、法定時間を超えたときは時間外手当の対象となります。個人事業主やフリーランスなど、雇用関係がない場合は、基本的には労働基準法は適用されません。
こんなにも引かれるの
❷控除
基本給から天引きされる、所得税(国税)や住民税(市・県民税)、社会保険料の他、給与総額から非課税項目(通勤手当など)を差し引いた課税対象額が記載されています。通勤手当は、通勤手段ごとに非課税限度額を設定。自動車通勤の場合、片道2㎞以上が非課税対象となります。
社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金などがあり、給与や賞与の額によって変わります。負担は少なくありませんが、いざというときに生活をサポートしてくれる制度です。それぞれの特徴を知り、もしものときに役立つよう日頃から関心を持つことをおすすめします。
休暇や残業をチェック
❸勤怠
1カ月の労働日数や時間、休暇、残業時間など、勤務状況が確認できます。
残業の割り増し分は、残業した時間帯や累積時間などによって異なります。その他、遅早控除などに項目分けされています。
手元に届く金額
❹差引支給額
総支給額から、控除の合計額を差し引いたのが手取り額です。年始めの1月から給与明細が発行された時点までの課税対象となる給与総額「課税累計額」も記されています。
今一度確認、制度の基本
押さえておきたい制度やポイントについて、社会保険労務士の小栗知子さんに聞きました。
社会保険
社会保険には「健康保険」「介護保険」「厚生年金」の3種類があり、正社員はもちろん、パートやアルバイトでも、正社員の所定労働時間または、労働日数の4分の3以上働いていれば、加入の対象となります。また、特定適用事業所(被保険者数が51人以上の企業)に勤務している人で、週の労働時間が20時間以上、月額報酬が8万8000円以上の場合も、社会保険への加入が必要です(学生除く)。
保険料は、都道府県ごとに毎年3月に保険料率が改定。4~6月の給与平均から等級が決まり、9月から新しい保険料が適用されます。また、昇給や降給などにより、固定的な賃金が変わり、今までの等級から2等級以上の変動があったときは、4カ月目から保険料が変更されます。
雇用保険
雇用保険の給付金には、働く人が失業した際に、退職後の生活を支える「失業給付(基本手当)」、育児や介護などで働けない期間の生活を支援するために支給される「出生時育児休業給付金」「育児休業給付金」「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」「介護休業給付金」などがあります。また、60歳~65歳の人で、賃金が60歳時点の75%未満になった場合は、「高年齢雇用継続給付」を受け取ることもできます。
退職後雇用保険の手続きをした場合、まず7日間の待期期間があり、自己都合退職の場合はさらに1カ月の給付制限期間があります。また、病気や出産などで30日以上働けない期間があるときは、受給期間延長の手続きが可能です。療養が終わったら、改めて受給できる制度なども用意されています。
介護保険
介護保険料は、社会保険に加入している40歳以上65歳未満の人については給与から自動的に控除されます。
65歳以上になると、年金からの天引き(特別徴収)、または本人による納付(普通徴収)となり、状況に応じて、どちらかの方法で納付しなければなりません。
通勤手当
通勤のための交通費補助は、一定の限度額まで非課税とされています。
公共交通機関を利用する場合は、最も経済的かつ合理的な経路または方法で、定期乗車券の料金を計算します(最大月15万円)。自家用車やバイク、自転車で通勤する場合は、片道2㎞以上から通勤距離(通勤経路に沿った実際の距離)に応じて非課税金額が設定されています(上限あり)。
退職時
退職日が月末の場合、その月の社会保険料は退職前の事業所の負担となります。例えば、6月30日に退職した場合、6月分の保険料が発生しますが、6月29日の場合、次の加入先での負担となります。退職日によって保険料の扱いが異なる点に注意が必要です。
退職後は健康保険だけでなく、国民年金の手続きも忘れないように。1カ月でも未加入の期間があると、万が一、事故などに遭ったとき、障害年金を受給できなくなる可能性があります。経済的に国民年金の支払いが難しいときは、免除申請をしてください。
130万円の壁
社会保険の扶養家族の条件は、75歳未満で、日本国内に住所があり、主に被保険者の収入で生活している人です。加えて、年収が130万円未満(60歳以上は180万円、被保険者の年収の半分未満)となっています。この条件を超えると、扶養から外れ、自身で社会保険料を支払う必要が出てくるため、「130万円の壁」と呼ばれています。
税法上、収入が160万円(2025年分から)を超えると、所得税がかかります。住民税は、所得税とは計算方法が違うため、160万未満でもかかってきます。市町村によって異なりますが、和歌山市では収入が96万5000円(2026年からは106万5000円)を超えると住民税がかかる可能性があります。
年末調整
年末調整とは、従業員の1年間の給与や賞与から差し引かれた所得税額を、年末に実際の所得に基づいて再計算し、税額の過不足を調整する手続きです。任意で加入する生命保険や介護医療保険、個人年金保険、地震保険なども控除の対象となります。
詳しくは、自身の事業所で確認してくださいね