春の季節観測と 隊員の交流 ⑥

―和歌山城の松の木に巻かれた「こも」が取り外されると春が来たと実感します。田中さんは和歌山県に赴任してもうすぐ1年になりますね。
 着任したとき、お城の桜が見事だったのが印象に残っています。昨年の生物季節観測結果をみると、ソメイヨシノの開花は3月25日でした。他にも3月は、タンポポやスミレ、モモの開花、ウグイスの鳴き声、モンシロチョウやツバメの初見の観測もしています。ちなみに、南極に桜の木はありませんが、お花見会は開かれましたよ。

―お花見会?
 通路に桜の木に見立てた人工の木が置かれ、隊員たちは空き時間に、あらかじめ準備された材料で花を作り、木に取り付けていきます。

―会話のきっかけにも?
 はい。一緒に仕事をする上で隊員同士の交流は大切。だからこそ、季節行事やレクリエーションを企画し、信頼関係を深めています。

―屋外の行事、例えばスポーツ大会などは?
 ドッジボール大会があります。「野外で寒くないの?」と思われるかもしれませんが、その日は気温がマイナス6~マイナス2度。南極の気温としては暖かく、動き回ると体がポカポカになって汗ばむぐらいでした。

―話は戻り、和歌山での1年間はどうでしたか。
 和歌山地方気象台は昨年創立140周年を迎えました。明治時代から同じ場所で観測を続けている歴史ある気象台で業務に携わり、警報や注意報を発表。イベントを通して地域の人と触れ合うこともできました。近年、経験したことがないような大雨が発生しています。皆さんに役立つ情報を発信していきます。

ドッジボールを楽しむ隊員(提供=国立極地研究所)

回答者
田中省吾さん
和歌山地方気象台の技官で、日本南極地域観測隊の元隊員

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