気温と湿気が高くなる夏は、細菌による食中毒が起こりやすい季節です。お出掛けやレジャーの機会も多くなる中、ちょっとした油断が体調不良の原因になることも。8月は食品衛生月間です。食中毒予防のポイントを和歌山市保健所で話を聞きました。
煮込み料理や野外調理も油断大敵
食中毒は、細菌やウイルスなどが付着した食べ物を口にすることで、下痢や嘔吐(おうと)、腹痛、発熱といった症状が引き起こされ、重症化すると命に関わることもあります。
原因となる細菌は、土や水の他、人や動物の皮膚、腸の中にも潜んでいます。調理中に細菌が食材に付着したり、作った料理を温かい部屋に長時間放置したりすると、あっという間に細菌が増殖。夏場は特に細菌が活発になるため、少しの油断が大きなリスクにつながります。
「食中毒は一年を通して発生しており、気温が上がる6~9月は、細菌性の食中毒が多くなります。細菌による食中毒を防ぐには、細菌を食べ物に“付けない”、食べ物に付着した細菌を“増やさない”、 食べ物や調理器具に付着した細菌を“やっつける”という三原則があります」と話すのは、和歌山市保健所生活保健課の中里憲司さん。
まず、“付けない”ために大切なのが手洗い。食品に触る前はもちろん、調理の合い間もこまめに洗いましょう。包丁やまな板も、肉や魚を切った後は洗浄し、熱湯などで殺菌するのが理想です。
次に、“増やさない”工夫。冷蔵・冷凍が必要な食品は、買い物から戻ったらすぐに冷蔵庫・冷凍庫へ。ちょっとした時間でも室内に置いたままにしておくと、細菌の増殖につながります。
肉や魚から出る「ドリップ(液体)」には細菌が含まれている可能性があります。容器のすき間から他の食材に移るリスクもあるため、中里さんは、「ポリ袋を使ってドリップの漏れを防ぎましょう。さらに、エコバッグもドリップが付着する場合があるため、取り扱い表示に従って定期的に洗うことが大切です」とアドバイスします。
最後の原則、“やっつける”は「加熱」が決め手です。中里さんは、「食品を加熱する際は、中心温度75度以上で1分以上を目安にしてください」と強調します。たとえ新鮮な食材でも、生肉や加熱不足の肉を口にすれば、食中毒の原因となることがあります。
多くの細菌は加熱で死滅しますが、中には加熱しても食中毒を起こす菌も存在します。「手にうみを持つような傷がある場合、そこから細菌が食材に移る恐れがあります。防水のばんそうこうを貼り、その上から調理用手袋を着用するなど、感染を防ぐ工夫が必要です」と注意を呼びかけます。
また、家庭で見落としがちなのが煮込み料理です。中里さんは「ウェルシュ菌は加熱しても死滅しにくい性質があります。大鍋で調理したカレーなどを常温放置すると、増殖しやすくなります」と説明します。調理後は鍋ごと水に浸けるなどして、短時間で温度を下げる工夫が必要です。再加熱する際は、よくかき混ぜながら、中心までしっかり熱を通すようにしましょう。
夏休みはバーベキューやキャンプなど、屋外での食事が増える季節。手洗い、保冷、加熱などの基本を守って、食中毒から身を守ってください。
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