国の重要文化財に指定 極彩色! 阿弥陀寺本堂

リビング和歌山9月15日号

 和歌山市鳴神にある阿弥陀寺の本堂を訪ねてみませんか。江戸時代、紀州徳川家の力を知らしめるような、鮮やかな色彩と細部まで手の込んだ彫刻は、目を見張るほどのすばらしさです。

徳川頼宣が兄・秀忠のために建立
目にも鮮やかな御霊屋(おたまや)

8月17日、「阿弥陀寺」(和歌山市鳴神1095)の本堂が、国の重要文化財に指定。徳川家が造営した霊廟(れいびょう)建築のうち、江戸時代初期にさかのぼる数少ない遺構として、価値の高いことが認められました。

そのつくりは、将軍の霊廟にふさわしく、豪華絢爛(ごうかけんらん)。内装は極彩色ですみずみまで彩られ、細かな彫刻などで飾られており、当時の彫刻技術や歴史を感じることができます。住宅地の中にあるお寺に、「こんなところがあるなんて!」と驚く人も多いのでは。和歌山県教育庁生涯学習局文化遺産課の川戸章寛さんにうかがいました。

1633(寛永10)年、紀州徳川家の初代藩主・徳川頼宣が、兄である二代将軍・秀忠を弔うため、和歌山城下(現在の和歌山市吹上)に大智寺(だいちじ)を建立。明治維新の折、大智寺は廃寺となりましたが、1871(明治4)年に、境内にあった霊廟・台徳院霊屋(たまや)が、和歌山市鳴神の阿弥陀寺内に本堂として移築されました。「徳川家が直接造営し、残っている霊廟の中でも古いものの一つ」と川戸さんは話します。

阿弥陀寺住職の榎本明洋さんに同寺本堂の見どころなどについて聞きました。

 

祈りを込めて建てられた将軍の霊廟

建築様式や多彩な装飾を見て 紀州徳川家の歴史に思いをはせる

浄土宗無量光山阿弥陀寺
住職・榎本明洋さん

豪華で緻密なデザインが特徴的な阿弥陀寺本堂。1830(文政13)年に紀州藩の御大工(おんだいく)によって修理されたり、明治時代の移築によって一部改変されてはいるものの、ほどんどが昔の姿のまま残されていることが、資料などから分かっています。外周りから内部まで、見どころがたくさん。阿弥陀寺の住職である、榎本明洋さんに聞きました。

外観で注目したいのは、向拝(こうはい、正面に張り出したひさしの部分)などに飾られた精緻な彫刻たち。「菊や牡丹(ぼたん)などの花々のほか、内側を守るように伝説上の生き物である麒麟(きりん)や獏(ばく)、犀(さい)といった“霊獣”が飾られています」。どれも立体的で生き生きとした様子が伝わり、彫刻技術の高さをうかがい知ることができます。特に数が多いのが、突き出した鼻が特徴的な獏。本堂を囲うようにぐるりと配置されています。悪夢と鉄を食べることから平和と軍縮の象徴でもある獏に、徳川家の平和を維持するという願いが強く込められているとか。

内部は目が覚めるような極彩色。内陣と外陣に分かれており、境にある欄間に透かし彫りがほどこされています。モチーフは、牡丹や姫百合(ひめゆり)など、さまざまな植物。内陣にまつられた将軍・秀忠のため、内側から見て美しく見えるように作られたそうです。また、壁に飛天(羽衣をまとった天女)が描かれていることから、内陣が極楽浄土の世界をあらわしていることが想像できます。

その他、すみずみまで美しく貴重な装飾が満載。「昨年亡くなった父が、この本堂が国の重要文化財に指定されるよう、ずっと取り組んできました。それがようやく実現できてうれしい」と榎本さん。実際に訪れてみると、紀州徳川家の歴史だけでなく、建築そのものの芸術的なすばらしさも実感できるはず。ぜひ足を運んでみて。観覧無料。本堂の観覧希望者は、事前に阿弥陀寺へ問い合わせを。

外観はほとんど褪色していますが、扉のすきまなどに、色が残っているところも

向拝には植物や霊獣の彫刻

問い合わせ 阿弥陀寺
電話 073(471)3206

 

透かし彫りの植物

内陣側から見た欄間にある、繊細で立体的な植物の彫刻

海老虹梁(えびこうりょう)に描かれた飛龍と波

外陣と内陣をつないでいる梁(はり)に描かれているのは、翼の生えた龍

飛天(天女、左側)

修繕の際にあった絵をはずすと、下から出てきたという逆さまの飛天の絵

飛天(天女、右側)

内陣に入って右奥にある絵。こちらも修繕前の絵の下から見つかったとか

獏(ばく)の彫刻

伝説上の生き物・獏。長く伸びた鼻がユニークで、どこかかわいい印象

折上格天井(おりあげごうてんじょう)

天井のふちの部分のカーブが、位の高い人が過ごす場所であることをあらわしています

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