有吉佐和子生誕90年 古くて、新しい 人間の根底を描いた作家

登場人物の目を通して描き続ける
今なお読み継がれる名作の数々

和歌山市出身の作家・有吉佐和子が今年、生誕90年を迎えました。“川もの”と呼ばれる紀州三部作『紀ノ川』『有田川』『日高川』や、全身麻酔の手術に成功した外科医の嫁しゅうとめの葛藤を描いた『華岡青洲の妻』をはじめ、介護問題を扱った『恍惚(こうこつ)の人』、公害問題を提起した『複合汚染』など、数々の作品を発表。舞台・映像化もされています。一代記から社会問題まで、あらゆるテーマを登場人物の目を通して描き続け、小説のみならず、脚本家、演出家としても活躍した有吉。今なお読み継がれるのは、現代に通じるものがあるからでしょう。 彼女の人生と作品の側面に触れるとともに、関連イベントや復元される邸宅について紹介します(下記)。

2022年6月オープン予定
和歌山市内に邸宅を復元

東京都杉並区の邸宅を和歌山市伝法橋南ノ丁の和歌山市民会館向かいに復元。1階は原稿など、ゆかりの品を展示する資料室と憩い・交流などのスペース、2階は茶室と執筆作業を行っていた書斎が再現されます

生誕90年フェア
8月から和歌山市民図書館で開催

■有吉佐和子文庫フェア『有田川』
8月1日(日)~11月30日(火)
同館2階「有吉佐和子文庫」
『有田川』ゆかりの地をマップとともに紹介
■生誕90年フェア
8月2日(月)~11月30日(火)
同館2階カウンター前「和歌山ことはじめ」
代表作を中心に、有吉佐和子作品を特集

和歌山市民図書館 073(432)0010

有吉佐和子の世界を味わおう!

題材は歴史から社会問題まで
登場人物を通して語り、伝える筆力

有吉佐和子は1931(昭和6)年、和歌山市で誕生。父親の仕事で小学校時代を旧オランダ領東インドで過ごし、41(同16)年に帰国、高校卒業まで和歌山市内で過ごしました。大学在学中は演劇評論家を目指し、56(同31)年、伝統芸能に生きる父娘の葛藤と和解を描いた『地唄』が文学界新人賞と芥川賞の候補となり、一躍文壇デビュー。注目を集めます。59(同34)年には、有吉自身の家系をモデルにしたとされる『紀ノ川』を発表し、小説家としての地位を確立。その後も、53歳でこの世を去るまで、数々のベストセラーを生み出しました。

「無駄のない語句で、人の感情や周りの景色を浮かび上がらせる筆力。伝統など古いもの(考え)の良い所と、新しいもの(考え)の良い所を捉え、登場人物を通して語らせています」と話すのは、有吉佐和子研究者で元高校教諭の岡本和宜さん(写真)。また、先見の明を持った作家と評されていることについて、「歴史や文化、社会問題など、着目したテーマは現代にも通じる話。一過性のものでなく、人間の根底にあるものが描かれており、その時代に合わせて置き換え、考えることができるところに読者は共感を覚えるのではないでしょうか」と解説します。
例えば、『紀ノ川』は、政治生命をかけ、私財を投げ打ってでも紀の川の水害を抑えようとする夫と、それを支える妻、『有田川』は、氾濫した有田川に流され、命からがらたどり着いた地でミカン作りに励む女性の話です。岡本さんは「どちらも水害の恐ろしさと、復興を目指す人たちの強くたくましく生きる姿が描かれています。古い話ですが、水害は今まさに私たちの身近で起こっていることであり、本から考えさせられたり、勇気づけられたりすることも」と話します。

県内では生誕90年に合わせ、有吉の蔵書「有吉佐和子文庫」がある和歌山市民図書館や「紀の国わかやま文化祭2021」でイベントが開かれる他、来年6月には東京都にある有吉邸が和歌山市に復元されます。

この夏、有吉作品を手に取ってみては。岡本さんに、和歌山が舞台の小説3冊を紹介してもらいました。

岡本和宜さん

「作品は演劇や映画になる他、翻訳もされています」と話す岡本さん


【プロフィール】
有吉佐和子研究者。元高校教諭で、現在、和歌山市の刺田比古神社(岡の宮)の禰宜(ねぎ)。著書に『丹羽文雄書誌』(和泉書院刊)、共著に『有吉佐和子の世界』(翰林書房刊)あり

和歌山が舞台!有吉佐和子の作品

『紀ノ川』 新潮文庫刊

名家へ嫁いだ主人公の半生を、その娘や孫娘、夫、義弟などとの関係性に照らしながら描いています。明治・大正・昭和の慣習や時代の変遷を3人の女性を通して映し出しています。

『有田川』 講談社文芸文庫刊

明治から昭和時代が舞台。有田川の氾濫で流され、ミカン農家に拾われた女性が、ミカン栽培に生涯をささげる物語。激動の時代をたくましく生きる女性の姿を伝えています。

『華岡青洲の妻』 新潮文庫刊

世界初、全身麻酔による乳がんの手術に成功した華岡青洲。麻酔薬を完成させるため、自ら実験台となった妻と母の美談の裏で、青洲を奪い合う嫁としゅうとめの関係を浮き彫りにしています。

紀の国わかやま文化祭2021

有吉佐和子生誕90年
ふるさとと文学2021~有吉佐和子の和歌山

【日時】11月3日(祝)午後1時半~5時
【場所】和歌山城ホール大ホール(和歌山市七番丁)

映像と語り、音楽で有吉の肖像を表現。他にも、シンポジウム、朗読劇『石の庭』の上演もあります。日本ペンクラブが企画監修。詳細や申し込み方法は、7月30日(金)から和歌山市のホームページでお知らせ。入場無料

同文化祭和歌山市実行委員会事務局(和歌山市文化振興課内) 073(435)1194

演劇公演「華岡青洲の妻」

【日時】10月30日(土)午後1時~2時半
【場所】和歌山県民文化会館小ホール(和歌山市小松原通)

【日時】11月21日(日)午後1時~3時
【場所】青洲の里 春林軒(紀の川市西野山)

有吉佐和子原作オリジナル脚本。青洲の情熱と麻酔薬が完成するまでの努力、成功の陰にあった家族の協力や人間愛などが演じられます。入場無料

劇団 華岡青洲 0736(75)2586

市民参加劇『有田川』

【日時】11月21日(日)午後2時~4時20分
【場所】有田市民会館紀文ホール(同市箕島)

地元の人が役者やスタッフとして参加。地域の災害史やミカン産業の歴史を、音楽や地域の伝統芸能を取り入れて演じます。大人1000円(前売り800円)、高校生以下500円(前売り400円)

同文化祭有田市実行委員会事務局(有田市文化福祉センター内) 0737(82)3221

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