南葵音楽文庫100年
紀州徳川の世界的な音楽遺産

リビング和歌山2026年1月24日号「南葵音楽文庫100年 紀州徳川の世界的な音楽遺産」

 「南葵音楽文庫」の前身である「南葵音楽図書館」が、開館して100年を迎えました。その魅力を広めようと昨年普及会が発足し、県内外で活動しています。和歌山に残る世界的な文化遺産について知り、音で楽しんでみませんか。

南葵音楽文庫普及会の会長を務めるピアニスト・宮下直子さん(写真左)、同じくメンバーのソプラノ歌手・瑞樹(たまき)比美香さん(同右)。県立図書館の南葵音楽文庫閲覧室で、オペラ楽譜を持って

紀州の殿様が集めた貴重な資料
県内外、多くの人に魅力を伝える

紀州徳川家16代当主・徳川頼貞(よりさだ)が集めた音楽資料のコレクション「南葵音楽文庫」。その前身である「南葵音楽図書館」が東京都の徳川邸内に開設され、昨年で100年を迎えました。

同文庫は、頼貞自らが収集した西洋音楽の資料を一般に公開していたもので、頼貞没後に追加されたものを含め、その数は2万点余り。音楽事典や音楽雑誌、楽譜などの音楽関連のほか、語学辞書や百科事典もそろえ、中には作曲家の自筆楽譜も。当時は手に入れるのが難しかった全集楽譜は、バッハやヘンデル、モーツァルトなどの名だたる作曲家のものが並びます。

現在は「読売日本交響楽団」が同文庫を所有し、2016年に和歌山県に寄託。県立図書館で保管し、一部を一般公開しています(県立博物館保管資料もあり)。同文庫を調査研究する美山良夫さん(慶應義塾大学名誉教授)は、「このコレクションが本格的に公開されるようになったのは、ここ和歌山が初めて。非常に貴重なものが多くあり、日本の音楽のために尽くそうとした頼貞さんの熱意や思いも感じられます。ぜひ実際に手にとって見てほしい」と話します。県立図書館の「南葵音楽文庫閲覧室」で資料は公開されています(下記)。

こうした同文庫の魅力をもっと広めようと、昨年4月「南葵音楽文庫普及会」が発足(会長=ピアニスト・宮下直子)。美山さんを学術雇問、和歌山市出身で前東京藝術大学長の澤和樹さん(バイオリニスト)を名誉顧問相談役に迎え、ソプラノ歌手・瑞樹比美香さんなどメンバーは6人。県内のほか、奈良市や神戸市、岸和田市などにも出向き「まちなかコンサート」を行ってきました。

10月には、頼貞が輸入したパイプオルガンが残る旧東京音楽学校奏楽堂で「南葵音楽図書館100年コンサート」を実施。どの会場でも同文庫に関わりある音楽を演奏し、そのエピソードも紹介しながら、音楽でその価値や魅力を伝えています。

美山良夫さん

美山良夫さん

徳川頼貞

徳川頼貞
(1892~1954年)
南葵音楽文庫は、頼貞が莫大な私財を投じた私的収集といわれてきましたが、調査研究が進むと、これらは公共財として活用されていたことが分かってきました

ベートーベンによる自筆楽譜(ロシア民謡編曲の冒頭部分)

徳川頼貞著作原稿「樂器の研究」(1910) 学習院在学中の論稿

ヘンデル「グロリア・パトリ」(辻荘一による校訂楽譜、1928年刊行) 南葵音楽文庫がかつて所蔵したカミングス文庫の筆写楽譜(自筆楽譜は1860年に焼失)による校訂楽譜

南葵音楽文庫閲覧室

和歌山県立図書館(和歌山市西高松1-7-38)

書棚に並ぶ楽譜や音楽事典、当時の音楽雑誌などを開き、見ることができます

 和歌山県立図書館1階閲覧室「調査相談カウンター」の奥にある「南葵音楽文庫閲覧室」では、約2000点の資料が展示・公開されています。貴重な資料はガラス書棚に収められ(時期により展示内容は入れ替え)、楽譜や音楽辞典、音楽雑誌、一般には流通しない専門誌や欧米演奏会のプログラム冊子など、頼貞が収集したさまざまな資料や書籍を室内で実際に手に取って閲覧することができます。ベートーベン、シューベルト、モーツァルトなど著名作曲家の全集楽譜、またミニチュアスコアやオペラの楽譜も豊富。重厚に装丁され、中には頼貞のサインやメモ書きが残るものもあります(申請をすれば撮影可能)。

【利用方法】調査相談カウンターで申し込み
【利用時間】火~金曜午前9時~午後7時(土・日曜、祝日は6時まで)
【休館日】月曜(祝日は開館、翌平日休館)、ほか館内整理日など

問い合わせ 073(436)9520 県立図書館サービス課

和歌山から発信
すごいぞ“南葵”

100年記念の集大成として
和歌山市の西コミセンでイベント

さまざまな視点で“南葵”の素晴らしさを感じてほしいと話す宮下さんと瑞樹さん

「南葵音楽文庫普及会」は、今年度を“南葵100年”スペシャルイヤーとして、和歌山ゆかりの演奏家たちとこれまで県内外10カ所で「まちなかコンサート」を行ってきました。道行く人が誰でも足を止めて見たり聴いたりできるようにオープンスペースを会場に。入場を無料にして、南葵音楽文庫に関連する音楽を披露し、その曲や演奏家にまつわるエピソードを南葵音楽文庫サポーターが語ってきました。

普及会立ち上げ初年度の集大成となる「まちなかニューイヤーコンサート」が、2月7日(土)に、和歌山市西コミュニティセンターで開催されます(下記参照)。普及会の会長・ピアニストの宮下直子さんは、「所蔵資料や楽譜をひも解くと、例えばプッチーニやプロコフィエフなど、頼貞さんが出会った多くの作曲家たちを身近に感じ、その人たちの魂が今に伝わってくるようです。そんな思いを音楽で表現したい」と話します。

同じく普及会メンバーでソプラノ歌手の瑞樹比美香さんは「一つ一つ丁寧に装丁された楽譜には蔵書印があり、中には頼貞さんのサインやメモ書きが残るものも。偉大な作曲家たちに会うことはできませんが、同じ時代を生きた頼貞さんが、今の私たちに一つ一つの曲の素晴らしさを語りかけているようです」と。

音楽で同文庫について伝え広めたいと話す二人。2月のまちなかコンサートは、演奏のほか展示やおはなしカフェなども盛り込み、会場全体が“南葵”で彩られます。そのほか、県立図書館が行うコンサートや関連セミナーも紹介します(下記参照)。

西コミセンで新年を祝おう!
南葵100年記念
まちなかニューイヤーコンサート2026

日 時

2月7日(土) 入場無料
正午〜午後5時

会 場

和歌山市西コミュニティセンター
(和歌山市砂山南3-1-11)
1階オープンスペース 限定100席

同時開催(正午~午後5時、観覧自由)

●「南葵音楽文庫パネル展」「紀州徳川の菩提寺・長保寺展」 などの展示
●南葵100年東京コンサート映像
●南葵研究員カフェ(美山良夫さんがカフェに常駐。お茶を飲みながら “南葵音楽文庫談義”を ※ドリンク は有料)
●キッチンカー出店

プログラム

1部(午後1時から)
◆ネイラー:序曲「徳川頼貞」ほかブラスバンドステージ

【出演】和歌山県立向陽中・高等学校吹奏楽部(今西秀彰指揮)

作曲家のネイラーは、頼貞が英国のケンブリッジ大学留学中に指導を受けた人物。帰国後も交流が続き、頼貞による「南葵楽堂」の開設を記念して作曲されたのが序曲「徳川頼貞」です

 

2部(午後2時から)
◆グノー:アベ・マリア◆プッチーニ:ある晴れた日に◆祝南葵開庫歌◆クライスラー:ベートーベンの主題によるロンディーノほか

【出演】
宮下直子(ピアノ)、瑞樹比美香(ソプラノ)
【お話】
南葵音楽文庫サポーター・まつだきくこ

南葵音楽文庫に関連した楽曲が物語とともに奏でられる100年記念演奏会。初めての人にも、引き継がれる歴史に感動できるエピソードを交えて演奏されます
※プログラムは変更される場合あり

左から澤亜樹さん(バイオリン)、Nazuki’さん(サックス) 、小寺香奈さん(ユーフォニアム)

問い合わせ 073(457)1011
南葵音楽文庫普及会事務局
(ルル・ミュージック内)

県立図書館主催
Mah!ライブラリー室内楽定期演奏会 vol.45

南葵音楽文庫コンサート vol.4
サン=サーンス 「ミューズと詩人」

南葵音楽図書館100年の記念コンサート。文庫の所蔵作品や頼貞著『薈庭楽話(わいていがくわ)』に登場する作品が演奏されます。サン=サーンス「ミューズと詩人」は、自筆の書き込みがある初演楽譜を同文庫が所蔵しています

日 時

2月21日(土)
午後2時から(開場1時半)

会 場

和歌山県立図書館
メディア・アート・ホール
(和歌山市西高松1-7-38)

入場料

●一般3000円
●学生2000円
※全席自由

プログラム

◆ベートーベン:ピアノ三重奏曲 No.7 変ロ長調 Op.97「大公」より◆メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 No.1 ニ短調 Op.49 より◆サン=サーンス:「ミューズと詩人」 Op.132(ピアノ三重奏版) ほか
【出演】澤和樹(バイオリン)、林裕(チェロ)、宮下直子(ピアノ)、司会:近藤秀樹(南葵音楽文庫研究員)

左から林裕さん、澤和樹さん、宮下直子さん

読者プレゼント

同コンサートに読者ペア2組をご招待。はがき、またはメールで応募を。〒住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒640-8557(住所不要)和歌山リビング新聞社「南葵」係へ、メールはpresent@living-web.netの同係へ。1月28日(水)必着。当選発表は発送をもって代えます

問い合わせ 073(436)9530
和歌山県立図書館文化情報センター

県立図書館で知る! 学ぶ!

南葵徳川音楽塾
「モーリス・ドラージュと東洋」

インドや日本を題材とした声楽作品を残すフランスの作曲家モーリス・ドラージュについて、南葵音楽文庫が所蔵するフランス音楽にふれながら解説
【講師】柚木たまみ(滋賀短期大学教授)、司会進行:近藤秀樹

日 時

2月21日(土)午前11時~12時
参加無料

会 場

南葵音楽文庫閲覧室 オンライン聴講あり

定員

当日先着15人程度
(オンラインは事前申込制)
オンライン聴講申し込みはこちら(https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/nanki/event/jyuku/index.html)

南葵音楽文庫アカデミー春
和歌山寄託10年を前に
徹底討論:南葵音楽文庫

南葵音楽文庫について調査してきた研究員が登壇し、それぞれがもつ問題意識を提起しながら、討論を深めます。パネリストは美山良夫さんほか
※同日午前11時~12時には南葵音楽文庫閲覧室で重要資料報告会もあり(申し込み不要、当日先着15人程度)

日 時

2月22日(日)午後1時半~3時半
参加無料

会 場

2階 講義・研修室

定員

先着60人(事前申込制)

ホームページで確認(https://www.lib.wakayama-c.ed.jp/nanki/event/academy/index.html)

問い合わせ 073(436)9520
和歌山県立図書館サービス課

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