−第5回−文化財 仏像のよこがお「新発見、高野山の歴史を語る神像」

高野名人坐像(左)と丹生明神坐像(大滝丹生神社蔵)

 仏の姿を彫像で現すのと同じように、神の姿を彫像で表すことがあります。目にする機会は少ないものの、社殿の中に秘められてきた神の姿「神像」は、人々の信仰と地域がたどってきた歴史を伝える大切な文化財です。

 昨年、高野山の奥に位置する高野町大滝地区に文化財調査で訪れました。「善女龍王」という龍神をまつるお堂を調査した後、隣にある大滝丹生(にう)神社の小さな社殿の扉を開けてもらいました。

 まず見えたのは一対のこま犬と鏡。取り出すと奥には白木の箱が2つ並んでいます。ふたを開けてみると、彩色も鮮やかな男女の神像が収められていました。丹生神社の主祭神である唐装(中国式の服)姿の「丹生明神坐(ざ)像」と、束帯姿の「高野明神坐像」です。

 両像ともに下膨れでやや年若く見える風貌。頬紅を差して精彩があり、衣の彫り口も深く立体感があって、鎌倉時代から南北朝時代、14世紀ごろの作風を示しています。背後のびょうぶに描かれた絵巻物から切り抜いたような華麗な山水は、他に類を見ないもので、想像もしていなかった優れた神像の新発見でした。

 この神像が作られたころ、大滝地区周辺では、高野山と金峯山(吉野蔵王堂)との間で領域を巡るいさかいがありました。おそらく高野山は村の支配を確かなものとするため、拠点の神社を整備して神像を安置したのでしょう。

 美しい彩色もそのままに守り継がれた神像は、高野山の知られざる歴史を、700年の時を超えて私たちに語り始めているのです。

※企画展「きのくに神秘の仮面―新発見の神像とともに―」で展示中(3月8日まで)
(和歌山県立博物館主任学芸員・大河内智之)

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