すごいぞ!和歌山の底力
創業120年を迎える老舗
お正月は濱辰のかまぼこ

リビング和歌山12月16日号「すごいぞ!和歌山の底力 創業120年を迎える老舗 お正月は濱辰のかまぼこ」

 正月のおせち料理に欠かせない「かまぼこ」。そこで今回、和歌山県のものづくり企業にスポットを当てたシリーズ「すごいぞ!和歌山の底力」では、明治37年創業の老舗かまぼこ店「濱辰商店」をピックアップ。2024年には120年の節目を迎える伝統の味わい。愛される名品の魅力に迫ります。

濱辰商店 代表取締役 嶋侑規子

濱辰商店
代表取締役 嶋侑規子さん

2代目は昭和の大相撲力士
守る伝統と昔なじみの味わい

 1904年に創業した「濱辰商店」は、100年以上の歴史を誇る老舗のかまぼこ専門店です。その始まりは海に面した和歌浦。かまぼこを作るのに最適な場所で基盤を築き、和歌浦名産という呼称を不動のものとしました。現在は車で10分ほど北上した雄松町で営業。工房と直売所を併設し、創業時の製法を受け継ぎつつ、伝統と昔なじみの味を守り続けています。

「来年に創業120周年を迎えます。本当に多くの人に支えられ、ただただ感謝。この気持ちを何かの形で皆さまにお届けしたいと考えています」。そう話すのは、濱辰商店4代目の嶋侑規子さん。3代目の夫が体調を崩したこともあり、製造と経営を分けて2年前に代表取締役に就任。「23歳でお嫁に来た時から、現場に携わっています。もう半世紀近くかまぼこ屋です(笑)」と。当時は中央市場での販売もあり、真夜中から作業開始。夫と一緒に2代目の背中を必死で追いながら、一からかまぼこ作りと商売を学んだと言います。

2代目といえば、地元ではちょっとした有名人。実は和歌木山(わかぎやま)の名前で活躍した昭和の大相撲力士で、最高位は東十両3枚目。そんな2代目が考案し、店の看板商品でもある「扇かまぼこ」は、力士時代からヒントを得て作られました。モチーフは力士を呼び上げる呼出(よびだし)が使う扇。縁起の良さもあり、結婚式やお祝いの日の贈り物、さらに紅・白・焼きと3種類そろうことから、正月に欠かせないおせち料理の彩りになっています。

店舗に飾られた2代目・嶋栄一さんの写真。大相撲現役時代の姿で、四股名は和歌木山。たくましくも優しいまなざしで、いつも家族を見守っています

店舗に飾られた2代目・嶋栄一さんの写真。大相撲現役時代の姿で、四股名は和歌木山。たくましくも優しいまなざしで、いつも家族を見守っています

「キリッとした男前で、相撲にも仕事にもまじめ一直線でした。その気質は、主人や子どもたちだけでなく、濱辰の従業員一人一人に引き継がれています。総勢で23人。最高齢の82歳から下は22歳まで、世代を超えて協力しがんばっています!」

4月から新事業!キッチンカー始動
ふわふわ新食感の練り物がお目見え

扇かまぼこ

結婚、出産、お正月…祝いの席には「扇かまぼこ」が地元の定番。おせち料理の彩りには紅・白、雑煮には焼きがおすすめです。1本1512円

味わいの決め手はツヤと食感
代々受け継ぐこだわりの製法

かまぼこ工房には朝8時からモクモクと湯気が立ち上り、職人さんたちがせわしなく動き回っています。こだわりは素材の味を最大限に生かす、創業時から変わらない手作りの製法。すり身の原料として一級品のエソやハモ、イトヨリなどを使い、より自然に近い味わいを追求しています。「かまぼこは味だけでなく、食感も大切です。濱辰が目指す味と食感を引き出すのは、手間を惜しまない石臼を使った練り上げ。職人たちは、日々変化する湿度と温度を見極め、感覚を研ぎ澄ましながら、かまぼこの味わいを決めています」と、嶋さん。

表面にはツヤがあり、ひと目で分かる弾力としっとりとした質感。当然、口の中でもプリッとした弾力を感じ、かみしめるごとに魚の濃厚なうま味が広がります。しっかりとした食べ応えもあって、おかずとしても一級品。「今の時期はお正月用のかまぼこ。やっぱり看板商品の“扇かまぼこ”が人気です」と、話しているそばから、店頭ではショーケースに並ぶ作りたての「あげかまシリーズ」も次々と売れていきます。

シリーズは「たこ」、「たまねぎ」、「ささがきごぼう」、「しょうが」、「ピリからげそ」など。ツヤと弾力に、揚げ油のジューシーさが加わり、一口サイズの食べやすさもあって、手が止まらないおいしさ。師走の忙しい主婦にとっては、そのまま食卓に出せるおかずとして、こんなにうれしい食材はありません。

石臼の様子

手間がかかっても石臼を使うのは、濱辰がこだわる心地よい歯ごたえを生み出すため。その分、温度と湿度の見極めが難しく、日々職人の腕が試される勝負所でもあります

職人は手作業で1つ1つ形作り

高級かまぼこだけでなく、おでんの具材となるひら天やごぼ天のほか、弁当に入れるとかわいいウズラ詰めの小玉子まで、職人が一つ一つ丁寧に手作りしています

揚げかまぼこ

たこ・たまねぎ・しょうが・ピリからごぼうと、食卓にそのまま並べるだけで立派なおかずになる「あげかまシリーズ」は主婦の強い味方。店頭では量り売りも。スーパーや産直市場ではパック入りが並んでいます

ぱんだかまぼこ

お土産としても人気のある「パンダかまぼこ」(各色518円)。ほかに「ハートかまぼこ」もあり、名前やメッセージを入れることもできます

創業120周年の節目に
新事業キッチンカー始動

嶋さんは「今では定番となった“あげかまシリーズ”ですが、これを考案したのは3代目の主人。夏に売れる商品を…と開発したのがあげかまです」と話します。新商品の開発だけにとどまらず、物産展やイベント出店なども積極的に参加。トラックにフライヤーを積み込み、揚げたてを実演販売で提供。今年は和歌山県内を中心に、道の駅や祭り、花火大会など、春から秋にかけて隔週のペースで走り回っていました。担当は嶋さんと娘の敦子さん。「やりがいは、対面販売の時に聞こえてくるお客さまの声と、ほお張った時の笑顔。『濱辰のかまぼこやったら間違いない』と言われるのが、何よりもうれしいですね」

そんな濱辰の女性陣は、120周年を迎える来年4月からキッチンカー部門を始動。新たな事業の柱として活動する方針です。SEA by hamatatsu(シー・バイ・ハマタツ)心機一転、名前も新たに「SEA by hamatatsu(シー・バイ・ハマタツ)」の英表記で、かまぼこの魅力と濱辰の名前を県内外に発信。現在、敦子さんが中心となって新商品の開発も進めています。「濱辰の味と看板を守りつつ、新しい時代にも目を向けて日々進化。令和の子どもたちにも求められるものを届けていきたい」と話す嶋さん。キーワードは、すぐに食べられる・食べ切りサイズ。新鮮なすり身をそのまま揚げ、ふわふわのボール状に仕上げた新食感の練り物が初お目見えします。

濱辰商店

外観と内観、今年の干支かまぼこ(辰)

代 表 者 代表取締役 嶋侑規子
創    業 明治37(1904)年
工房兼店舗 和歌山市雄松町3-48-1
ホームページ https://www.hamatatsu.co.jp
電話番号 073(402)1738
営業時間 午前9時~午後6時
定休日 水・日曜
※12月14日(木)〜30日(土)は休まず営業
年始は1月5日(金)から開始

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