おじいちゃんの手

20150905top03

おじいちゃんから孫へ
口伝えに語られる黒人差別の歴史

「白魚」にはほど遠い私の手。「柏餅の葉っぱみたい」だと自虐的に思っていたのですが、先日、偶然にも同じ電車に乗り合わせたご近所さんが、「外見に似合わず働き者の手をしているのね」と言ってくださったのです。

「外見に似合わず」のフレーズはスルーして、「働き者」だとほめられたことがうれしくて!時代はパソコンに移り変わったというのに、いまだにペンだこを残す指が、この時ばかりは誇らしく思えました。ささやかながら、この手でずっと稼いできましたし。

『本物をたずねて』というシリーズで職人の方々の仕事を取材した折に聞いた、『手は休みたがり、人はずるをしたがる。ずるをしなくなるまで、手に仕事を覚えさせる』というお話を座右の銘にしています。

黒人のおじいちゃんが孫に「どうだ、ジョーゼフ、わしの手は」と語りかける『おじいちゃんの手』(出版=光村教育図書、マーガレット・H・メイソン/作、フロイド・クーパー/絵、もりうちすみこ/訳)は黒人差別を静かに描いた絵本です。

靴ひもを結び、ピアノを弾き、トランプのカードをきり、ボールを投げる手が、「黒い」というだけで、パン工場ではパン生地にさわることさえ許されませんでした。

差別された手は仲間の手を求め、つなぎ合います。意見に賛成するたくさんの手が集まり、黒い手だ、白い手だと区別するのはやめようという抗議の輪へと広がります。

人種差別をわかりやすい言葉で淡々と語り、「おまえのその手が、どんな仕事をしようと、もう、文句を言われることはないんだ。おまえのその手は、なんでもやれる」と結びます。心の奥深くに届く作品です。

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表

子育て・教育

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年12月20日号「寒い日のお楽しみ せいろ蒸し日和」
     寒い季節にぴったりのせいろ蒸し料理。ベジフル料理研究家・井上宣子さんによる考案、和歌山の食材を取…
  2. リビング和歌山2025年12月13日号「進化した往年の玩具、コレクションの極み 大人が夢中!「キダルトトイ」の世界」
     ちまたのおもちゃ屋さんはクリスマス商戦でかき入れ時。しかし実は今、“玩具市場”をけん引しているの…
  3. リビング和歌山2025年12月6日号「和歌山市内の5つの社寺を参拝 御朱印にときめく小旅へ」
     和歌山市内の5社寺を訪れて御朱印を集める「紀州神仏霊場巡り」が来年4月末まで行われています。全て…
  4. リビング和歌山2025年11月29日号「新たな視点で魅力を発掘し、情報を発信 岩出市地域おこし協力隊着任」
     JR岩出駅前に観光案内所の整備を進めている岩出市。市が初めて募集した地域おこし協力隊も着任し、“…
  5. リビング和歌山2025年11月22日号「昨年よりさらに進化!冬の街を彩る130万の光 KEYAKI Light Parade」
     今年も、けやき大通りがキラキラとした光と笑顔に包まれる季節がやってきます。今年で3年目となる冬の…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/12/18

    2025年12月20日号
  2. 2025/12/11

    2025年12月13日号
  3. 2025/12/4

    2025年12月6日号
  4. 2025/11/27

    2025年11月29日号
  5. 2025/11/20

    2025年11月22日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る