ワークスタイル -これからの“働く”を考える-
今日も社会を動かす場所で
- 2025/10/16
- フロント特集
近年、警備の仕事で女性の活躍が目立つようになり、女性警備員が全体の7・3%を占めるまでに増えています(2024年警察庁調べ)。エッセンシャルワーカーとしても社会に欠かせない存在となった警備業界。和歌山県内で働く女性2人を取材しました。
何事も心の持ちよう
知識と技術を高めていきます

警備員歴5年
谷本 亮子さん(ジェイバードTMS)
副業のつもりが次第に楽しく
交通誘導などを通して学ぶ日々
警備の仕事を選んだきっかけは
ー最初は週2日程度の副業として勤務しました。シフト制で、時間の融通が利くのも私にとっての利点でした。
初めての業務は
ー当社は、交通誘導、雑踏(イベント会場など)や施設の警備を請けていて、初業務は工事現場の交通整理でした。
混雑時などの車や人の誘導は想像以上に難しいのでは
ーそうなんです。旗一つ振るにしても型やルールがあります。そのため、新人は20時間以上の研修を受けなければなりません。片側交通の仕組みや無線機の使い方といった誘導の基礎など、覚えることだらけです。
初めて誘導したときのことを覚えていますか
ートラックなどの大型車が私の誘導で止まってくれるかどうか不安でした。現場や道行く人の温かい声も励みに。日々学ぶことが多く、「次はこうしよう」と考えるうちに、次第に仕事が楽しくなり、5年を迎えました。
誘導の際、心掛けていることはありますか
ー「お待たせしてすみません。どうぞ」という気持ちで行うことです。
今は内勤の仕事も
ー途中から週5日勤務になり、現場に加え、総務や営業の仕事も任されるようになりました。今は内勤がメインですが、人手が足りないときは現場にも駆けつけます。
いつでも出動できる準備が必要ですね
ーヘルメットや無線機などの道具一式は車に積んでいます。現場に出るときは、おにぎりとバナナも忘れません!

新規の受注や今受けている業務の段取りなど電話で対応

交通誘導用の道具と
必須のランチ
女性が求められる場は多い
環境を整え、次の世代へ
内勤の業務は何を
ー取引先との打ち合わせや請求書の処理、従業員の管理などをしています。他にも、毎日、皆が現場に出られるよう、営業活動も注力しています。
スキルアップができる環境だと
ーはい。警備業は4種類に区分されています。私は3年前に、国家資格「警備業務検定」の雑踏警備・交通誘導警備の区分で2級を取得しました。女性だからといって「できない」「分からない」とは言いたくありません。専門的な知識と技能を資格として身に付けることで、何にでも対応できるようにしておきたいと思っています。
気の抜けない日々かと。リラックス法は
ー買い物です。かわいいものが好きで、ついつい手が…。あとは、入浴剤を入れてお風呂に入ること。先日も知人からもらったラベンダーの香りの入浴剤を入れました。
女性警備員の必要性を感じる場面はありますか
ーもちろん。例えば、施設内の女性更衣室やトイレなど、女性警備員の対応が求められる場面が多々あります。
今後の目標は
ー女性警備員がもっと増えるように、日々の気付きから働きやすい環境づくりを進め、次の世代へとつなげていきたいと思っています。何事も心の持ちよう。今後、さらに上位の資格にも挑戦し、多くの人の役に立てるよう、自分自身も高めていきたいです。

業務外の会話も信頼関係の土台に(長田健嗣代表取締役(左)と谷本さん)
見守る仕事が誰かの支えに
巡回中の子どもとの会話
ほっこりとする瞬間です

警備員歴2年半
太田 有子さん
(和歌山警備保障)
変化を敏感にキャッチする意識
大変な場面がある一方、達成感が
入社して2年半になるそうですね
ーはい。警備業界は未知の世界でしたが挑戦してみたいと思い、求人サイトから応募しました。
今、どのような業務を担当していますか
ー私は商業施設を担当しています。入館確認や防犯カメラの監視、店内の巡回、従業員入り口の施錠・解錠などを行っています。
仕事に慣れるまでに時間はかかりましたか
ー最初は何をしてよいのか分からず、周囲の人たちに迷惑をかけていないかばかり気にしていました。でも、経験を重ねるうちに、「今、自分は何をすべきか」が分かってきました。臨機応変に対応しなければならないことも多く、大変な場面もありますが、その分達成感もあります。モットーは「何でも任せて」です。
印象に残っている出来事はありますか
ー営業中に冷凍庫の異常でアラームが鳴ったことがありました。設備担当者にすぐ連絡し、スムーズに対処できました。そうした対応を任されること自体がやりがいにつながっています。
巡回ではどんなことに気を配っていますか
ー毎日、何かしらの変化があります。異音や破損など、「これって今までこうだった? 違うよね」と、小さな変化も見逃さないよう、意識しながら巡回しています。
入館所では、さまざまな人と接する機会も多いですよね
ーそうなんです。顔見知りになる人も多く、ちょっとした世間話などで盛り上がることも。初めての人には行き先の案内をすることもあります。
買い物に来た客と接することはありますか
ー店内の巡回時に少し。体調の悪い人がいないかなども確認します。子どもに「警察官?」って聞かれることもあって、「警備員だよ」って笑いながら返すんです。ほっこりしますね。
業務で工夫していることがあれば教えてください
ー人よりも早く行動することです。早出の日は、早朝からトラックで荷物を運んでいる人たちが待っていることがあります。できるだけスムーズに中へ入ってもらえるよう、自分もできる限り早めに出勤するように心掛けています。

施錠・解錠の確認は複数回重ねます
勤務は早出と遅出の2交代制
毎日が新鮮に感じられる
シフト制で時間も不規則だと思うのですが
ーそうですね。午前6時~午後4時、午後4時~深夜1時の2交代制です。私は、遅出の日が意外と好きです。基本、翌日が休みなので「何をしようか」など考えるだけで気分が上がりますよ。
施錠業務は緊張しそう
ーめちゃくちゃしますよ。ドアの前で何度も確認し、それでも「締めたかな」「館内に人が残っていないかな」と心配で。帰る準備をした後、もう一度巡回して確認することが多々あります。
仕事以外でのリラックス法は?
ー猫と遊ぶことです。とてもかわいくて、本当に癒やされます。それと、馬が好きで。頻繁には行けませんが、競馬場に「推し」の馬を見に行くこともあります。いつか北海道の牧場まで合いに行くのが夢です。
仕事の魅力を感じる瞬間はどんなときですか
ー当たり前かもしれませんが、同じ一日はなく、いろいろなことがあり、毎日が新鮮に感じられるところです。これからも、この仕事を続けていくために、資格を取るなどスキルアップも考えていきたいです。

巡回時は、困っている人がいないか、設備に異常がないかなど、注意を払います

みつ(雄)とのひとときが癒やしに
多様な人材で柔軟にできる環境へ

和歌山県警備業協会
会長 北 豊秋さん
警備業が世間に認識され始めたのは、1964年の東京五輪がきっかけです。現在、全国の警備業者は1万社以上、警備員は約59万人。警察官と自衛官を合わせた数を上回る規模です。
警備業は都道府県公安委員会の認定を受けることで、営業が可能になります。業務内容は施設警備、雑踏警備、交通誘導、身辺警護の他、空港や原子力発電所などの重要施設では、高度な知識・能力を持つ専門人材が求められます。
また、各分野に応じた資格制度も設けられています。例えば、高速道路での交通誘導では「交通誘導警備2級」以上の有資格者の配置が義務付けられています。さらに、1級取得者は、現場責任者として活躍でき、指導者の道も開かれます。知識と技術を磨くことで、キャリアアップもできるのです。
最近は、女性警備員の活躍が注目されています。細やかな気配りや柔らかな対応は安心感を与えます。女性専用エリアの案内や巡回など、女性警備員だからこそ対応できる業務も多くあります。警備員自体の需要が高まる中、多様な人材が加わることで、現場はより柔軟に対応できる環境へ進化しています。