第5回 杉野原の御田舞(おんだのまい) 〜舅(しゅうと)と聟(むこ)〜

稲作の生産過程を演じ、神仏に祈願

杉野原の御田舞〜舅と聟〜

本尊の前で舞う舅と聟、田植子

曲がりくねった山道を抜けると、頭上に空が広がります。有田川の中流に位置する有田川町杉野原地区(旧清水町)で、室町時代から受け継がれているのが「杉野原の御田舞」です。かつて高野山領だった有田川沿いの正月行事の特徴で、高野山に伝わった宗教文化の影響が色濃いといわれています。由来に諸説はあるものの、「延年(えいねん)」から発達した田遊びの一つとされ、年の初めに一年間の稲作の生産過程を模倣して演じ、その年の五穀豊穣(ほうじょう)を神仏に祈願します。

保存会の保田隆さん、松本博光さん、松浦さん(左から)

保存会の保田隆さん、松本博光さん、松浦さん(左から)

山の斜面に沿って冷気が流れ込み、吐く息が白くなる1月、地区の住民たちが集まり、祭りの練習が始まります。演者の経験を持つ「杉野原の御田舞保存会」会長・松浦金三さんは、「うたやせりふ、所作は、人から人へと継がれてきたので、原文は明治からのものしか残っていません。京言葉が多く、衣装の烏帽子(えぼし)や小刀、着物などからも都の雰囲気を感じます。でも、役によっては覚えるのが大変。動きが激しく、体力勝負です」と話します。

錫寺阿弥陀堂

舞台となる錫寺阿弥陀堂

祭り当日、開演太鼓を合図に、演者などの一行は氏神の河津明神まで御渡りし、拝殿前で太鼓に合わせて、くわを打ち「春鍬(はるくわ)の舞」を奉納。その後は、隣接する雨錫寺(うじゃくじ)阿弥陀堂が舞台。ふんどし姿の男性が、お堂に据えられた大火鉢「紫燈(さいとう)」を中心に円陣を組み、太鼓の謡に合わせて、はやしながら勢いよく回る裸苗押(はだかなえおし)が行われます。
周囲が熱気を帯びてきたころ、舞台袖から本尊に向かって「太鼓」、くわを持った「舅」「聟」「田刈(たかり)」が登場。御田舞が始まります。舞は舅が聟に、春田打ちから田起こし、収穫、もみすりまでの二十余りの工程を教えるもので、紋付きはかま姿でうたう「座謡(ざうたい)」や、子どもたちの舞「田植子(たうえこ)」も見どころの一つです。

舞台となるお堂の天井は青ザサと米の穂を表現した削り花、本尊前は和紙を染めて作った椿の花や米・豆など五穀で描いたえとの絵馬で装飾。松浦さんは「お堂は見物客やカメラマンでいっぱいになります」と笑顔。いにしえの人たちの思いや文化はしっかりと現代に引き継がれています。
次回は3月。(続く)

【祭り情報】

日時 2月11日(祝)
場所 雨錫阿弥陀堂(有田川町杉野原)
内容 13:00 河津明神へ御渡り後、御田舞

※隔年で開催

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年4月26日号「景色やグルメ、レジャーをとことん楽しむ GWは紀美野町にお出かけ」
     山に囲まれ、自然豊かな景色が広がる紀美野町。最近は飲食店などが増え、人気のスポットになってます。…
  2. プレミア和歌山認定品の毬玉アクセサリーや天然石や真鍮のアクセサリー、ビーズ・スパンコール刺繍の…
  3. リビング和歌山2025年4月19日号「高品質ブランド由良にんにく」
     一度食べたらニンニクの印象が変わるという「生ニンニク」。とれたての新鮮な香りやじっくり加熱すれば…
  4. リビング和歌山2025年4月12日号「地域を変える! サテライトやシェアオフィスからビジネス創出へ」
    多様な働き方が求められる現在、本来のオフィスとは離れた場所で仕事ができる「サテライトオフィス」など…
  5. リビング和歌山2025年4月5日号「関西パビリオン・和歌山ゾーンの魅力に迫る いよいよ開幕、万博へ!」
     開幕に向け、注目が高まる“大阪・関西万博”。会場に足を運んでみないと分からない楽しさやワクワクが…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/4/24

    2025年4月26日号
  2. 2025/4/17

    2025年4月19日号
  3. 2025/4/10

    2025年4月12日号
  4. 2025/4/3

    2025年4月5日号
  5. 2025/3/27

    2025年3月29日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る