自然界の脅威に備えよう
人と自然の“キケンな遭遇”
出合ったらどうしよう!?

リビング和歌山2025年8月30日号「自然界の脅威に備えよう 人と自然の“キケンな遭遇” 出合ったらどうしよう!?」

 秋は川や山などへ出かける機会が増える季節です。もしも「クマ」や「スズメバチ」などの危険な生き物たちに遭遇してしまったら? 出合わないための工夫や、正しい知識と備えで、自分や家族を守りましょう。

和歌山県 自然環境課 課長補佐 内西浩一さん

和歌山県 自然環境課 課長補佐
内西浩一さん

和歌山県にも生息
増加するツキノワグマ

近年、新聞やテレビでクマによる事件や事故が話題になることが増えています。北海道に生息する、体が大きく力も強いヒグマに比べ、本州に生息するツキノワグマは比較的おとなしいとされ、和歌山県では、これまでに人的被害はほとんど報告されていないものの、クマの目撃情報は年々増加傾向にあります。昨年度の県内のクマの目撃件数は合計180件。前年度と比べて、3・75倍に増えています。今年は4月~7月末の時点で29件ありました(市町村別の目撃情報件数は、和歌山県のホームページ(ツキノワグマ | 和歌山県)で毎月更新されています)。

ツキノワグマの個体の増え方やその背景について、和歌山県自然環境課課長補佐・内西浩一さんに聞きました。「平成10年に約180頭だった紀伊半島のツキノワグマは、令和6年には約467頭にまで増加しています。希少動物として保護されてきたことが、目撃情報の増加の一因とも考えています」と話します。ブナやミズナラなどのドングリ類が不作の場合、人里近くに出没する可能性が高まります。

県では今まで、ツキノワグマの保護政策が行われてきましたが、現在「第二種特定鳥獣(ツキノワグマ)」の管理計画の制定を進行中(8月14日発表)。9月16日まで、県民の意見を募集しています(詳細は「和歌山県ホームページ」で)。

県内でクマを目撃したり、足跡などの痕跡を見つけたら、①場所②日時③大きさ④移動方向⑤何をしていたかなどの情報を、最寄りの市町村か県振興局健康福祉部、または警察に電話を。

✖ クマに出合った時のNG行動

〈子グマに近づく〉
●母グマは子どもを守るため、非常に攻撃的になることがある

〈大声を出す〉
●クマが驚いて、攻撃に転じる可能性がある

〈走って逃げる〉
●クマが驚く原因となるうえ、時速40km以上で走るため、人間では逃げ切れない

〈撮影のためにフラッシュをたく〉
●クマは強い光に驚き、興奮することがある

● クマへの対処法 クマの生態を知って被害を防ごう

〈クマに出合ったら〉
●クマから目を離さず、背を向けずにゆっくりと後退し、落ち着いてその場を離れる

〈クマに襲われそうになったら〉
●両腕で首を守り、うつ伏せの姿勢をとって身を守る
●クマスプレーを使用

クマに自分の存在を知らせることが大事! カラビナ付きの「クマよけ鈴」

〈クマに出合わないために〉
●クマよけ鈴や携帯ラジオなど、音の出るものを身に着ける
●できるだけ複数人で行動する
●事前にクマの目撃情報を確認し、危険な場所を避ける

市町村別のクマ目撃情報件数は、こちらから確認できます︎

秋の野外は要注意!?
危険生物から身を守る知恵

 山や草むら、公園など、身近な自然に潜む危険。スズメバチやヘビ、マダニによる被害は毎年全国で報告されています。こうした生き物に遭遇したとき、どう行動すればよいのでしょうか。被害を防ぐポイントと、万一の対処法を知っておきましょう。

和歌山県立自然博物館の学芸員 高田賢人さん

和歌山県立自然博物館の学芸員
高田賢人さん

スズメバチ

オオスズメバチはオレンジと黒のしま模様で、足が黒いのが特徴
写真提供=和歌山県立自然博物館

 8月以降は働きバチの数が急増し、スズメバチの活動が活発に。刺されるとアレルギー反応によりアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があり、特に2回目以降の刺傷では重症化しやすく、命に関わることも。

〈刺されないために〉
●長袖・長ズボンや帽子を着用し、 できるだけ露出を減らす
●巣に近づかない
●手で払うなど、急な動きを避ける

〈刺されたらどうなる?〉
●激しい痛みが出現し、赤く腫れる
初めて刺された場合は通常は1日以内に症状は治まります。ひどい 場合は、刺されて30分~1時間で呼吸困難、腹痛、意識消失や血 圧低下などを生じて、死に至ることもあります

〈刺されたらどうする?〉
●針が残っていたら清潔なピンセットで抜く
●ポイズンリムーバーで毒を吸い取る
複数回刺された場合やアレルギー反応が
見られる場合は、アナフィラキシーショックを 引き起こす可能性があるので、すぐに救急車を呼ぶなどの対応を

100円ショップなどでも購入できるポイズンリムーバー︎

〈ハチの巣の駆除〉
巣のある土地や建物の所有者または管理者の負担で駆除業者に依頼するなどして駆除します。業者によって料金に格差があるので、複数の業者から見積もりを取り、料金を確認してから依頼することをおすすめします。

スズメバチの巣は球状で、薄茶色のまだら模様

ハチの巣の駆除に関する問い合わせはこちら
和歌山市 073(488)5113
健康局 健康推進部 生活保健課 環境保健班

海南市と岩出市では無料で防護服の貸し出しを行っています(窓口で申請、1回の申請で1泊2日の貸し出し、数に限りあり、各市内在住者に限る)

海南市民 073(483)8456
海南市役所くらし部 環境課
岩出市民 0736(62)2141
岩出市役所 生活環境課

マダニ

タカサゴキララマダニ(模型)

 登山道や草むら、庭や畑などで見られます。体長は1cmに満たないほどですが、吸血すると2倍以上に大きくなります。刺されても痛みなどの自覚症状はほとんどなく、吸血されていることに気付かないことも。

〈刺されないために〉
●長袖・長ズボン、長靴を着用する
●防虫スプレーを使用する
●上着は外で脱ぎ、マダニがついていないかを確認する
●帰宅後はすぐにシャワーを浴びて、体をよく洗い、マダニがついていないか確認する
●着用していた服はすぐに洗濯する
●ペットを飼っている場合は、ペットにもマダニがついて いないか確認する

〈刺されたらどうする?〉
●無理に引き抜こうとせず、医療機関(皮膚科など)を受 診する
※マダニの一部が皮膚に残って化膿したり、感染症のリスクが高まる 可能性があります
●刺された後、約2週間は体調の変化に注意し、発熱な どの症状が出た場合は医療機関を受診する

〈和歌山県で注意すべきマダニの感染症〉
●重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
発熱、消化器症状(はき気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主徴とし、時に、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出 血症状などを伴います
●日本紅斑(はん)熱
高熱、全身の発疹、マダニに刺された部位にできる刺し口が特徴

身近な毒ヘビ

(左)ヤマカガシ (右)ニホンマムシ(和歌山ではハビと呼ばれています)
写真提供=和歌山県立自然博物館

 特に注意すべきは、山や川辺など身近にいるこの2種。平地から山林に生息し、水辺を好むため河川や田畑、草むらでも見られます。臆病で人を避けますが、触れたり踏んだりすると攻撃されることがあります。

〈かまれないために〉
●長袖・長ズボン、ゴムの長靴を着用する
●やぶの中などヘビがいそうな場所は、長い棒などで前方をかきわけながら進む
●見つけたらすみやかにその場を離れる
※ヘビが攻撃できる範囲は限られており、標準的なマムシの場合約50㎝です

〈かまれたらどうなる?〉
●かまれた直後から数分後に激しい痛みが現れ、大きく腫れる
●吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛、発熱、下痢、視力の低下、しびれ、運動障害、血圧低下、意識障害、腎不全、溶血など

〈かまれたらどうする?〉
●ポイズンリムーバーで毒を吸い取る
●傷口を洗い、安静を保ちながら医療機関へ
※1時間以上経過しても症状が出ない時は、毒素が注入されていない可能性があります

野犬

 「近年特に増えたというわけではなく、特に雑賀崎や加太には昔から一定数住みついています。人が侵入しにくい森林があり、人里も近いからでしょう」と、和歌山市動物愛護管理センターのスタッフは話します。

〈野犬に出合ったら〉
警戒心が強いので容易には人になつかず、近づいてくることも少ないです。むやみに近づいたり、走って逃げたりしてはいけません。刺激を与えないように距離を取りましょう。

〈野犬を増やさないために〉
●エサを与えない
●ペットを無責任に放棄しない
●生ごみやペットのエサを放置しない

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