近畿の公立大学で初めて
県立医科大学 薬学部が開設

和歌山市の中心地、伏虎中学校跡地に建設が進められてきた和歌山県立医科大学薬学部が完成しました。4月6日には入学式を迎え、100人の学生たちが新しいキャンパスで学び始めます。

今年度の一般選抜は2・6倍
地元の進学希望者の受け皿に

和歌山市役所の東側にある伏虎中学校跡地に、新しく建てられた「和歌山県立医科大学薬学部伏虎キャンパス」が、姿を現しました。4月1日に待望の開設、近畿圏内の公立大学では初めての薬学部が和歌山県に誕生しました。

キャンパスの敷地面積は約6900平方メートル、建物は地上11階と地下1階の南棟と、地上5階建ての北棟から成り、それぞれの3~5階はガラス張りの接続ブリッジでつながる特徴ある構造。用地は和歌山市が無償で貸与し、建築費用は約112億円がかけられました。

和歌山城を望む南棟には研究室や実験室、実習室などが、北棟には大・中・小の講義室や体育館、食堂などがあり、接続ブリッジにも図書室や学生の学習を支援するラーニングコモンズを配置。その他、自習室に加えてトレーニングルームやラウンジなどのリラックススペースも多彩に設け、快適に学生生活を過ごせる環境を整えています。

和歌山県立医科大学の薬学部開設にあたっては、県薬剤師会や県病院薬剤師会などの要望を受け、2015年に計画がスタート。その背景には、県内薬剤師の平均年齢が全国で最も高く(2018年厚生労働省統計)、和歌山市を除く紀北エリアや、特に紀南エリアに薬剤師が少ない現状があります。また、県内高校出身者が県外の大学・短大に進学する割合が2018年度までは全国1位、ここ数年の大学誘致の成果もあって2020年度には3位になりましたが、新学部創設はこうした学生の県外流出を防ぐ一役を担うと期待されます。

薬学部の定員は1学年100人。このうち学校推薦型選抜の定員が約30人で、半数の15人程度を県内枠とし、卒業後2年間は県内の病院・薬局で研修することを義務付けています。今年度の入学試験では、推薦型選抜に74人が志願(約2・5倍)、一般選抜(定員70人)には185人が志願(約2・6倍)。合格者100人が第1期生として4月6日(火)に入学します。

 

大講義室

北棟の1~2階。学部内の最も大きな講義室で360人を収容。エントランスや内部には紀州材が使われ、やわらかな光が差しています

 

ラーニングコモンズ

接続ブリッジ3階。学生たちの自主学習やグループ学習をサポート。上階の4・5階には図書室があります

 

実習室

南棟にある実習室の一部屋。約120人が一度に実験できる広さを確保しています

 

グループ研究室

接続ブリッジの一角にあるガラス張りのオープンなスペース。グループ学習に活用されます

 

自習室

校舎内には随所に自習スペースがあります。写真は接続ブリッジにある自習室。和歌山の豊かな緑と海の青、空をイメージした爽やかな印象の装飾

 

中講義室

北棟には、180席と130席の2つの中講義室があります。この他、120席の情報処理室、60席の小講義室も

 

屋上

接続ブリッジの屋上は憩いの場所。薬学部らしく、花壇には薬草が植えられ、大学の校章に描かれる曼陀羅華(まんだらげ、チョウセンアサガオ)をかたどった五角形のスツールが置かれています

レリーフ

校舎の壁面にあしらわれているレリーフ。薬草の花々を表現しています

 

世界を視野に入れた医療人に
薬学部長インタビュー

和歌山県立医科大学薬学部
太田茂学部長

太田学部長から、読者のみなさんにメッセージ。

世界とつながり、地域に貢献する
ファーマシスト・サイエンティストを育成

薬学部が新設されることにより、和歌山県立医科大学は、すでにある医学部、保健看護学部と併せて「医・薬・看」の3学部体制となり、医療系総合大学として新たな歩みを進めます。

「薬学部としては、地域医療に貢献すべく、即戦力として地元和歌山で活躍できる薬剤師の育成が大きなミッション。地域医療を学ぶ科目を設け、体験型の実習を取り入れながら、高度な知識を持った医療人を育てるプログラムを準備しています」と話すのは、薬学部長の太田茂教授。また、医療系総合大学となる利点を生かして、患者の立場になって物事を考える倫理観や医療人としての使命感を養う“ケア・マインド教育”は、3学部合同で行われます。

近年、進歩が著しい薬剤師業務。同学部が目指す薬剤師像は、こうした日々の進化をリードできる国際的な視野を持った“ファーマシスト・サイエンティスト”(ファーマシスト=薬剤師、サイエンティスト=科学者)。「本来、薬剤師は科学者なのですが、あえて“サイエンティスト”と掲げることで、科学的な根拠を重視した薬剤師業務を実践でき、しかも、グローバルな視点で情報をキャッチし、また自身の研究成果も世界に向けて発信できるような薬剤師を育てたい。IT技術が進み、どこにいても世界とつながれる時代。和歌山にいながらにして、世界を舞台に活躍できる人材に」と、太田学部長は話します。

そのため、“研究力”と“語学力”の養成に力を入れているのが同学部の特徴。学生はすべて3年次後期から卒業まで「特別実習」として研究室に所属。さまざまな課題発見・解決能力を磨きながら、卒業研究につながる薬学研究に携わります。英語教育は卒業までの6年間を通したカリキュラムが組まれ、世界の科学者たちとコミュニケーションできるツールとして英語を活用できる語学力を身に付けます。

「現在、医療現場では医師を中心に看護師や薬剤師、また理学療法士など、さまざまな専門職がチームを組んで患者さんの治療に携わります。そのチーム医療の一員としても、しっかりとした科学的な裏付けある薬学の専門的な知識を持って、チームで存在感を発揮できる薬剤師を育てたいと思います」と、力を込める太田学部長。

研究分野においては、薬学部開設と同時に、紀三井寺キャンパスに「次世代医療研究センター」を設置。薬学部はこのセンターを拠点に、医学部や保健看護学部、附属病院とともに、また、企業などと合同で、創薬や臨床研究を行っていくことが決まっています。

まもなく学生100人が薬学部に入学。6学年そろうと学生は600人、教員は60人に。和歌山市の中心地に人の流れが生まれ、にぎわいの創出にも。また、“薬学”という新たな専門分野の研究機関が誕生したことで、将来に向けた和歌山の医療水準のレベルアップにも期待がかかります。

紀三井寺キャンパスに完成した「次世代医療研究センター」

和歌山県立医科大学薬学部

住所 和歌山市七番丁25-1
電話 073(488)1843
入学定員 1学年100人
修業年限 6年
収容定員 600人
取得学位 学士(薬学)

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