雹で傷ついた梅を生まれ変わらせ
農業の“在り方”を変えていく
課題解決の第一歩に。クラウドファンディングで支援を呼びかけ

自然災害に負けない農業体制へ

「傷はあっても品質は一級品です」と、山本将志郎さん。南高梅の果肉のやわらかさ、フルーティーな香りを生かし、商品開発します

 梅の一大産地として、圧倒的な収穫量を誇る和歌山県。全国の収穫量の約6割を占める“梅王国”がいま、自然災害により危機に直面しています。

農林水産省によると、開花前の気温上昇により、2024年の収穫量は2万9700トンと、前年比の約4割という凶作。さらに2025年は、4月にみなべ町・田辺市を雹が襲い、落下したり、傷ついたり、売り物にならない梅が続出。甚大な被害を及ぼしています。

「このままでは、梅農家が立ち行かない」と、梅の加工品を製造・販売する「うめひかり」代表・山本将志郎さんは、傷ついた梅を“傷物価格の2倍”で買い取ることを決意。今年5月にクラウドファンディングを立ち上げ、支援を募っています。

集まった資金は、傷ついた梅の買い取りと、それらを活用した商品開発に充てられます。「まずは基盤のない新規就農者から」と、みなべ町・田辺市の新規梅農家6軒から買い取り、地元の梅干しメーカーと共同開発する果肉を生かした「梅肉チップス」や、秋田県の醸造所と生み出す料理に合う「甘くない梅酒」、料理家とコラボレーションした調味料「お肉に合う完熟南高梅とぶどう山椒(さんしょう)」の全3品を商品化。2025年中に販売スタートさせることを目標にしています。

山本さんは、「今回のクラウドファンディングは、雹被害の支援だけではなく、農業課題の根本解決の第一歩」とも話します。現在、加工用に収穫された梅は、梅干しに販路が片寄っており、“きれいな梅”しか売れない状態。同じ方法で農業を続けていても、今回のような自然災害が起こったとき、低価格でしか梅を販売できず、農家の収入は不安定です。「若い農家が増えないのは、そこに理由があると私は思っています。なので、農業をきちんと稼げる業界にしたくて」と。梅農家の三男でもある彼が「うめひかり」を創業したのも、梅の新たな販路づくりと、加工品を通して梅の魅力をアピールし、和歌山の梅をさらに“ブランド化”させるため。若者らしい新たな目線とアプローチで、今後も農業を盛り上げていきます。

傷ついた梅。山本さんの実家の農園は9割が傷物に


7月28日(月)まで、クラウドファンディングで支援を募っていますhttps://camp-fire.jp/projects/845104/view

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年8月30日号「自然界の脅威に備えよう 人と自然の“キケンな遭遇” 出合ったらどうしよう!?」
     秋は川や山などへ出かける機会が増える季節です。もしも「クマ」や「スズメバチ」などの危険な生き物た…
  2. リビング和歌山2025年8月23日号「あなたのその行動が働きを鈍くしているかも 免疫細胞のはなし」
     私たちが健やかに過ごすために、身体に備わっている〝免疫〟。忙しい毎日の中でついやってしまう行動が…
  3. リビング和歌山2025年8月9日号「語り継ぐ体験、記録で伝える 戦後80年、未来へ残す記憶」
     1945(昭和20)年8月15日の終戦から、今年で80年を迎えます。戦争を直接体験した人々が少な…
  4. リビング和歌山2025年8月2日号「専門店が続々登場、美と健康をサポートするスーパーフード ブーム再燃!アサイーボウル」
      まだまだ暑さが続く今年の夏。涼しく冷んやりと、そして健康に乗り切るためにアサイーボウルはいかが…
  5. リビング和歌山2025年7月26日号「進化する「北ぶらくり丁」」
     レトロな雰囲気のなかに、遊び心と新しさが交錯する北ぶらくり丁が活気にあふれています。アーケードの…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/8/28

    2025年8月30日号
  2. 2025/8/21

    2025年8月23日号
  3. 2025/8/7

    2025年8月9日号
  4. 2025/7/31

    2025年8月2日号
  5. 2025/7/24

    2025年7月26日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る