家具づくりに魅了された、東ちあきさん
女性初! 紀州箪笥の伝統工芸士に

リビング和歌山9月3日号「東ちあきさん 紀州箪笥の伝統工芸士」

女性として初めて紀州箪笥(たんす)の伝統工芸士(塗装部門)に認定された、東ちあきさん。明治から続く老舗「家具のあづま」で伝統を守りながらも、技術を革新し、夫婦で世界に通用する新しい製品づくりに取り組んでいます。

紀州箪笥として初の女性伝統工芸士となった、東ちあきさん

紀州箪笥として初の女性伝統工芸士となった、東ちあきさん

子どもたちが家業を応援
伝統技術で新ブランドを開発

2005年の結婚を機に滋賀県から紀の川市に移住した、東ちあきさん(39歳)。夫の福太郎さんが経営する老舗家具メーカー「家具のあづま」で13年間職人として働き、今年、「紀州箪笥(たんす)」(塗装部門)の伝統工芸士に認定されました。伝統工芸士の登録は県内で58人目で、紀州箪笥としては初の女性の認定となりました。

伝統工芸士とは伝統的工芸品産業振興協会が実施する認定試験に合格し、登録を受けた人のこと。製造に関する知識や技法の向上を図り、産業の振興に貢献することを目的にしています。

紀州箪笥は江戸時代に製造技術が確立。明治から大正、昭和にかけて婚礼の調度品として重宝されました。材料は「桐(きり)」。100分の1㍉の違いにこだわり、製造には高い技術が求められます。天然の防虫効果と密閉性に優れ、手入れをすることで、何世代にもわたって使うことができるといいます。

職人の技術の粋が結集した、紀州箪笥

職人の技術の粋が結集した、紀州箪笥

夫の福太郎さんは「家具のあづま」の5代目。同じく紀州箪笥(総合部門)の伝統工芸士です。ちあきさんは結婚するまでは京都府の服飾メーカーで勤務。デザイナーとしての夢をきっぱりあきらめて、紀の川市へ。

「家具づくりの経験はありませんでしたが、夫のアシスタントとして最初は10分、30分ほど手伝っていたのがだんだんと長くなって…。すっかり桐を使った家具づくりに魅了されました。特に塗装作業はお化粧と同じで、仕上げになくてはならないものです。完成した製品は子どもと同じです。やがて夫と同じ伝統工芸士になりたいと思い、まずは塗装部門を目指して技術を磨きました」と、ちあきさん。

紀州箪笥の塗装は、刈萱(かるかや)の草の根を束ねたもので表面を薄く削った後、京都の山科で採れる天然の石「砥(と)の粉(こ)」を細かくした塗料を2~3回塗り重ねていきます。塗料はすぐに乾いてしまうため、正確さとスピードが求められます。

「最も緊張するのは最後の塗りです。この時ばかりは家事は子どもたちに頼んで、工場にこもりっぱなしになります。家族で支え合えてきたからこそ、技術が身に付けられたと思います」と振り返ります。現在は製造する家具の塗装のほとんどを手掛けるまでに。

伝統技術を守る一方、東さん夫妻は、「大型家具店の台頭、利用者の生活スタイルの変化で、時代に合わせた進化も必要」と、桐の魅力を伝える新しい雑貨づくりに取り組んでいます。

ちあきさんが使う塗装の道具には、時間と労力が染み込んでいます

ちあきさんが使う塗装の道具には、時間と労力が染み込んでいます

大切な人の生活を見守る製品づくりを

培った技術を生かして商品開発
桐の魅力を引き出す新ブランド

「新しい時代に求められる家具づくり」として、軽くて丈夫、調湿や燃えにくさ、防虫効果など、桐の特長を生かした雑貨ブランド「ME MAMORU(みまもる)」を立ち上げました。

テーブルウエアから、和食器、ロックグラス、ベビー用品まで多彩にそろえ、20年以上寝かした貴重な桐も使われています。紀州箪笥で培った伝統的な技術を使い、劣化を防ぐために、ちあきさんの塗装の技も駆使されています。製品には「大切な人の安全や生活を見守るような製品でありたい」という、ちあきさんからのメッセージが込められています。

総桐漆仕上げ ジュエリーボックス

総桐漆仕上げ
ジュエリーボックス
(19万8000円)
引き出しごとに、使い分けできるのが便利。漆を使っているので、風合いは独特

ロックグラス乾漆粉

ロックグラス乾漆粉
(かんしつこ)仕上げ
(2万2000円)
桐をくり抜いて仕上げた重さ40gのグラス

また夫の福太郎さんは独自の技術を活用して、新しい製品を次々と世に送り出します。例えばトヨタ自動車と全国のレクサス販売会社が主催する、「レクサス・ニュー・タクミ・プロジェクト2017」に和歌山県の「匠」として選出され、1本の木から切り出して、厚さ約1㍉、重さわずか約40㌘という「桐のビア杯 鳳凰(ほうおう)」を作り上げました。これは福太郎さんにしかできない技術。このビア杯は、プロジェクトスーパーバイザーの小山薫堂さんに絶賛され、この年のグランプリを獲得しました。

桐のロックグラス

桐のロックグラス
(1万1000円)
口当たりを良くするために厚さ1mmまでに研磨したグラス

東さん夫妻は伝統技術を守りながら、それを現代の製品づくりに取り入れることで、新たな伝統をつくっています。そしてそれを若い世代につなげようとしています。

伝統は、しがみつくものではなく、進化するもの

手掛けた製品は、毎年フランスで開催されている世界最高峰ともいわれるインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ」にも出展しています。伝統工芸で培った技術は、もはや世界レベル。紀州箪笥の伝統的な技術を生かした製品を開発し、和歌山から世界へと認められています。

また、後進の指導にも積極的で、現在「女性だけでつくる桐箪笥プロジェクト」を進行中。リーダーはもちろん、ちあきさん。

「伝統工芸に魅力を感じてもらえる若い世代は、地域にとっては宝物です。弊社の若い女性スタッフとは、すごく共鳴して、いい雰囲気で取り組めています。伝統は、しがみつくものではなく、進化するものです。世界に認めてもらえる技術を次世代につなぐ役割を果たしていきたいですね」と二人で口をそろえます。

「家具のあづま」のショールームには、「ME MAMORU」の商品も展示・販売

「家具のあづま」のショールームには、「ME MAMORU」の商品も展示・販売

桐のククサと カップが置ける桐のプレート

桐のククサ(1万923円)と
カップが置ける桐のプレート
(1万1000円)
ククサとはフィンランドに伝わるマグカップのこと。桐でできているので、驚くほど軽く、口当たりも柔らか

カッティングボードと桐のカッティングボード

カッティングボード(6600円)と
桐のカッティングボード
(溝あり 9350円)
天然の柿渋を使用し、はっ水効果が高く、肉、魚を切った後も簡単に洗えます

家具のあづま

家具のあづま

ショールーム紀の川市名手市場278
本社・工場紀の川市名手市場1169-1
電話番号0736(75)3600
営業時間午前9時〜午後6時
定休日日曜・祝日
HPhttp://azuma-kiri.jp/

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