−第6回−文化財 仏像のよこがお「所蔵者不明の盗難被害仏像」

所蔵者不明の盗難被害仏像

所蔵者不明の阿弥陀如来坐像全体

全国で仏像の盗難被害が発生しています。犯人は、普段から人のいない無住寺院を特に狙っています。オークションサイトの成長による売買方法の多様化・容易化と、骨董(こっとう)品ブームによる需要増加が相まって、不法に盗品を取り扱う古物商やブローカーも後を絶ちません。

所蔵者不明の阿弥陀如来坐像 頭部

和歌山県では2010年から翌年にかけて、60カ所の寺院で172体の仏像が盗まれる空前の被害が発生しました。犯人が逮捕され、換金先の古物商から転売前の仏像が警察によって回収されたものの、所蔵者が分からず返せない仏像が多数発生してしまいました。被害届は出したものの、写真が一枚もなく、どんな仏像があったのかも分からない地域が多く見られました。現在、それらの盗難被害仏像は県立博物館で保管し、所蔵者を捜しています。

今回紹介する阿弥陀如来坐像(ざぞう)もその一体です。像高55・8㌢、豪華な台座や光背も含めると約130㌢に達する大きさです。鋭いまなざしや張りのある肉身の表現など、平安時代中期の作風を示す仏像です。千年も前に作られ、今日まで伝わってきたにも関わらず、地域とのつながりを断ち切られ、その一切の歴史を奪われてしまった悲劇の仏像なのです。

伝来を知るための手掛かりは台座内側の銘文です。1787(天明7)年、「野上下津野」出身の真性(しんしょう)という僧が、台座と光背を補ったことが記されています。野上下津野は現在の海南市下津野ですが、同地域では仏像の盗難被害の届けはありません。周辺地域も含めて、この仏像について何かお気付きのことがありましたら、ぜひ博物館に知らせてください。

※和歌山県立博物館で4月19日(日)まで展示中
(和歌山県立博物館主任学芸員・大河内智之)

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年2月8日号「大阪・関西万博から南高梅を世界へ 未来につなぐウメ~話 」
     大阪市の夢洲(ゆめしま)で、今年4月13日(日)〜10月13日(祝)の半年間、開かれる日本国際博…
  2. リビング和歌山2025年2月1日号「エコでスマートな新常識 制服リユース 」
     高校生の制服や体操服などをそろえると、公立でも約7万円以上の出費が必要です。役目を終えた制服が新…
  3. リビング和歌山2025年1月25日号「あまみ・うまみが、ぎゅっと! 「下津蔵出しみかん」の季節です」
     年末に収穫したみかんを貯蔵庫で熟成させた後、翌年の1月下旬から出荷する「下津(しもつ)蔵出しみか…
  4. 和歌山県、旬の魚を訪ねて漁港巡り 生まぐろの水揚げ量日本一 那智勝浦漁港
     新年最初の「旬のさかなを訪ねて漁港巡り」シリーズでは、きれいな赤身で見た目もリッチな天然生まぐろ…
  5. リビング和歌山2025年1月11日号「合計73人に!全国の編集長がセレクト地元自慢の“おさかな”プレゼント!」
     毎年恒例の大人気プレゼント企画! 今回は、全国のリビングネットワークで2024年4月から実施して…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/2/6

    2025年2月8日号
  2. 2025/1/30

    2025年2月1日号
  3. 2025/1/23

    2025年1月25日号
  4. 2025/1/16

    2025年1月18日号
  5. 2025/1/9

    2025年1月11日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る