“もっと良くなるかも”“あったらいいな”の想像から始まる
地域の中で新たな風を生む「起業」

地域の中で新たな風を生む「起業」

働き方が多様化する中、地域資源の活用や地域課題の解決を目的に起業する人が増えています。今回は昨年、新たに起業した5人を紹介。2024年、新しいことにチャレンジしたいと思っている人が行動を起こすきっかけに!わかやま産業振興財団 「わかやま地域課題解決型起業支援事業」

課題解決や新たな市場創出など
夢やアイデアを行動に移す年に

“起業したい”“起業に興味がある”と思ったことは? 踏み出そうと思っても、成功する確信がなければ難しいと諦めてしまいがち。でも、どんなに有名で偉大な起業家も最初は初心者です。

 政府は2022年から、日本経済が力を取り戻すための一策として、5カ年計画でスタートアップ育成支援を強化しています。“地域・社会の課題を解決したい”“新しい市場をつくり出したい”など、夢やアイデアがあれば、今年こそ、動き出してみては!

 紙面では起業した人を取材し、きっかけや思いを伝えるとともに、和歌山県内の支援機関「わかやま産業振興財団」の岡京子さんと太田佳宏さんに起業に向けたポイントなどを聞きました。わかやま産業振興財団 「わかやま地域課題解決型起業支援事業」

映画を通して別世界に行けるような劇場
シネマ203 代表・高水美佐さん

シネマ203 代表・高水美佐さん「日本一小さな劇場です」とにこやかに話す高水美佐さん。大阪や東京の映画配給会社で長年、映画に携わってきた筋金入りの映画好き。約10年前、地元和歌山に戻ってからも、ぼんやりと映画に関わりたいとの思いがあったそう。転機はコロナ禍。足しげく通っていた各地のミニシアターに行くことができず、自宅で配信映画を観るように。「映画は内容だけでなく、観る空間も同時に楽しんでいると実感。映画を通して別世界に行けるような劇場をつくりたいと、自分の中のイメージが明確になりました」と言います。

 場所に選んだのは、昭和時代、数多くの映画館があった和歌山市内本町エリアの商店街。上映されるのは、アメリカ、フランス、フィンランドなど、大劇場ではあまり公開されることのない名作。こぢんまりとした空間に約20の客席。1作品を1カ月間上映したり、平日は希望する上映時間・作品を指定して予約ができたり、小劇場だからこその良さがファンの心をつかんでいます。高水さんは「新旧問わず、“この映画を観たい”と思ってもらえる作品を届けていきたいです」と話しています。

問い合わせ 090(8172)7074

住所

和歌山市中ノ店北ノ丁22北ぶらくり丁会館2階

営業時間

午前10時から(上演時間はホームページで) 

休日

不定休

HP

https://cinema203.com/

駐車場

なし

料金

入場料一般1700円、大・専門学生1500円、小・中・高校生1000円

家具を修理しながら長く使う社会に一役
SEEP SHED 代表・木村修平さん

大学でプロダクトデザインを学んだ後、埼玉県内の家具製造・販売会社に就職。北欧のビンテージ家具に触れる機会が多く、次第に魅かれるようになったという木村修平さん。

 きっかけは一昨年。地元美浜町に帰省した際、“県内にビンテージ家具の修理や販売をする店がないのでは? ならば自分がつくろう” と一念発起。空き店舗を活用し、工房を併設した家具店をオープンさせました。「製造や修理に加え、営業、接客などの経験を積んだことがつながり、今、役立っています」とにっこり。

 店内は、デンマークやオランダ、スウェーデンのいすや机の他、自身が設計・製作したオリジナル家具をディスプレー。木村さんはいすに触れ、「メンテナンスしながら長く大事に使われてきたもの。デザインや機能性に優れ、年月を経て味わい深い木色になっています」と、その良さを伝えます。傷や汚れも特長の一つ。「捨てるのではなく、メンテナンスしながら使い続けることが当たり前の社会に。この場所でサポート、そして発信していきます」と目を輝かせています。

問い合わせ 073(488)2366

住所

和歌山市内原997-1

営業時間

午前11時~午後6時 月曜(日曜は予約制) 

HP

https://www.sheepshed.jp/about

駐車場

あり

独自の視点と発想で生まれた新規事業

24時間使える、ものづくりワークスペース
ヘプタゴン 代表・小佐田真克さん

レーザーカッターや3Dプリンターをはじめ、塗装、電子工作、木工をするための機械・工具がずらりと並ぶ、秘密基地のような空間。小佐田真克さんは、「自分で何かつくりたいと思ったとき、工具や場所などが必要になります。でも、一からそろえるとなると大変です。自由に使える環境(ワークスペース)をつくれば、ものづくりを楽しむ人がもっと増えるかも」と、起業の理由を伝えます。その背景には、製造業やものづくりに携わる人の減少を何とかしたいという思いが…。

 実家が縫製業を営んでいたことから、機械に囲まれて幼少期を過ごした小佐田さん。学生時代はソーラーカーの製作に打ち込み、卒業後は機械系のエンジニアに。今も仲間とソーラーカーを走らせるほど、ものづくりに魅了された一人で、「試行錯誤しているときが一番好き」と笑います。

 ワークスペースは会員制。入退室をアプリで管理することで、24時間無人営業を可能にしました。利用者は、プラモデルやラジコンの塗装、電子工作に必要な工具などを、自分の都合の良いときに使えるという仕組みです。小佐田さんは「大人だけでなく、高校生や大学生などの学生にも活用してもらうことで、ここから未来の研究・開発へとつながれば」と夢を膨らませています。

問い合わせ 080(4024)7518

住所

和歌山市南出島55-2

営業時間

24時間営業(無人)※会員制

休日

無休

HP

https://heptagon-hack.com/

駐車場

あり

備考

入会費無料、施設利用料はホームページで確認

会員制の子連れカフェで育児をサポート
あかちゃん cafe LaPa 代表・打越友美さん

きっかけは子どもの不登校。元気になるのを待ち続ける日々、心がしんどくなった経験から…。「親の精神状態は子どもにリンクします。私自身、まずは親が人生を楽しむことが大切と痛感。それを伝える場をつくりたかったんです」と、笑顔を見せる打越友美さん。0~2歳の子どもと親が一緒にくつろいで食事をしたり、遊んだりできる会員制カフェを開きました。

 打越さんが注力したのは空間に価値を付けること。約490人のアンケートを基にニーズを捉え、サービス内容はもちろん、室内の動線、家具、おもちゃなど細部にまでこだわっています。利用するにはアプリで会員登録し、行きたい日時を予約。時間・人数・飲食などに応じて料金を支払います。「親子で遊ぶのはもちろん、同じ空間にいながら親は子どもと少し離れ、ゆっくりと自分の時間を過ごすこともできます。その間は保育士などの資格を持つスタッフが一緒にいます」と説明します。

 定期的に助産師セミナーなどのイベントが開かれるのも特徴の一つ。「人のつながりや助けがあってこそ。カフェを充実させるとともに、会員同士がつながったり、相談ができたりする仕組みもつくっていきたいです」と動き出しています。

問い合わせ 0736(67)7253

住所

岩出市吉田319-4

営業時間

ランチタイム午前10時~午後1時、カフェタイム午後2時~5時※会員・予約制 

休日

日・月曜

HP

https://lapa.jp

駐車場

あり

備考

入会費、施設利用料はホームページで確認

3カ月で勉強の仕方を身に付ける学習塾
スタディブレイン 代表・吉村健吾さん

学校では成績優秀でも、社会に出ると苦労・挫折する人が少なくありません。吉村健吾さんは、テスト重視の教育制度に疑問を感じ、中高生を対象にした勉強の仕方を身に付けるための学習塾を開業。「教育の本質は基礎学力はもちろん、自分で考え行動する力を身に付けること。将来、幅広い能力が発揮できるはず」と力を込めます。

 同塾では、3カ月間毎日通うことで勉強習慣を身に付けることから始めます。1日の授業時間は50分。学習問題の解き方ではなく、「勉強とは何かを説明」「ニュースを要約」などのテーマを設け、年齢に関係なく、皆でディスカッション。後は自己学習となります。吉村さんは「期間内、学校のテストで1教科だけでも学年1位や過去最高点を取るという目標を設定。達成に向けて何をすべきかを自分で考えて勉強します。分からないことはインターネットなどで調べるなど、解決の方法も身に付きます」と話します。

 今後、さまざまな分野で活躍している人を講師に迎えたり、地域の活性化に取り組む人たちの活動に加わったりする授業が盛り込まれる予定。吉村さんは「学生の頃から地域や人の役に立つことに関わる、そういう社会になればいいですよね」と先を見据えています。

問い合わせ 080(5365)1458

住所

和歌山市五番丁10五番丁ビル3階

営業時間

月~金曜午後3時~9時、土・日曜午後1時~8時

休日

無休

HP

https://study-brain.com/
(1月末https://study-brain.jp/に変更)

駐車場

なし

備考

費用などはホームページで確認

わかやま産業振興財団
太田佳宏さんと岡京子さんに聞きました

起業までにやっておくとよいこと

  1. 起業の目的を明確に
    自分のアイデアを書き出して整理。誰に、何を、どのように売るのかを考え、周囲の人に伝えてみましょう。考えをまとめることは、協力者を得たり、融資を受ける際に役立ちます
  2. さまざまな角度で調査を
    「競合他社はないか」「和歌山のニーズに合っているか」「起業するには何が必要か」などの下調べをしっかりと行ってください
  3. 起業家に会いに行こう
    起業することと、起業を成功させることは全く違います。セミナーや交流会に参加し、先輩起業家や起業支援の専門家などの話を聞きましょう。フットワークを軽くして
  4. 公的支援機関で相談を
    わかやま産業振興財団、和歌山県よろず支援拠点、近くの商工会・商工会議所など、無料で相談できる公的支援機関へ。難しいと判断されても、諦めないことが大切です
わかやま産業振興財団 太田佳宏さん

わかやま産業振興財団 太田佳宏さん

事前対策で失敗を回避

  • 資金不足
    予定していたよりも経費が必要です。基本、開業1年目は手元の資金を削りながらの経営。余裕のある資金を確保していないと、資金繰りが難しくなります
  • 客が来ない
    情報を発信できているか、必要とされているかなど、仮説の理由を立てて一つ一つできることからやりましょう
  • 見通しの甘さ
    創業5年での起業生存率は約40%といわれています。見通しを持って事業計画を立ててください
  • 軌道修正が遅い
    計画通りに進めても上手くいかないときは、原因を考えて、すぐに手を打つことが重要。「これでいいのか?」という疑問を常に持ち、考えることが気付きにつながります
わかやま産業振興財団 岡京子さん

わかやま産業振興財団 岡京子さん

創業セミナー&スクール

ビジネスプランコンテスト&創業支援セミナー
日時:2月18日(日) 午後1時から
場所:ホテルアバローム紀の国(和歌山市湊通丁北)
講演と今年度のビジネスプランコンテストの発表
参加無料。定員50人(先着順)。①氏名②電話番号を明記し、メール(sogyo@yarukiouendan.jp)で申し込み。
※個人情報は参加案内にだけ使用

わかやま創業スクール
7月~12月開講予定
対象は和歌山県内で起業したい人、自分の事業アイデアを具体的な事業計画にしたい人。販路開拓や財務演習、プレゼン技術の習得などを学びます
※詳細は4月頃、わかやま産業振興財団のホームページに掲載

問い合わせ先

問い合わせ 073(432)3412
わかやま産業振興財団
インスタで補助金などの情報を発信中
住所  和歌山市本町2-1フォルテワジマ6階
営業時間  午前9時~午後5時45分
休日  土・日曜、祝日
HP  https://yarukiouendan.or.jp/
インスタ  @startupwakayama

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