第15回 土生祭 ~双頭獅子と奴~

無音の獅子舞いと力強さを表わす奴踊り

全国的に珍しいとされる双頭の踊り獅子

 実りの秋。稲の刈り入れが終わる頃、日高川流域では祭りばやしや、山車(だし)を引く人たちの威勢のいい掛け声があちらこちらから聞こえてきます。

 この時期、川の下流に位置する土生(はぶ)八幡神社(日高川町土生)で、五穀豊穣を祈願する「土生祭」が行われます。

 土生祭は、10地区を8組に分け、各組が渡御の途中にある休けい所(お旅所)で太鼓や獅子(しし)舞、踊りなどを奉納します。中でも、知られているのが、2つの頭を持つ双頭(そうとう)の獅子とオス・メスのオニによる「双頭の踊り獅子」、江戸時代の大名行列を模した「小熊の奴(やっこ)踊り」です。

 土生八幡神社総代長・林保行さんは「双頭の踊り獅子は、太鼓や笛がなくて無音。鬼の持つ“矛(ほこ)”と竹を細かく割って束ねた“ささら”の気配を頼りに踊ります。獅子の中に入った4人と、オニ役2人の息の合った動きは見応えがあります」と話します。

境内でポーズを決め、踊りを披露する小熊の奴踊り

 渡御では、赤い頭巾と色鮮やかな衣装を付けた、大人・子ども総勢約100人の行列が見物客の目を引きます。地区の一つ、小熊地区が奉納する奴踊りで、お旅所へ到着するとき、また神社への復路(鳥居前)で、そろってポーズを決めながら練り歩きます。林さんはポーズについて「力自慢の意味も含んでいるのですよ」と笑います。

 境内に戻ると、帰路に就く前に各組が一斉に舞いや踊りを奉納するのが習わし。最近は祭りが終わった後、各地区の若者が近くにある同町の役場裏に集まり、「若連行事」として自分たちの演目の見せ場を披露。伝統を守るためにそれぞれが模索し続け、新たな歴史を刻んでいます。(完)

【祭り情報】

開催日 10月20日(日)
場所 土生八幡神社(日高川町大字土生
スケジュール 10月20日(日)
12:30 渡御
14:30 お旅所神事
17:30 境内で披露
19:00 若連行事
※若連行事は日高川町役場裏(日高川町大字土生)で

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年12月6日号「和歌山市内の5つの社寺を参拝 御朱印にときめく小旅へ」
     和歌山市内の5社寺を訪れて御朱印を集める「紀州神仏霊場巡り」が来年4月末まで行われています。全て…
  2. リビング和歌山2025年11月29日号「新たな視点で魅力を発掘し、情報を発信 岩出市地域おこし協力隊着任」
     JR岩出駅前に観光案内所の整備を進めている岩出市。市が初めて募集した地域おこし協力隊も着任し、“…
  3. リビング和歌山2025年11月22日号「昨年よりさらに進化!冬の街を彩る130万の光 KEYAKI Light Parade」
     今年も、けやき大通りがキラキラとした光と笑顔に包まれる季節がやってきます。今年で3年目となる冬の…
  4. リビング和歌山2025年11月15日号「和歌山県の手仕事を訪ねて丈夫で温かみのある風合い手すき和紙の伝統をつなぐ」
     書や工芸、日用品など、暮らしの中で、広く親しまれてきた「和紙」。植物・コウゾと、その繊維を均一に…
  5. リビング和歌山2025年11月8日号「「もしもノート」を活用して 始めてみよう“人生会議”」
     11月30日は、「人生会議の日」。厚生労働省により定められたものですが、“人生会議”って何? 今…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/12/4

    2025年12月6日号
  2. 2025/11/27

    2025年11月29日号
  3. 2025/11/20

    2025年11月22日号
  4. 2025/11/13

    2025年11月15日号
  5. 2025/11/6

    2025年11月8日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る