−第1回−文化財 仏像のよこがお「仏像のある風景」

仏像のある風景

 「仏像」と聞いて皆さんはどんな風景を頭に浮かべるでしょうか。きらびやかな寺の本堂にまつられている本尊像。路地の角の小さなお堂にまつられている石仏。あるいは博物館の展示室でライトアップされた仏像かもしれません。和歌山県立博物館で仏像を研究している私も、さまざまな「仏像のある風景」に出合ってきました。

 昨年の暮れ、和歌山市内の人から相談を受けました。家に仏像があるけれど、高齢の一人暮らしで今後どうしたらいいか悩んでいるとのこと。商店の合い間に建つこぢんまりとした自宅を訪問し、寝室兼用の和室に上がると、そこには驚きの風景がありました。

不動明王立像 鎌倉時代

床の間にそびえるように立っていたのは不動明王立像(写真)。激しく怒る表情、手には剣と縄(羂索・けんさく)を持ち、背中に炎を背負っています。本体が1m、台座と光背を入れると1m80cmに達します。作風を確かめると、今から700年程前、鎌倉時代末~南北朝時代の特徴を示しており、彩色や豪華な飾りも当初のものでした。

 この仏像を入手したのは飾金具の職人であった相談者の父・谷口勝次郎さん。和歌山城天守閣のあの大きなシャチホコを造った人です。仕事柄寺社への出入りも多かったそうで、そうした関わりの中で仏像を引き受け、守り本尊とされてきたのでしょう。今後は和歌山の歴史を伝える仏像として、博物館で保管することとなりました。

 善美を尽くして作られた仏像の姿を眺めているうちに、仏像とともにあった人々の姿が、その横顔に重なって見えるときがあります。和歌山にはたくさんの仏像が伝わります。その「よこがお」に注目することで、より多くの魅力を見いだすことができたらと、いつも考えています。
(和歌山県立博物館主任学芸員・大河内智之)

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