−第31回−文化財 仏像のよこがお「丹生明神の道と頬切地蔵」

かつらぎ町の三谷地区と天野地区を結ぶ三谷坂は、2016年に世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に追加登録されました。10世紀ごろ成立した「丹生大明神告文(のりと)」に記される神話によれば、丹生明神は最初に奄田村石口(三谷の丹生酒殿神社付近と推定)に降り立ち、周辺各地を巡った後、最後に天野原に至り、そこに鎮座したとされています。

天野には高野山鎮守の丹生都比売(にうつひめ)神社があり、丹生高野四社明神と呼ばれる四柱の神々がまつられています。かつて同社にはこの四柱の神々を祭祀(さいし)する一の祝(はふり)から四の祝までの4人の神主がおり、このうち一の祝(丹生総神主家)は三谷に居を構え、日々三谷坂を行き来していたといいます。また、平安時代後期の仁和寺門跡覚法法親王も高野登山の際に用いたなど、丹生明神の聖地をつなぐ由緒正しき祈りの道だったのです。

紀の川のほとりにある三谷から直線で2km先の天野までは、標高差400mをほぼ直登するきつい坂道が続きます。その途中、緑泥片岩(りょくでいへんがん)の大きな岩塊が露頭し、清水が湧き出る平場があり、その岩の一つに宝形造(ほうぎょうづくり)一重の宝塔が彫り出され、その三面に大日如来・阿弥陀如来・釈迦(しゃか)如来の坐(ざ)像が刻まれています(もう一面は岩塊のまま)。

大日如来の頭部に斜めにひびが入り、地元では首から上の病を治す「頬切地蔵」と呼ばれて信仰されてきました。各像の丸く円満な風貌や、ゆったりとして穏やかな座り姿は、平安時代後期、12世紀の仏像様式の特徴です。世界遺産追加登録の事前調査で見いだされた本像は、丹生明神の道を歩む人々を見つめてきた、高野山周辺における最古の石仏だったのです。(和歌山県立博物館アドバイザー・奈良大学准教授・大河内智之)

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年8月30日号「自然界の脅威に備えよう 人と自然の“キケンな遭遇” 出合ったらどうしよう!?」
     秋は川や山などへ出かける機会が増える季節です。もしも「クマ」や「スズメバチ」などの危険な生き物た…
  2. リビング和歌山2025年8月23日号「あなたのその行動が働きを鈍くしているかも 免疫細胞のはなし」
     私たちが健やかに過ごすために、身体に備わっている〝免疫〟。忙しい毎日の中でついやってしまう行動が…
  3. リビング和歌山2025年8月9日号「語り継ぐ体験、記録で伝える 戦後80年、未来へ残す記憶」
     1945(昭和20)年8月15日の終戦から、今年で80年を迎えます。戦争を直接体験した人々が少な…
  4. リビング和歌山2025年8月2日号「専門店が続々登場、美と健康をサポートするスーパーフード ブーム再燃!アサイーボウル」
      まだまだ暑さが続く今年の夏。涼しく冷んやりと、そして健康に乗り切るためにアサイーボウルはいかが…
  5. リビング和歌山2025年7月26日号「進化する「北ぶらくり丁」」
     レトロな雰囲気のなかに、遊び心と新しさが交錯する北ぶらくり丁が活気にあふれています。アーケードの…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/8/28

    2025年8月30日号
  2. 2025/8/21

    2025年8月23日号
  3. 2025/8/7

    2025年8月9日号
  4. 2025/7/31

    2025年8月2日号
  5. 2025/7/24

    2025年7月26日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る