和歌山バーテンダー物語 vol.09

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縦長の名刺をもらう。いい紙質、いい書体である。「野口雄一郎」、いい名前である。

名刺交換が済み、アイスコーヒーを用意してくれた。大きめの氷をピックで割り、グラスに。コーヒーを注ぎステア。ひと口いただく。少し濃いめの味。完璧な一つの商品を出されたようで、心地よい。

開店前にもかかわらず店内にジャズが流れている。照明を落とした店内、目が慣れてきた。あらためてマスターを見る。プレスの効いたシャツにベスト。髪は短く整えられ、黒縁のメガネ。正統である。この道15年、この店のマスターになって8年、物腰は至って柔らかい。

シンガポール・スリング

シンガポール・スリング

「最後の疲れを置いていける店でありたいですね」と。その言葉にふさわしい場所だと思った。必要最低限の装飾、照明、音楽の音量。店のどれもが、来店者に押し付けていない。お酒を飲む人が自由に過ごせる空間。でも、野口さんがカウンターに立っていることで、この店がこの店であることを主張している。

野口さんと話をしていて、ふと思う。BARとは、店とマスターが一体で、決して巨大化、増殖化はできないのだと。第一、マスター自身がそれを望んでいない。古い言葉だが「一生現役」、主役を張る舞台俳優。野口さんの心根は、職人のようだ。

各店を訪れるにつれ、BARは少しぐらいハードルが高くていいと思うようになってきた。扉を開けると、特別な空間があり、すべての技を身につけた職人と共に幸せな時間を過ごす。この店でなら、「ザ・マッカラン25年」を飲んでみたい。

(次回は7月11日号に掲載)

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住所和歌山市岡円福院東ノ丁5 ワールドプラザ南海1階
電話番号073(425)1080
営業時間午後7時~翌2時
休日日曜

大人リビング

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