−第67回−文化財 仏像のよこがお「大泰寺の不動明王像と毘沙門天像」

(右)大泰寺不動明王立像 (左)大泰寺毘沙門天立像

 那智勝浦町下和田の大泰寺薬師堂に安置される、那智山僧尊誉(そんよ)によって1156(保元元)年に造像された本尊像(指定名称は阿弥陀如来)については、本連載第24回(2021年11月27日号)で取り上げました。今回紹介するのは、その脇壇に安置されている不動明王立像と毘沙門天立像です。

それぞれ像高104㌢ほど、髪際で三尺(約90㌢)という基準で造られた仏像です。両像ともに、頭体を通して前後に2材をはぎ寄せ、内ぐり(像内を彫って空洞にする技法)を施して、頭部を首の下で割り放さない構造が共通しています。

腕が外れるなど傷みが目立っていたことから、2017(平成29)年に毘沙門天立像が修理に出されました。その完成後、像内に墨書を記した木札が打ち付けられていたことが請負業者から報告され、住職から連絡をいただきました。

写真を見ると、そこには1281(弘安4)年、大法師祐永が願主となって、生阿弥陀仏(しょうあみだぶつ)という阿弥号を名乗る仏師によって造像されたことが記載されていました。また、像内には1417(応永24)年に大願主昌祐、仏師慈□、法眼定永の関与によって修理が行われたことも記されていました。鎌倉時代後期の記年銘(製作年を記した銘文)を持つ新たな重要資料の発見です。
引き続き修理を行うために搬出済みだった不動明王立像については、急きょ伝わってきた歴史情報を極力残すための文化財修理へと方針を変更。解体前と解体中に調査を行い、こちらの像にも同じく弘安4年銘の木札が像内に納められているのを確認できました。

追加費用の調達には、住職が現代の勧進活動ともいうべきクラウドファンディングに挑戦し、多数の結縁を得て2019(平成31)年3月に開眼法要が行われました。寺院と地域の歴史を今日に伝える仏像を、地域の枠を越えた多数の賛同者によって応援する、これからの文化財保護の一つのあり方を示した早期の事例といえるでしょう。
(奈良大学教授・大河内智之)

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