前回(6月28日号)で、私たちの日常生活は「契約」によって成り立っており、一度契約が成立すると、互いに契約した内容を守る義務が生じると伝えました。今回は「契約自由の原則」とその例外について説明します。
私たちは自由な意思に基づいて契約を結ぶことができます。個人間で結んだ契約に対して、国は干渉せず、その内容を尊重しなければなりません。契約を結ぶかどうか、結ぶとしても誰と結ぶか、どのような契約内容にするかなど、私たちは自由に決めることができます。これを契約自由の原則といいます。
しかし、この契約自由の原則をそのまま維持した場合、当事者が意図しない不利益を受けることがあります。そこで、一定の関係について、法律で契約自由の原則の例外が設けられています。
例えば、未成年者が高額な商品を購入した場合に必ず代金を支払わなければならないとすると、十分な判断能力がない未成年者には余りにも酷です。そこで、「民法」は未成年者が契約をするときは、親などの「法定代理人」の同意がないと原則として契約を取り消すことができると定められています。
また、契約を結ぶ当事者間において、必ずしも対等な関係とはいえないケースもあります。例えば「雇用主と労働者」「事業主と消費者」など、情報量や交渉力に格差がある場合です。労働者や消費者に不利な内容にも関わらず、契約を守る必要があれば、力のある方に有利な契約ばかり成立することになりかねません。 立場の弱い者を保護する観点から、「労働基準法」や「最低賃金法」では、法律で定められた労働時間や賃金の最低額に反する契約を結ぶことができません。また、「消費者契約法」では、消費者の利益を不当に害するような契約を結ぶことはできない、とされています。
このように、私たちは原則、自由な意思で契約を結び、その内容を守る必要がある一方、私たちの生活が本当の意味で豊かになるよう、法律でその例外も定められているのです。
(和歌山地方法務局総務課・森大輔)

総務課 監査専門官 森大輔さん
関連キーワード