−第69回−文化財 仏像のよこがお「広利寺十一面観音立像と像内銘」

広利寺十一面観音立像

広利寺十一面観音立像

 有田市宮原町、かんきつ畑が斜面一帯に広がる山中に、広利寺があります。本尊の十一面観音立像(重要文化財)は腕を4本現す珍しい姿で、像内に記された銘文によれば1354(正平8)年に、もとは河内国若江(大阪府八尾市)の西方寺に安置する仏像として、天王寺大仏師式部法橋頼円らによってつくられたことが分かります。像内には他にも「唯識三十頌(ゆいしきさんじゅうじゅ」や「法華経」などを書写した経巻も納められていました。

全身は皆金色(かいこんじき)に仕上げられ、衣には大ぶりの鳳凰(ほうおう)や牡丹(ぼたん)、雲、宝珠(ほうじゅ)、海波、雷文、蓮華(れんげ)唐草文などを盛り上げ彩色し(ごふんなどで文様を立体的に表す技法)、その隙間は精緻な截金(きりかね=極細に切った金ぱくで文様を表す技法)による七宝つなぎ文や麻葉つなぎ文などで埋め尽くされていて、たいへん豪華です。

優れた出来栄えを示し、かつ造像時期や仏師の名が判明する重要作例であることから、1897(明治30)年12月、制定したての古社寺保存法により、国宝(現在の重要文化財)に指定されています。その翌年、同法に基づき、破損が進んでいた本像の修理が新納忠之介(1868~1954)によって行われています。この年、新納は助手らとともに高野山から熊野まで移動しながら各地で仏像修理を行っており、これは日本における公的な文化財修理の始まりとなるものでした。

広利寺像修理の際、像内に納められていた経巻は取り出され、別に箱を作って保管されました。ふたの裏には、現在は見ることができない像内の銘文が記録されています。先の銘文情報はこれに基づいています。

今のように写真撮影も簡単ではない中、新納は「胎内の銘文を再見し難いので後の鑑のために」と、記録した経緯も記しています。文化財修理の黎(れい)明期に、新納によるこうした試行錯誤を経て、今日に続く仏像の修理方法が確立していったのです。
(奈良大学教授・大河内智之)

銘文を記録した箱のふたの裏

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