おこだでませんように

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誰もが持っている心の中の
祈りの言葉、一番のお願い

1年生になったA君が保育所に来て、「先生、今日は学校で一回も怒られへんかったで」と言ったとか。「いつも、どれだけ怒られているの」とみんながあきれ顔でした。「ぼくは いつもおこられる。いえでも がっこうでも おこられる」で始まる『おこだでませんように』(出版=小学館、くすのきしげのり/作・石井聖岳/絵)はA君の心情を描いた絵本かもしれません。

「ぼく」は、お母さんが仕事から帰るまで妹の面倒を見ている心優しいお兄ちゃんです。でもなぜか行動が空回りし、担任の女性教師やお母さんに怒られてばかりいます。

意地悪な友達にキックとパンチをしたら、「暴力はいけません」と怒られます。「『なかまにいれてやれへん』と言われたのは僕の心がもらったパンチやで」は…、切ない心の声です。

そんな「ぼく」が七夕の日に短冊に書いたお願いは「おこだでませんように」でした。入学してから教えてもらったひらがなで書いた、一番のお願いです。

短冊を見た教師は「怒ってばっかりやったんやねえ。ほんまにええ、お願いやねえ」と泣きます。

その夜、教師から電話をもらったお母さんも「ごめんね。怒ってばっかりやったね」とぎゅうっと「ぼく」を抱きしめてくれます。

「ぼく」の心根に寄り添い、懸命に働いて二人の子どもを育てている母親の姿や、担任の言葉に自分を重ねて、大人も感動する絵本です。平成21年の小学校低学年の課題図書で、主人公の「ぼく」は小学1年生です。

最終ページに「おこられませんように」と正しく書かれた短冊があって、それを見つける喜びが絵本の楽しさです。

名前なりきよ ようこ
プロフィル絵本編集者として勤務後、渡欧。帰国後フリーに。
保育所や小学校で読み聞かせを25年以上続けている。絵本creation(編集プロダクション)代表

子育て・教育

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