4月1日から順次施行。自分や家族は…どうなる?働き方改革

 4月1日から「働き方改革関連法」がスタートし、一段と効率的な働き方が求められるようになります。企業にとってのいち早い対応はもとより、働く人も自身の生活や健康を守るため、新制度を知っておくことが大切です。

多様な働き方を選べる社会へ
働く人も改革を理解することが大切

2018年6月、国会で働き方関連法が成立。いよいよ今年4月1日から、一部の施行が始まります。

かつて「モーレツ社員」や「24時間戦えますか」といったキャッチコピーがあったように、日本では労働者が全てを犠牲にして、会社のために働くことが美徳とされた企業文化がいまだに残っています。そんな労働環境を改善するために施行されるのが、今回の法律です。

その背景には、少子高齢化の加速と、働き手の減少問題があります。働き手が、多様な働き方を選べる社会にすることで、女性や高齢者が働きやすくなったり、働く人のやる気が高まったり、少ない人数でも業務の効率化や生産性の向上につなげるのがねらいです。

改革のポイントは大きく分けて2つ。働き過ぎを防ぐため、年次休暇のある労働者が毎年5日の有給休暇を取得すること、時間外労働に上限を設けることです。他にも、フレックスタイム制の拡充や勤務間インターバル制度の導入なども進められます。

働き方を会社任せにするのでなく、働く側も正しく理解しておくことが大切。和歌山労働局労働基準部監督課長の津田惠史(さとふみ)さんに、改革の概要について聞きました。

働き方改革について知ろう!

「雇う側も働く側も、”働くこと”への意識を変えていくことが大切です」と話す津田さん。改革のポイントを聞きました。

和歌山労働局労働基準部監督課 課長
津田惠史(さとふみ)さん

年5日の年次有給休暇の取得義務

全企業2019年4月1日から

労働基準法では、一定の要件を満たす労働者に対して、毎年一定日数の年次有給休暇(以下=有休)を与えることが定められています。
有休は、原則として労働者自身が請求する時季に取りますが、希望が出しにくいという状況も少なくありません。
改正後は、年10日以上の有休のある労働者に対して、年5日の取得が義務付けられます。また、有休を取れていない人には、事業者側からその人に希望を聞いた上で時季を指定します。

時間外労働(残業)の上限規制

大企業2019年4月1日から 中小企業2020年4月1日から

 法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められています。残業は月45時間、年360時間とされていますが、これまでは残業時間の上限がありませんでした。
改正後は、法律で残業の上限が規制されます。また、特別の事情で労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(同)を超えてはいけません。
残業を行うには、労使間で労働時間の上限を決め、所轄の労働基準監督署に届ける必要があります(猶予・除外業種あり)。

非正規雇用の待遇差の禁止

大企業2020年4月1日から 中小企業2021年4月1日から

同じ事業所内で、基本給はもちろん、賞与、福利厚生から休暇に至るまで、正社員と非正規社員(パートタイム、有期雇用、派遣)の間の不合理な待遇差をなくし、業務内容に応じて対価を決める制度です。
これは、労働者が自分に合った働き方を選び、待遇に納得して働き続けられるようにするのが目的。 また、非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。そして事業主は求めに対し、説明をしなければなりません。

勤務間インターバル制度の導入促進

全企業2019年4月1日から

1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組み。例えば下図のように、11時間の休息時間が取れるように、始業時刻を後ろ倒しにします。これは、労働者が十分な生活・睡眠時間を持てるようにするためで、事業者の努力義務とされます。

フレックスタイム制の拡充

全企業2019年4月1日から

フレックスタイム制とは、一定期間(精算期間)の総労働時間をあらかじめ定め、労働者がその枠内で始業・終業時刻を自由に決められる制度。今回、最長1カ月だった一定期間が3カ月に延長されます。働き方に柔軟性を持たせることで、育児や介護などがある人も両立しやすい環境へとつなげます。

産業医・産業保健機能の強化

全企業2019年4月1日から

 産業医とは、労働者の健康を保持・促進する役割を持った医師のこと。労働者が常時50人以上いる事業所の場合、産業医を1人以上専任する必要がある、とされています。
法改正により、事業主は長時間労働者の作業状況など、労働者の健康管理を適切に行うために必要な情報を、産業医に提供しなければなりません。
また、健康確保のための対策の検討に役立てるため、事業主は産業医から受けた勧告の内容を、事業所の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければなりません。

月60時間超の残業の割増賃金率の引き上げ

中小企業2023年4月1日から

 中小企業の月60時間を超える残業の割増賃金率が引き上げられます。これまでは大企業だけが、月60時間を超える残業に対して50%の割増賃金を支払う義務がありました。改正後は、中小企業も割増賃金率が25%から50%となり、企業規模に関わらず適用されることになります。

高度プロフェッショナル制度の新設

全企業2019年4月1日から

高い収入でメリハリのある働き方ができるように、労働時間に関わらず、仕事の成果によって会社が一定の賃金を支払う制度。高度専門職で、一定の収入(年収1075万円以上)がある人が対象で、制度を導入するには本人の同意などが必要となります。
また、健康を維持するための新たな規制も設けられ、年間104日以上、4週4日以上の休日の確保が必要になります。合わせて、始業~終業の間に一定の休息時間を取ること、臨時の健康診断を行うことなどの措置から、どれかを選び、実行することが義務付けられます。

※参考:厚生労働省「働き方改革」

 和歌山社会経済研究所が「働き方改革」に関するアンケートを実施。改革を「行っている」と回答した事業所では、「長時間労働の是正」や「休日取得の推進」などが取り組まれていました。
 一方、制度変更の認知度については「知らない」が過半数超えに。同研究所は「県内事業者は人手不足問題が経営の課題です。働き方改革を行い、働きやすい職場づくりが重要になっています」としています。

※調査期間は2018年12月7日~21日、対象は県内全産業で有効回答684社

 

 

 

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