−第23回−文化財 仏像のよこがお「鞘仏(さやぼとけ)に納められた飛鳥仏」

串柿の里として有名な和泉山脈の山懐、かつらぎ町広口・滝・東谷・平の四つの集落は「四郷」と呼ばれ、このうち滝の極楽寺には、和歌山県最古の金銅仏が伝わっています。

物思いにふけるように頬に指を添え、円筒状の榻座(とうざ)に片足を膝に掛け、足を組んで座った半跏(はんか)像で、もとは銅の上に鍍金(ときん)が施されていましたが、過去に火事に遭った際に失われたと見られ、頭上の冠や台座の一部も溶けて無くなっています。

細い胴やきゃしゃな腕などの特徴は朝鮮半島・三国時代の作例と共通します。それらを手本に日本で造像されたと考えられる奈良県・神野寺菩薩(ぼさつ)半跏像と、冠から両肩に垂れる幅広のリボンの形や右腕を肘当てに置いている姿など、類似点が多いことから、本像もまた飛鳥時代、7世紀中ごろに造像されたと見られます。腹部の山形の腹帯は珍しく、こちらは奈良県・中宮寺菩薩半跏像と類似しています。

実はこの仏像、60年ほど前までは、誰もその存在を知りませんでした。

1964(昭和39)年7月、極楽寺の近くの北辰妙見神社を会場に開催された滝地区文化財展に、本尊の如意輪観音半跏像を出展する際、偶然その像内から胎内仏として発見されたのです。こうした事例はまれにあり、火災に遭って傷んだ仏像を外側の仏像である鞘仏に納め、その霊験を内に込めて本尊としたのかもしれません。

1350年の時を経て今日に伝わってきた飛鳥仏は、どのような歴史をたどってきたのでしょうか。像内に人名と花押と見られる墨書きも新たに確認しています。地域の文化財調査を通じて、その伝来の歴史を少しでもひも解いていければと思います。※和歌山県立博物館特別展「きのくにの名宝」で展示中。(同館主任学芸員・大河内智之)

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