−第44回−文化財 仏像のよこがお「桛田荘開発の始まりを告げる仏像」

無量寺 阿弥陀如来坐像

無量寺 阿弥陀如来坐像

かつらぎ町笠田地区とその周辺一帯は、かつて桛田荘と呼ばれた荘園でした。その荘園の領域を描いた中世の絵図が、京都・神護寺と地元の宝来山神社の両方に残され、ともに重要文化財に指定されています。荘域と自然景観、鎮守や寺、村、耕地の様子など、平安時代後期から発達した領域型荘園のイメージをよく表したものとして、中学校や高等学校の日本史の教科書にもたびたび掲載されています。

桛田荘は絵図を伝える神護寺の荘園として知られていますが、最初からそうだったわけではありません。12世紀半ばの一時期に崇徳上皇領となった後、すぐに国衙領(こくがりょう=国司が経営する公領)となり、さらに後白河法皇の御願寺である蓮華王院(れんげおういん)の荘園となっています。これは、1175(安元元)年に平家の家人である湯浅宗重が、荘園内に所持した私領を含めて寄進することで、蓮華王院領荘園として成立したと推定されていて、その後、1183(寿永2)年に、神護寺の僧・文覚の要求に応じて後白河法皇から神護寺に寄進されたのです。

桛田荘の中心に位置する笠田中の集落の高台に、無量寺があります。ここには荘域の中でも最も古い仏像が安置されています。無量寺本尊の阿弥陀如来坐(ざ)像(和歌山県指定文化財)は、像高87.7cm、ヒノキを用いた一木割矧造(いちぼくわりはぎづくり)という技法で作られています。頭部の丸い輪郭と穏やかな表情、肩を丸く表し緊張を解いて座る姿勢、両脚部の浅く流麗な衣のしわなど、12世紀ごろの仏像様式を示しています。中央(京都)の作例と比べても遜色ない、堅実な出来栄えの像です。

桛田荘が神護寺領となった直後、1185(文治元)年に作られた土地台帳(文治元年桛田荘検田取帳)にはすでに無量寿院(後の無量寺)の名が確認でき、本像の造像はそれ以前と推察されます。おそらく蓮華王院領時代に荘園開発が進められる中で、開発拠点として寺院が整備され、本像も造像されたのでしょう。荘園開発の始まりを告げる仏像は、今なお住民のそばで地域の歴史を見つめ続けています。

仏像は、8月9日(水)~13日(日)、かつらぎ町笠田公民館佐野分館(同町佐野)で開催の「み仏のおめしもの」で公開されます。
(和歌山県立博物館アドバイザー、奈良大学准教授・大河内智之)

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