“プロジェクト加太”進行中

 和歌山市の北西部に位置する加太は、魅力ある観光資源がたくさんある反面、“買い物難民”など住むには少々不便な面があり、過疎・高齢化が深刻化。しかしながら、ここにきて移住・定住を視野に入れた産官学連携のまちづくりが一気に加速。“プロジェクト”に関わる人たちの熱い思いを届けます。

観光列車にロケット…、事欠かない話題性
“あの東大”の駐在型研究拠点も開設

 美しい海岸に風情のある港町・加太。紀淡海峡に浮かぶ友ヶ島が、スタジオジブリ作品『天空の城ラピュタ』の世界だと近年、観光客が増加。一方、市街地から遠く、スーパーもなければ下水道も未整備で、少子高齢化に空き家問題も加わり、地域の活力の低下が大きな問題となっています。

 そうした中、「このままではダメだ」とまず立ち上がったのが住民たち。「加太連合自治会」「加太漁業協同組合」「加太観光協会」が協力して持続可能なまちづくりを推進する「加太地域活性化協議会」を10年に発足。まちづくり会社も設立してさまざまなイベントを仕掛けてきました。また、和歌山市駅と加太駅を結ぶ南海電鉄も14年から「加太さかな線プロジェクト」をスタートさせ、昨今は「めでたいでんしゃ」が話題に。同じく14年から加太の歴史的な町並みなどを研究対象にしていた東京大学生産技術研究所は、18年に和歌山市と相互協力・連携に関する基本協定書を締結。国内では珍しい駐在型の研究拠点「川添研究室加太分室地域ラボ」を開設しました。さらに、関西国際空港埋立地造成のための土砂採掘跡地「コスモパーク加太」は、国内に数カ所しかないロケットの聖地として、注目度が高まっています。

熱い思いを感じながら加太を歩こう

 

研究者、学生らの関心が拡大、まちづくりの一つのモデルになれば

東京大学生産技術研究所川添研究室加太分室地域ラボ特任助教 青木佳子さん

 

紀淡海峡が見渡せる絶景の立地

 和歌山市内に住む人なら小学校の“加太合宿”でおなじみの「少年自然の家」が全面改修を終え、「青少年国際交流センター」として昨年12月にオープン。リニューアル後は、利用対象を従来の小中学生からすべての年代に拡大。野外活動体験はもちろん、つつじが丘テニスコートや加太海水浴場など周辺の施設や環境を生かして、スポーツ合宿や国際交流などに利用可能。防音設備がある会議室もあり、演奏会といった文化・芸術活動にも使えます。

 

 

場所 加太1907-2
電話 073(459)2107
休日 月曜(祝日の場合翌日、年末年始)
備考 ※7、8月は除く、イベントなどにより開所となる場合あり

 

ロケット、ドローン、海中ロボット…、フィールド実験で教育の場にへ

和歌山大学宇宙教育研究推進室教授 秋山演亮さん

ロケットの打ち上げ実験

 「コスモパーク加太」は、宇宙やロケットについて研究している学生たちの“登龍門的”な場所。打ち上げられるロケットは高度400m程度までで「陸打ち」しかできませんが、「加太」で力をつけて、大きな大会へと巣立っていきます。ロケットを作って打ち上げるには知識や技術が必要ですが、プロジェクトマネジメントも重要です。最近はドローンの飛行実験でも注目を浴びていて、新たに海中ロボットの実験も始まります。「加太」はフィールド実験の可能性を秘めた場所であり、それらの実験を通じて人を育てる“教育の場”となっていってほしいです。

研究者、学生らの関心が拡大、まちづくりの一つのモデルになれば

東京大学生産技術研究所川添研究室加太分室地域ラボ特任助教 青木佳子さん

 

まちなかサイン

 加太で暮らし、今は地域の方々の協力を得てまちの魅力を整理しているところです。これまでの調査で地元の人と観光客の歩くルートが違うことが分かり、移住強化エリアと観光強化エリアに分けました。すでにあるものの良さや価値を視覚化して「まちなかサイン」として掲示し、インターネットでは出てこない情報を巡って街歩きを楽しむ仕掛けをつくり、特産品を生かしたおしゃれな土産品の開発にも着手しています。地域ラボができたことで、他大学の研究者らも加太へと足を運んでくれています。交流が広がり、さらにまちが発展していく兆しを感じています。

2018年3月に和歌山市と東京大学生産技術研
究所が相互協力
・連携に関する基本協定書を締結

古民家を改装した地域ラボ。ご意見は「加太アイデア箱」に

 

「めでたいでんしゃ」と「リノベーションまちづくり」で、若者の関心を加太へ

南海電気鉄道運輸部主任 野嶌洋平さん/なんば・まち創造部課長補佐 仲矢明子さん

2018年11月「めでたいでんしゃ」の結婚式

 加太は、古き良き漁村の風景が広がるステキな場所ですが、その魅力をもっと引き出していければと考えています。南海電鉄では、沿線住民が減少する中、2014年から観光路線化を計画し、16年に「めでたいでんしゃさち」、17年に「かい」の運行を開始。以降、若い世代の乗客が増えています。昨年、「さち」と「かい」が結婚、今年1月に新婚旅行で「難波駅」まで往復しました。今春には子どもが誕生し、今後のストーリー展開にご期待ください。さらに、和歌山市と昨年10月に「リノベーションまちづくりにおける連携に関する協定」を締結。加太エリアの遊休不動産が、新たなお店などに生まれ変わるように後押しします。国内外から多くの人が訪れ、加太で暮らしたいという若者が集まって、子どもの声が聞こえるまちになってほしいなと思います。

 

 

課題はいろいろあるけれど、一歩一歩確実に

地域活性化策検討プロジェクトチームリーダー 榊原佳寿さん

 

 2018年に本市と東京大学生産技術研究所が、相互協力・連携に関する基本協定書を締結後、市役所内の関連課所属の16人に、川添善行准教授、青木佳子特任助教をオブザーバーに迎え、加太地域の活性化策を検討するプロジェクトチームを発足しました。「街道の整備」「漁業のブランディング」「夜間景観の形成」など、実現できる、できないを抜きにして、加太の方々とも意見交換しながらアイデアを出し合いました。今後、できるものから実行に移せればと考えています。加太は市内でも空き家率や高齢化率が高いなど、課題はたくさんありますが、地元の方々の熱意もあり、解決できるポテンシャルはあると思います。宝物の自然はそのままに、昼も夜も平日も休日も、“人がワクワク歩くまち”を実現したいです。

世界に向けてPRができるまちを目指して

加太地域活性化協議会副会長/加太小学校育友会(PTA)会長 稲野雅則さん

 

 目標は、2060年に加太小学校の児童数を210人にすること(18年度は63人)。そのためにいろいろなことをやってきましたし、この先もさまざまな計画は考えているのですが、まず、今はマンパワーが足りていません。そんな加太のまちに、東京大学の分室ができたのは非常にうれしいですね。われわれは、10年前から加太森林公園にアジサイを植える植樹祭を実施していて、「日蘭建築文化協会」の初代会長でもある川添善行准教授の力を借りて、22年にオランダで開催される「国際園芸博覧会フロリアード」に出展したいなともくろみ中。他にも友ヶ島にアンテナを立てて、加太周辺の情報を発信する「FM友ヶ島」もやってみたいし、25年の大阪・関西万博で加太のPRもしたいなとも。確実によくなりますよ、加太のまちは。

 

加太産ワカメ入りパンや海プリンを販売。イートインもOK

場所 加太1920-1
電話 090(3350)6713
営業時間 午前11時~午後6時
休日 月~金曜(土・日曜営業)

伝統の一本釣りであげられた「加太のマダイ」などを販売

場所 加太港内淡嶋神社前
電話 073(459)0062
営業時間 毎月第1土曜に開催、午前11時~なくなり次第終了

漁港で仕入れた新鮮な“加太の幸”をいただくならこちら

場所 加太196
電話 073(459)0118
営業時間 午前11時~OS午後8時
休日 火曜(祝日の場合営業)

古民家シェアショップ。斜向かいに「Ojibaキッチン」も

場所 加太249
電話 090(2597)7181
営業時間 午前10時~午後5時
休日 月~金曜(土・日曜営業)

やわらかい、モチモチの天然よもぎ餅は売り切れ次第終了です

場所 加太425
電話 073(459)0336
営業時間 午前7時~午後6時
休日 不定休

100年以上歴史がある、加太名物「よむぎ餅」の老舗

場所 加太500
電話 073(459)0008
営業時間 午前8時~売り切れ次第終了
休日 不定休

おなじみ「満幸商店」の2号店。おしゃれな雰囲気でメニューも豊富

場所 加太(海岸通り)
電話 073(459)0328
営業時間 午前11時~夕暮れどき
休日 第2木曜

未病健康を提唱する古民家カフェ

場所 加太1070-91
電話 073(459)2611
営業時間 午前10時〜OS午後5時(夜は1組2人以上で予約可)
休日 金曜

第11回和歌山市加太の桜鯛祭り

鯛(たい)供養神事が行われ、鯛をはじめ、加太産の魚介類を特別価格で販売。“加太グルメ”も味わって。

日時 3月2日(土)午前10時半から
会場 加太おさかな創庫
参加費 入場無料
問い合わせ 加太観光協会
電話 073(459)0003

卒論&研究発表会

和歌山大学と東京大学の学生が、建築、植栽などの視点から研究した加太に関する内容を発表します。

日時 3月2日(土)午後5時から
会場 和歌山市加太総合交流センター
参加費 無料
問い合わせ 生産技術研究所加太分室
電話 073(488)6551

リノベーション まちづくり講演会@加太vol.2

香川県高松市にある仏生山温泉の “番台”であり建築家である岡昇平さんが、「まちぐるみで宿泊客をもてなす」取り組みについて話します。

日時 3月6日(水)午後7時~9時(開場6時半)
会場 和歌山市加太総合交流センター
参加費 無料
問い合わせ リノベーションわかやま事務局
電話 073(425)8583

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