持ち主の分からない土地の解消と円滑利用へ
不動産に関する法改正
来年4月から段階的に施行

リビング和歌山12月10日号「不動産に関する法改正 来年4月から」

持ち主の分からない「所有者不明土地」の問題が全国的に広がっています。そのため、国は土地の適切な管理や円滑な利用を目的に、民法と不動産登記法を改正。来年2023年4月から段階的に施行されます。制度や概要について、和歌山地方法務局で聞きました。

Q1.所有者不明土地について教えて?

和歌山地方法務局 局長 夏見聡さん

和歌山地方法務局 局長 夏見聡さん

A.相続や購入によって土地・建物を取得したとき、場所や特徴、所有者などの情報を法務局が管理する登記簿に記録します。しかし、相続登記は法律上の義務がないため、登記簿で調べても所有者が分からない土地や、所有者が分かっても引っ越しなどで連絡がつかない土地があります。それらを「所有者不明土地」と位置付けています。現在、全国で所有者不明土地が占める割合は、九州本島の大きさともいわれ、対策をしなければ、今後、増えていくと考えられます。

Q2.今、問題になっていることは何ですか?

和歌山地方法務局 局長 夏見聡さん

A.所有者不明土地の探索は、多大な時間と費用がかかります。そのため、公共事業や復旧・復興事業がスムーズに進まなかったり、土地の管理が行き届かなくなって近隣に悪影響を及ぼしたり、さまざまな問題が起こります。東日本大震災後、所有者不明のために同意が得られず、被災地の高台移転などが進まないといった事例もありました。また、高齢化が進む中、所有者が亡くなり、相続が発生したのに登記せず、放置するケースが何代にもわたり繰り返されると、管理が難しくなるという問題もあります。

Q3.解決のための新しい法律とは?

和歌山地方法務局 局長 夏見聡さん

A.昨年4月、「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が、国会で成立しました。これらの法律は、①不動産登記制度の見直し ②土地を手放すための制度の創設 ③土地利用に関する民法の見直し、の大きく3つに分けられ、来年4月から段階的に施行されます。不動産の相続は誰にでも起こりうる問題です。新制度について知り、必要に応じて対策を考えておくことが大切です。

新制度の導入で何がどう変わる?

民法ルールの見直し

2023年4月1日施行
 “所有者が分からない”“所有者がいても管理が適切にされていない”、という土地・建物に特化した財産管理制度が創設。また、所在が分からない共有者がいる不動産について、共有物の利用の見直しや共有関係の解消といった新たな仕組みも導入されます。その他、被相続人の死亡から長期間経過したときの遺産分割のルール、ライフラインを自身の土地に引き込むための設備の設置・使用権のルールの整備などが盛り込まれています。

相続土地国庫帰属制度の創設

2023年4月27日施行
 相続などで土地の所有権を取得した相続人が、法務大臣(窓口は法務局)の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることが可能になります。基本、所有権を取得した相続人なら申請できますが、土地が共有地の場合は全員で申請しなければなりません。どんな土地でも引き取ってくれるのではなく、管理などに過大な費用や労力が要る土地は対象外。申請時に審査手数料、承認を受けた場合は負担金(10年分の土地管理費用相当額)が必要です。

不動産登記制度の見直し

相続登記の義務化

2024年4月1日施行
 “土地や建物を相続したとき、相続人の名義に登記を変更しなければならない”、と従来の任意から義務へと変更。申請には期限があり、所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記申請が必要です。さらに、遺産分割の話し合いとなったときは、遺産分割が成立した日から3年以内となります。どちらも正当な理由なく、義務に違反した場合は10万円以下の過料の適用対象になります。

所有不動産
記録証明制度の新設

2026年4月までに施行
  自身や被相続人(亡くなった親など)が、登記名義人になっている不動産の一覧を証明書として取得できる制度です。相続登記の際、相続する不動産の把握がしやすくなり、申請の手続きが軽減されます。

相続人申告登記の新設

2024年4月1日施行
  相続人で遺産分割の話し合いがまとまるまで、不動産は複数人の相続人で共有している状態。そのため相続登記の申請をする際、相続人全員の戸籍謄本などが必要となります。新制度では相続人の1人が、土地・建物の相続が開始したこと、自身が相続人であると登記官に申し出ることで申請義務を行ったとみなされます。この場合、持ち分の割合までは登記されません。自身が相続人だと分かる戸籍謄本などの提出が必要です。

住所等 変更登記の義務化

2026年4月までに施行
 登記簿上の所有者が引っ越した際の変更登記が、任意から義務に。住所が変わった日から2年以内に申請をしなければなりません。正当な理由なく、義務に違反した場合は5万円以下の過料の適用対象になります。

不動産登記推進 イメージキャラクター 「トウキツネ」

不動産登記推進 イメージキャラクター 「トウキツネ」

他にも、「他の公的機関との情報連携・職権による住所等の変更登記」「DV被害等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例」もあるよ!

信愛中学の生徒が発想力生かし、広報活動に協力

 和歌山地方法務局は、和歌山信愛中学校3年iコースの生徒18人に広報活動の協力を依頼。生徒たちは今年度から始まった探究型学習の一環として、9月から約2カ月間、5班に分かれてPR方法を考えました。11月、同校でコンテストが開催。漫画でのユーチューブ配信、診断式のイエス・ノー・チャート、法務局のサイトにつながる2次元コード付きアドバルーンなど、中学生ならではのユニークな案が発表されました。審査の結果、最優秀賞には喜多亜寿香さんたち2班のユーチューブで配信する案が選ばれました。今後、県内5カ所にある法務局の電子看板などで活用される予定です。

最優秀賞に選ばれた2班の蒸野菜々花さん、喜多亜寿香さん、宮下百花さん、宮本紗希さん

最優秀賞に選ばれた2班の蒸野菜々花さん、喜多亜寿香さん、宮下百花さん、宮本紗希さん(左から)

職員と一緒に周知の方法について考える学生たち

法務局で制度について学んだ後、職員と一緒に周知の方法について考える学生たち

問い合わせ 和歌山地方法務局
電話番号 073(422)5131
住所 和歌山市2-3 和歌山地方合同庁舎
営業時間 午前8時半〜午後5時15分
定休日 土・日曜、祝日
※12月29(木)〜2023年1月3日(火)は休み
和歌山地方法務局ホームページ https://houmukyoku.moj.go.jp/wakayama/
新制度に関する詳細 法務省のホームページ
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

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