日本遺産を自転車や徒歩で巡る 絶景の宝庫和歌の浦へ

リビング和歌山9月29日号イメージ

「絶景の宝庫 和歌の浦」として文化庁の日本遺産に認定されている和歌の浦。奈良時代には山部赤人、江戸時代には松尾芭蕉が和歌を詠むなど、数多くの文化や芸術が育まれてきました。秋風が心地良い季節、その歴史に思いをはせながら、和歌山市の和歌浦地区を巡ってみませんか。

美術品にも取り入れられた絶景
今も昔も絵になる構図が広がる

「絶景の宝庫 和歌の浦」は、紀伊水道に注ぐ和歌川の河口域・和歌浦湾の海岸一帯を中心に、西は雑賀崎から、東は名草山、南は海南市の藤白坂まで、自然景観や寺社仏閣など31点の文化財で構成されています。

国の名勝にも指定されている和歌の浦。和歌山市文化振興課・冨永里菜さんは「奈良時代、風光明媚(めいび)な海の景色が和歌に歌われたことで、和歌の神さまが祭られ“和歌の聖地”として有名に。歌人や俳人が歌の上達を願って訪れ、和歌の浦にちなんだ歌をたくさん残しています」と説明します。

江戸時代には紀州徳川家が、公園のように民衆が自由に楽しめる名所として整備。「その景色は、絵画や焼き物といった美術品にも取り入れられてきました。それだけ多くの人を魅了してきたということです」と話します。

日本遺産に申請する際、和歌川の干潟に朝日が昇り、潮が満ち引き、夕日が沈むまで一日中観察したという冨永さん。「刻々と変わっていく、そのドラマチックな景色に“昔の人が感動したポイントはこれか”と確信した瞬間でした」と振り返ります。

時代とともに変化を遂げているものの、和歌に歌われた場所をたどると今も絵になる構図が広がります。冨永さんの解説で、妹背山~和歌浦漁港付近のいくつかのスポットを今と昔の写真を比較しながら紹介します。

 

昔に思いをはせて 和歌の浦の魅力を感じよう!

地図

(1)妹背山(海禅院多宝塔・観海閣・三断橋)

1景色

玉津島の6つの岩山の先頭・妹背山には、紀州藩初代藩主・徳川頼宣の母・養珠院が、徳川家康の33回忌に、太平の世を祈って、小石に経文を記した経石を埋納しました。明暦元(1655)年、頼宣は母をしのんでその上に多宝塔を建設。民衆が自由に干潟の景色を楽しめるように、三断橋と観海閣を設けて、妹背山を整備しました。 ※台風21号の被害で現在、妹背山には渡れません

(2)玉津島神社

奈良時代の神亀元(724)年、聖武天皇は紀伊国を訪れ、干潟に連なる玉津島山の眺めに感動し、歌人・山部赤人が和歌に歌いました。その後、玉津島神社に和歌の神が祭られ、多くの歌が奉納されました。天照大神の妹神ともいう稚日女尊(わかひるめのみこと)、神話に登場する神功皇后、和歌の神で絶世の美女の衣通姫尊(そとおりひめのみこと)という、3柱の女神を祭る神社です。

(3)鹽竃神社(しおがまじんじゃ)

玉津島山の一つ鏡山のふもと、波で削られた洞窟に、潮の満ち引きや塩作り、安産・子授けをつかさどる鹽槌翁尊、(しおづちのおじのみこと)が祭られています。かつて紀の川が大きく湾曲して和歌の浦に河口があったころ、上流の丹生都比売(にうつひめ)神社から、河口の玉津島まで、浜降(はまくだ)り神事で渡った、みこしが置かれたことから、「輿の窟(こしのいわや)」とも呼ばれました。

(4)不老橋(ふろうばし)

紀州藩10代藩主・徳川治宝が、東照宮の例大祭「和歌祭」のときに、徳川家や東照宮の人々が通る御成道(おなりみち)として、嘉永4(1851)年に整備しました。そして治宝の長寿を祈って「不老橋」と名付けられたとも。橋のアーチ部分は肥後熊本の石工が造り、雲の浮き彫りがある手すり部分は、紀州湯浅の石工・石屋忠兵衛が造ったと伝えられています。※上部の写真

(5)御手洗池(みたらいいけ)

かつては、和歌川の河口から東照宮と天満宮のある山の手前までが、細長い入り江となっていました。江戸時代の寛文年間(1661~73年)ごろに、入り江を横切る道が造られました。その後、片男波側は塩田として埋め立てられ、大正時代には宅地となり、住宅が建てられました。御手洗池と市町川はその入り江の名残りです。

(6)紀州東照宮

紀州藩初代藩主・徳川頼宣が、江戸幕府を開いた父・徳川家康を祭る社(やしろ)として、元和7(1621)年に建立しました。豪華に装飾された社殿は、「関西の日光」とも呼ばれ、参道には紀州藩の家臣が奉納した石灯籠が並びます。創建時から伝わる例大祭「和歌祭」は、江戸時代の芸能風俗を今に伝える時代絵巻で、毎年、多くの見物客でにぎわいます。

(7)出島の漁港

御手洗池の南西に位置する出島から、田野浦、雑賀崎と、岸壁に囲まれた入り江ごとに古くから漁業の集落があり、それぞれ漁業の神であるえびす神が祭られています。現在の2月中旬ごろに行われる雑賀崎の旧正月や、田野浦衣美須(たのうらえびす)神社の大漁祈願、7月の天神祭の前日に行われる和歌浦蛭子(えびす)神社の潮祭りなど、勇壮な海の祭りが今も受け継がれています。

(8)和歌浦天満宮

平安時代の康保年間(964~968年)に学問の神・菅原道真を祭るために創建。関ヶ原の戦い(1600年)後、紀州に入国した浅野幸長が、その鎮守として慶長11(1606)年に再興しました。豪華な社殿は、後に江戸幕府の大棟梁(だいとうりょう=建設部門の総監督)となった平内政信が手掛けました。青石の石段を登り楼門から振り返ると、和歌浦湾が一望できます。

 

 

●サイクリングDE和歌の浦

時 間 午前9時~午後5時
料  金 無料(要保証金1000円、返却時返納)
貸し出し・返却場所 和歌公園管理事務所
※自転車5台
予約・問い合わせ 073(446)5553
和歌公園管理事務所

●シェアサイクル「ofo(オフォ)」

和歌山市内各所に設置された専用駐輪場で自転車を借り、目的地付近の駐輪場に返却します。利用するには専用のスマートフォンアプリのダウンロードが必要。アプリを使って、自転車の2次元コードを読み取って解錠。料金は都度利用30分100円、1日500円。アプリ上でお金をチャージ、または、クレジットカードで電子決済をします。
【和歌浦エリアの駐輪所の場所】
和歌の浦アート・キューブ、親子釣りパーク、エピカリス、和歌の浦温泉・萬波、新和歌浦ロッジ、JR紀三井寺駅

 

国文学者や研究者の案内で、和歌の浦を巡ります

日 程 10月13日(土)
時 間 午前10時40分〜午後3時半
場 所 和歌山バス雑賀崎遊園バス停
参加費 500円(保険代・資料代)
申し込み問い合わせ 073(455)1203
紀伊万葉ネットワーク・木綿さん

 

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