春の訪れを告げる桜餅&よもぎ餅

リビング和歌山2月19日号「春の訪れを告げる桜餅&よもぎ餅 」

 コロナ禍でうっ屈とした日々が続いていますが、立春が過ぎ、梅の開花便りもチラホラ。春の気配はすぐそこまで。桃の節句を前に、和菓子店には、桜餅、よもぎ餅が並び始めました。春スイーツといえば“イチゴ”に目が行きがちですが、春を表す季語でもある桜餅とよもぎ餅には“いわれ”があります。

関東風桜餅(長命寺)

関東風桜餅(長命寺) 小麦粉をクレープ状に焼いてこしあんを包んだものが関東風。江戸時代に長命寺の門番になった山本新六が売り出したのが始まりとされ、その店舗は東京都向島に現存。

関西風桜餅(道明寺)

関西風桜餅(道明寺) ツブツブの生地が特徴の関西風。ツブツブの正体は、大阪府藤井寺市にある道明寺発祥の保存食「道明寺粉」ですが、昨今は蒸したもち米で作られたものも多いです。
※道明寺粉は水に浸して蒸したもち米を干して粗めにひいたもの

よもぎ餅(あみがさ餅)

よもぎ餅(あみがさ餅) よもぎは古くから治療薬草として使われ、独特の香りは邪気を払う呪力があるとも。女性がかぶる編みがさの形に模した「あみがさ餅」は、和歌山市・海南市に伝わる、ひな祭りの祝い菓子。

リビング和歌山の紙面で募集した読者アンケートの結果。有効回答数159人

女の子成長を願って食べるのは
いちご大福? 桜餅? よもぎ餅?

春の訪れを感じる和菓子といえばいちご大福を挙げる人が多いですが、いちご大福は1980年代生まれの新参者。よもぎ餅は、その起源となる母子草餅が中国から日本に入ってきたのは9世紀ごろ、桜餅も江戸時代には誕生しています。

そして、女の子の健やかな成長を願う桃の節句によもぎ餅が食べられるようになったのは平安時代。もともと母子の健全を祈ってハハコグサをつき入れた餅が食べられていましたが、臼で“母子”を一緒につくことが忌み嫌われるようになり、モグサ(今のよもぎ)に置き換わったそう。一方、桜餅がいつからひな祭りに食されるようになったのかは不明です。なぜなら、桜餅にはよもぎ餅と桃の節句のような言い伝えがないから。春らしいからとか、端午の節句の柏餅に結び付けられたとも…。和歌山の和菓子に精通した和歌山大学客員教授で「紀州の和菓子と文化を考える会」代表の鈴木裕範さんにもう少し詳しく話を聞きました。

鈴木裕範さん

鈴木裕範さん

関心を持って“春”を味わおう!!

紀州に伝わる節句の行事食
緑・黄・白の菱餅が存在

「そうなんですよね。桜餅は春の和菓子ですが、ひな祭りとは直接関係しないんですよね」と鈴木さん。読者アンケートで、ひな祭りといえば桜餅と9割近くの人が回答してくれましたが(グラフ参照)、習わしとしてはよもぎ餅が正解。「ただ、昨今は、菱餅と桜餅を供えて、それが段々といちご大福に変わりつつありますね。それはそれで時代の流れなのでいいと思いますが、ひな祭りと和菓子のうんちくをお話しておきましょうか」

ひな祭りといえば?のアンケート結果。9割近くの人が桜餅と回答

鈴木さんの調査・研究によると、桃の節句の行事食の中で、紀州には、他の地域にはあまり見られない特有の菓子文化があるそうで、それが菱餅だと言います。

一般的な菱餅は赤・白・緑の3色。これには中国の「陰陽五行思想」が関連していて、赤(紅)は桃の花、白は残り雪、緑はもえる草を表すなど諸説あります。「ところが、和歌山県の一部地域では、緑・黄・白の3色、赤・緑・白・黄の4色の菱餅が存在するのです」と鈴木さんは話します。

孫餅

今も海南市下津町などで孫が生まれたときに振る舞われる「孫餅」

関西では、黄色の餅・まんじゅうは弔事で用いられますが、海南市下津、有田地方、日高地方には孫が生まれたときに「黄色の孫餅」を配る風習があります。「和歌山では黄色の餅・まんじゅうが必ずしも“不祝儀”ではなく、古くから祝儀に使われていたということ。黄色はクチナシの乾燥果実『山梔子(さんしし)』で色付けされ、赤ではなく黄色になった理由は、食紅が手に入らなかったという説もありますが、私は、これも陰陽五行思想から来ていると考えています。陰陽五行思想で黄色は『土』、あらゆる万物を育み、守る性質を表します」とのこと。

小梅日記に記述があるあみがさ餅
和歌山市と海南市の祝い菓子

もう一つ、あみがさ餅も、珍しいひな菓子文化。「幕末から明治にかけて書かれた川合小梅の『小梅日記』に、桃の節句によもぎのあみがさ餅を贈ったという記述があります。菱餅の緑にもよもぎが使われ、中にあんこが入ったよもぎ餅も全国的に食べられますが、あみがさ餅は私の知る限り、和歌山市・海南市にだけ伝わる行事食。今も両市の和菓子店ではこの時期になるとあみがさ餅を販売しています」と教えてくれました。

今年のひな祭りは、関心を持ってあみがさ餅を食べるも良し、桜餅を食べ比べてみるも良し。ちなみに、読者アンケートの「よもぎ餅のおいしい店」に、加太の「小嶋一商店」「先田本家」を挙げる人が多かったのですが、下記の店舗紹介は、あみがさ餅と特徴ある桜餅に焦点を当てました。

青木松風庵

100%自家製あんこにこだわり、毎日できたての和・洋菓子を販売。大阪・和歌山に27店舗・2工場あり、「みるく饅頭(まんじゅう)月化粧」や関西風いちご大福「おしゃれ」など、100種類以上展開。

あみがさ餅 140円(1個)

青木松風庵 あみがさ餅 140円(1個) こしあんをういろう生地で挟み、赤・白・緑の3色展開。初節句のお祝いにぜひ。2月22日(火)~3月3日(木)の期間、予約で販売。

桜餅150円(1個)

青木松風庵 桜餅 150円 (1個) もち米生地にこしあん。桜の葉の塩味とあんの甘さが絶妙に調和。4月上旬までの販売。

問い合わせ 青木松風庵 秋葉山店
電話 073(448)3956
住所 和歌山市秋葉町4-25
営業時間 午前9時~午後7時
定休日 1月1日
ホームページ https://www.shofuan.co.jp/
備考 駐車場あり、「あみがさ餅」「桜餅」は各店で取り扱い

和菓子の店一寸法師

 独自の「豆殺し」と呼ばれる炊き方であんこを作り続けてきた、1900年創業の「きたかわ商店」の和菓子店。四季にこだわり、味はもちろん目で楽しむ和菓子に定評があります。

桜餅 360円(2個)

和菓子の店一寸法師 桜餅 360円(2個)  もち米生地でこしあんを包んでいます。塩漬けの桜の花が生きるように白いのが特徴で、中がうっすらピンクに。桜が散るころまで販売。

春の薫460円(2個)

和菓子の店一寸法師春の薫460円(2個) よもぎの大福生地で黄身あんが包まれ、今年からイチゴが飛び出しました。3月末か4月上旬まで。

問い合わせ 和菓子の店一寸法師
電話 073(425)0813
住所 和歌山市東紺屋町77
営業時間 午前10時~午後5時
定休日 日曜、祝日 
ホームページ https://issunboushi.buyshop.jp/
備考 駐車場あり

春栄堂

 もともと和菓子店で、今でも和菓子を作って販売していますが、春栄堂といえば「シューパリ」。洋菓子店と思っている人も。和菓子も洋菓子も気取らず、昔ながらの商品を手ごろな価格で売っています。

あみがさ餅 240円(3個)

春栄堂 あみがさ餅 240円(3個)米粉の生地でこしあんをくるみ、3色で販売。米粉によもぎを練り込み、粒あんを包んで丸形にした草餅も作っています。年中販売。

桜餅240円(3個)

春栄堂 桜餅240円(3個) もち米生地にこしあんですが、事前に予約すると粒あんでも作ってくれます。4月上旬ごろまでの販売。

問い合わせ 春栄堂
電話 073(444)0571
住所 和歌山市和歌浦中1-5-13
営業時間 午前8時~午後6時
定休日 日曜
備考 駐車場あり

紫香庵

 和歌山市役所近くの和菓子店。季節菓子、伝統菓子を大切にしつつ、常識にとらわれない発想で、斬新な和と洋のコラボ菓子なども展開。関東風桜餅は今回特別に作って販売してくれます。

関東風桜餅 160円(1個)

紫香庵 関東風桜餅 160円(1個)小麦粉に白玉粉、上南粉、砂糖を加えた、関西風とは異なる食感の餅生地でこしあんを包み2つ折りに。4月上旬までの販売(毎日個数限定)。

桜餅150円(1個)

紫香庵 桜餅 150円 (1個)もち米生地にこしあんですが、事前に予約すると粒あんでも作ってくれます。4月上旬ごろまでの販売。

問い合わせ 紫香庵
電話 073(426)3250
住所 和歌山市七番丁11-1-103
営業時間 午前8時~午後6時
定休日 1月1日~3日 
インスタグラム @shikoan_wagashi

総本家駿河屋善右衛門

 560余年の歴史を誇る老舗和菓子店。和歌山で知らない人はいないといっても過言ではありません。昨年、屋号に創業者の名を入れ、伝統を守りつつ、新しい商品も生み出しています。

あみがさ餅 162円(1個)

総本家駿河屋善右衛門 あみがさ餅 162円(1個)つややかで、程よい甘さの上品な3色あみがさ餅。上しん粉を練って、こしあんを手で包み込んでいます。販売は2月下旬~3月3日(木)。

桜餅195円(1個)

総本家駿河屋善右衛門 桜餅195円(1個)道明寺生地にこしあんで、桜色のこれぞ関西風の桜餅です。4月上旬までの販売。

問い合わせ 総本家駿河屋善右衛門 駿河町本舗
電話 073(431)3411
住所 和歌山市駿河町12
営業時間 午前9時~午後6時
定休日 無休(臨時休業あり)
ホームページ https://www.souhonke-surugaya.co.jp/
備考 全店で取り扱い

鶴屋忠彦

 戦前、駿河屋で勤めていた先代が独立。茶席に用いられる上生菓子を得意としていて、お稽古から茶会までその需要が多いことから週替りで提供。粒あん、白あん、ゆずあんの「芦辺もなか」も人気。

桜餅 140円(1個)

鶴屋忠彦 桜餅 140円(1個)  中粒の道明寺生地でこしあんを包んだ2枚葉使いの桜餅。京都の和菓子店で見られ、和歌山では希少。2月末ごろ~4月上旬の販売。

あみ笠餅270円(1個)

鶴屋忠彦 あみ笠餅 270円(1個) ういろう生地にこしあん(赤は白あん)。3色あみ笠餅は予約販売。3月2日(水)、3日(木)は店頭にも。

問い合わせ 鶴屋忠彦
電話 073(431)0116
住所 和歌山市十番丁101
営業時間 午前8時半~午後7時(土・日曜は6時まで)
定休日 火曜

ふく福団子(粉吉)

 1889年創業、粉屋からスタートした和菓子の製造販売会社「粉吉」。「ふく福団子」、近鉄百貨店の「日方庵」で自社製品を販売。北海道産小豆など素材にこだわりつつ、リーズナブルに。

あみがさ餅 430円(5個)

ふく福団子(粉吉) あみがさ餅 430円(5個) 米粉の生地で3色展開。よもぎは、春に手づみして冷凍保存しているものを練り込んでいるので香り豊か。3月3日(木)までの販売。

桜餅172円(2個)

ふく福団子(粉吉) 桜餅172円(2個)  もち米生地にこしあん。道明寺粉とはまた違ったツブツブ感で、モチモチ感が強め。ほぼ年中販売。

問い合わせ ふく福団子(粉吉)
電話 073(425)5168
住所 和歌山市岡山丁31  
営業時間 午前9時~午後6時半
定休日 1月1日〜7日、8月16日〜20日
インスタグラム @hukufutuanzi
備考 駐車場あり 

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