第9回 高芝の獅子舞 〜伊勢流の雄獅子〜

優雅な舞と、荒々しい舞で表現

笛と太鼓に合わせて、眠っている獅子を揺り起こします(天狗獅子)

獅子が竹ざおにかみつくのは高芝の獅子舞の特徴(牡丹獅子)

神社の祭礼や正月行事などで披露される「獅子舞」。江戸時代初期に「伊勢大神楽(いせだいかぐら)」と呼ばれる芸能集団が、獅子舞を舞いながら全国を回って広めたといわれており、和歌山県内でも、郷土色を取り入れた数多くの獅子舞を見ることができます。

熊野灘につながる太田川の河口に位置する、那智勝浦町下里・高芝地区。ここに伝わる獅子舞は、江戸時代中期に阿波国(現・徳島県)の人の世話により、元住吉神社(下里神社に合祭)の祭礼で奉納したのが始まりとされています。

熊野地方の獅子舞は、「伊勢流」と「古座流」の2つの流儀に分かれます。高芝の獅子舞は、伊勢流の特徴でもある赤漆塗りの獅子頭に黒い鼻を持つ雄獅子で、「高芝の獅子舞保存会」によって引き継がれています。

舞は、高芝で伝承されている唄に合わせ、ゆったりと舞う「神明賛(しんめいさん)」、獅子がボタンの花を採ろうとして、花枝を取り付けた竹ざおにかみつく「牡丹(ぼたん)獅子」、眠りから覚めた獅子が天狗(てんぐ)に挑む「天狗獅子」などの全9曲。優雅な舞と荒々しい舞が物語のように表現されます。その舞について保存会の中村崇さんは「年配の人は、まるで生きているかのように獅子を動かします」と説明します。

練習は6月から高芝区民会館で始まり、祭りが近付くにつれてたくさんの見物者でにぎわいます。

8月上旬、夏休みで帰省中という大学生の松下尚悟さんは「物心ついた頃から参加していて、祭りは生活の一部です」と話し、中学生の妹・穂乃果さんたちと一緒におはやしを演奏。天狗役の中森仁瑚(にこ)君は「5歳から始めて今年で5年目。笛の音に合わせて踊るようにしています」と誇らしげな表情を浮かべます。

祭りの期間、地区内の商店や新築の家の前などでも獅子舞を舞い、福を呼び込みます。中村さんは「保存会のメンバーが地区のお年寄りの家を訪れて食事をごちそうになるなど、今もさまざまな習慣が残っています。祭りは年齢に関係なく、人と人との結びつきが強まります」と笑顔を見せます。9月、本番に向けてさらに力が入ります。次回は10月予定

【祭り情報】高芝区民会館前(那智勝浦町下里)
宵宮

開催日 9月14日(金)
スケジュール 16:45子どもみこし
17:30祝宴開始
19:00屋台巡航
20:00 獅子舞奉納(5頭)

本宮

開催日 9月15日(土)
スケジュール 12:00祝宴開始
13:00子どもみこし、屋台巡航
14:00獅子舞奉納(9頭全種目)

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年年末年始号「2026年 幸運をつかみ 午く良い年に」
     2026年の干支(えと)「午」。力強く駆け抜けるその姿は、未来への希望を象徴する縁起の良い存在と…
  2. リビング和歌山2025年12月20日号「寒い日のお楽しみ せいろ蒸し日和」
     寒い季節にぴったりのせいろ蒸し料理。ベジフル料理研究家・井上宣子さんによる考案、和歌山の食材を取…
  3. リビング和歌山2025年12月13日号「進化した往年の玩具、コレクションの極み 大人が夢中!「キダルトトイ」の世界」
     ちまたのおもちゃ屋さんはクリスマス商戦でかき入れ時。しかし実は今、“玩具市場”をけん引しているの…
  4. リビング和歌山2025年12月6日号「和歌山市内の5つの社寺を参拝 御朱印にときめく小旅へ」
     和歌山市内の5社寺を訪れて御朱印を集める「紀州神仏霊場巡り」が来年4月末まで行われています。全て…
  5. リビング和歌山2025年11月29日号「新たな視点で魅力を発掘し、情報を発信 岩出市地域おこし協力隊着任」
     JR岩出駅前に観光案内所の整備を進めている岩出市。市が初めて募集した地域おこし協力隊も着任し、“…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/12/25

    2025年年末年始号
  2. 2025/12/18

    2025年12月20日号
  3. 2025/12/11

    2025年12月13日号
  4. 2025/12/4

    2025年12月6日号
  5. 2025/11/27

    2025年11月29日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る