関節や腱の痛みが長引いても、できることなら手術は避けたい―。そんな人たちの間で、近年注目されているのが、再生医療の一つで、手術をせずに回復を促す「PRP療法」。この療法ついて、海南医療センターで話を聞きました。

アレルギーや拒否反応のリスクが低い
プロのスポーツ選手がけがの回復のために取り入れていたことで話題になり、一般の人にも広がりを見せているPRP療法。日本ではこれまで、歯科や口腔外科の分野での治療に導入されていましたが、近年、テニス肘やゴルフ肘、変形性膝関節症、アキレス腱炎など、整形外科分野での慢性的な痛みで悩んでいる人たちの新たな選択肢としても期待されています。
PRP療法とは、自分の血液から「血小板」を多く含む成分「多血小板血漿(PRP)」を抽出し、それを関節や腱など、痛みの続く部位に投与する治療法のこと。「血小板は、傷などを負ったとき、血を止める機能があることは知られていますが、それだけではなく、傷んだ組織の炎症を抑える因子や、組織の修復を促す成長因子を豊富に含んでいます。PRP療法は、この成長因子を高濃度にして投与することで、痛みを和らげようとするものです」と話すのは、海南医療センターの整形外科・南晋司部長(写真)。
治療の流れは比較的シンプルで、患者自身の血液を50ミリリットルほど採取し、遠心分離機を用いて取り出したPRP約2~6ミリリットルを患部に注射します。「PRP療法は外来で行うため、入院の必要はありません。PRP療法後は個人差があるものの、一時的に痛みや腫れなど反応が起こることもありますが、自然と引いてきます」と説明します。
PRP療法の特徴は、自分の血液を使うので、アレルギーや拒絶反応のリスクが低いとされている点。しかし、全ての症状や患者に効果があるとは限りません。痛みの和らぎ方や持続期間は、体質や患部の状態によって異なり、症状によっては痛みの軽減を実感できないこともあります。
南部長は、「当院では主に変形性膝関節症に対してPRP療法を行っておりますが、保険が適用されない自由診療のため、費用面で注意が必要です。ヒアルロン酸やステロイド注射などの治療を行い、それでも痛みが和らがなければ、PRP療法を試すのも一つです」と伝えます。重症化している場合は、手術治療の対象になることもあります。「痛みが続くと、日常生活にも影響が出てきます。我慢せず、まずはかかりつけの医療機関を受診し、医師への相談をおすすめします」と話しています。
PRP療法が適応する症状例

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