今や生涯のうち4人に1人が何らかの心(精神)の病気にかかるといわれています。早期発見・治療には、病気に対する正しい理解と周囲のサポートが必要です。東京医療保健大学和歌山看護学部で話を聞きました。
重症化する前に医療機関に相談を
東京医療保健大学和歌山看護学部雄湊キャンパスの教室で、精神看護を専門とする吉村公一准教授(写真)の「皆さんの心はどこにありますか?」という問いかけに、頭や胸に手を置く学生たち。吉村准教授は、「心の病気は、医学的には、脳の神経伝達物質のドーパミンなどが影響して起こる脳の病気といわれています」と説明。続けて、「心(脳)と体はつながっています。例えば、登校や出勤を苦痛に感じているとき、おなかが痛くなったり、頭が痛くなったりした経験はありませんか。つまり、心がSOSを出し、体がそれに反応しているということです。心の病気と聞くと、自分とは関係ないと思うかもしれませんが、誰もが何らかのきっかけで起こりうるのです」と話します。
心の病気には、うつ病や躁(そう)病、摂食障害(拒食症・過食症)、強迫性障害、統合失調症などがあります。一般的に、周囲との関係や環境、社会的役割りが変化し、精神的にも不安定になりがちな10~20代でも発症することが多いといわれています。また、近年はコロナ禍で不安やストレスを感じ、そのストレスがきっかけとなり、うつ病を発症する人も少なくありません。
吉村准教授は、「“食欲がない”“夜眠れない”“気分が優れない”など、小さな変化や不調を見逃さず、早めに医療機関を受診し、対処・治療することが大事。そうすることで回復したり、重症化を防いだりする可能性があります。また、定期的に通院することで心の支えを得たような気持ちになり、回復に向かう人もいます」と話します。
ただ、不調に気付きながらも、心の病気だとは思わないことも。「家族など周囲の人が変化に気付くことが重要です。つらい気持ちが2週間以上続き、腹痛や頭痛など体調が崩れ、毎日の生活に支障が出てきている場合は、心の不調かもしれないと考えてください」とアドバイス。さらに、吉村准教授は、心の病気を抱える人の数は年々増加傾向にあるとした上で、「今は長期入院ではなく、病気とうまく付き合いながら、できるだけ地域で生活していこうという考え方が主流になってきています。早期発見・治療のためにも、心の病気に関する正しい理解と知識を身につけておくことも大切です」と伝えます。
来年1月15日(月)同大学で、精神障がいに関するシンポジウムが開催。当事者による講演もあり。詳細は左記を確認。
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